連載 プラスにする中学受験

【連載第19回】「プラスにする中学受験」~一途な愛~

2016年11月07日 杉山 由美子

「母子の関係」

室井佑月さんの「息子ってヤツは」を読んだ。シングルマザーの中学受験記である。母と子の濃密な関係を余すところなく描いて考えさせる本だった。

やんちゃで図体が大きく、生意気だけど、怒られた日の夜は泣きながら母のベッドに潜り込んでくる。愛しくて可愛い。息子が喜ぶ顔をみせると自分の事より嬉しい。そんな息子との1対1の甘い生活。 このままではいけない、親離れ子離れをしなければという危機感ももたげる。こうして中学受験を決意するのも室井さんらしい。

小4から入れた進学塾をひた走る。母も猛勉。全教科を毎日毎晩二人でやる。これがどんなに大変なことか経験者はわかるだろう。そして目指すは全寮制私立中学高校である。

小学校高学年の息子との日々がどんなに苦しくても、一途に可愛くてのめりこむ純粋な日々だということがよくわかる。たくさんの母がそうやってこの時期夢中になってひた走る。意識してなくても期間限定なのだ。中学以上になればクラブ活動もある。友人達もいる。生徒会や夢中になって取り組む事も出てくる。

しかし今は自分と二人のもの。こうして時間をたっぷりかけて時を過ごせる。 テレビで闊達に意見を述べる室井さんが好きだ。12歳になった息子と離れるのは無謀だという気もするが、親離れ子離れはしなければいけない。賢い母は再就職したり新しい仕事を見つけたりしていることを思うと、室井さんらしい選択だったかとも思う。 息子への一途な愛が描かれた作品である。

いっぱい褒めて、おだてて、持ち上げる。こんなことはお母さんならお手の物だ。そうやって子育てしてきたではないか。時には怒ることもあるが、根気よくおだてなだめて再度チャレンジさせる。 4教科総当たり作戦である。漢字も計算問題もくまなく当たる。難問も二人で当たる。

こうして息子の成績は上がっていくのだ。素晴らしい。 上がったり下がったりする成績。受からないのではないかという不安。 ここまで母に愛された記憶はきっと残るに違いない。そう信じたい。中学受験する意義も見えてきた。

 

※記事の内容は執筆時点のものです

杉山 由美子
この記事の著者

出版社勤務をへて、フリーランスライターに。おもに教育、女性が働くことについて取材、執筆をしている。著書に『長男が危ない』(草思社文庫)『中学受験SAPIXの授業』(学研新書)『お金をかけずに「できる子」を育てる』(岩崎書店)など多数。