連載 脳を育てる勉強法|ドクター吉田

子供の才能をほめると努力できないダメ人間に育つ! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(8)


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「努力した部分をほめる」

ほめてあげることはとても大事ですが、親や先生が間違ったほめ方をすると、子供はダメな人間に育ってしまうという恐ろしい副作用もあることが研究で明らかになっています。

子供の才能をほめてはいけない

絶対にやってはいけないのは、子供の才能をほめることです。ニューヨークの小学5年生を対象にコロンビア大学が行った実験では、テストの後に「君は頭がいいね」とほめられた子供は、その後努力をしなくなり、テストの点数も伸び悩むという結果が得られています。

ほめられると、脳の中にあるA10神経が刺激を受けるため、脳内でドーパミンという物質が分泌されます。心地よい気分になのは、この物質によるものなのです。

ほめられた子供の脳は、その快感をもっと大きくしたいという衝動にかられます。だから無意識のうちに、さらに頭がいいと思ってもらえる行動を取ろうとするのです。

注目していただきたいのは、その行き着く先にあるのが「わざと努力をしないこと」だという点です。努力をしていい点をとっても、頭の良さの証明にはなりません。それどころか、もし悪い点を取ったら愚鈍な人だと思われてしまいます。頭がいいと思わせるには、努力しないほうが得策なのです。

小学校の高学年になると、子供の脳はこのことを本能的に感じ取り、無意識のうちに努力を怠ろうとします。その結果、やがて成績も低下してしまうわけです。

この他、「センスがいい」「ヒラメキがある」といった才能に関するほめ言葉は、すべて子供の努力を奪いとる効果を持っているので、できるだけ控えるべきです。また、女の子の場合は、「かわいい」「美人だ」といった容姿についてのほめ言葉も要注意です。やはり、努力に対する価値観が相対的に希薄になるため、子供には悪影響が及びます。

子供の努力をほめよう

私のクリニックでは親子カウンセリングを行っていますが、子供をほめる場合に、努力だけに絞るよう指導しています。コロンビア大学の実験でも、「よく頑張ったね」と、努力をほめた場合は、子供はさらに努力を重ねることでA10神経を刺激しようとするため、実際に成績も上がるという結果が得られているのです。

ただし、そのためには子供をよく観察することが不可欠です。テストの点数が悪くても、いちがいに叱ってはいけません。もし子供が努力した上での悪い点数だったのなら、「よく頑張ったね」とほめるべきです。親にはそんな度量も求められるということです。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


吉田たかよし(医学博士・心療内科医師)

灘中学、東京大学、国家公務員上級経済職試験、医師国家試験などの合格体験を元に、日本で初となる受験生専門の心療内科、本郷赤門前クリニックの院長を務める。カウンセリングと最新の磁気刺激治療を組み合わせ、「受験うつ」から早期回復を図るプログラムを開発。脳科学と医学を応用した受験指導にも取り組む。『今どきの大人を動かす「ほめ方」のコツ29』(文饗社)など著書60冊を上梓。

本郷赤門前クリニック
https://www.akamon-clinic.com/


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※記事の内容は執筆時点のものです

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