連載 中学受験のイロハ 鳥居りんこ

学校は上位20%に入るか、下位10%に入るのが美味しい|中学受験のイロハ 鳥居りんこ(9)

専門家・プロ
2016年8月04日 鳥居りんこ

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第8回で「学校から愛される」ということが子供の人格形成上も大切なことだという話を書きました。

では、どういうタイプが学校から「愛されるのか」を具体的にお話していきましょう。まずはこの話です。

異論が色んなところから矢のように降ってきそうですが、それでもアタクシは言います。

「成績の良い子は美味しい思いをする」

成績の良い子が学校から愛される理由

第8回で指摘しましたが、成績優秀者は私立学校の命運を決める存在になり得る人材なのですから、「宝物」が大切にされるのは自然なことなのです。

生徒の方から言えば、まず「先生がなにを言っているのかがわかる!」ということはとっても大事なことです。そこから「もっと知りたい!」という欲望が沸々と煮たってくるからです。

積極的な受講態度は教師のやる気を引き出し、級友に刺激を与え、学びの空間を上質なものに昇華させるでしょう。止まらない知的好奇心のぶつかり合いの真剣勝負は学園生活のあらゆる面に刺激をもたらします。そうこうしている時、定期試験が実施されます。

良い点数を取った者は今まで知り得なかった知識をわが手中におさめたという満足を感じ、教師は己の授業戦術が上手く展開していることに深い満足を感じます。

こういう相乗効果で好循環をもたらしていくのです。よくトップ校が「受験は団体戦」と口にしますが、全員で高みを目指すという一大方針が爆裂する大学合格実績をつくりあげているのだと思います。

学校は上位20%に入るか、下位10%に入るのが美味しい

中堅よりもやや下にランキングされている大学の先生とこの話題で大いにもりあがったことがあります。

100人の生徒が在籍していたらトップ20人に入るか、それとも下を見たら一桁! という位置にいるべきだという理論です。上位はわかりますよね。褒められ、認められ、期待されという称賛が教師、級友、後輩、親、親族からあびせられるので「なんか、いい感じ」になります。

では下位は? 深海魚(りんこは成績下位者を深海魚と呼んだパイオニアです。こんなこと、威張ってどーする!?)もなかなか、美味しいポジションなんです。

私立中高一貫校はどこでも、ものすごくあったかいんです。「不幸な子羊を見殺しには出来ない」心理が働き、手厚いフォローが繰り返しなされます(ただし、親にとっては地獄です)。個別フォロー、面談お呼び出し、追試、再々提出レポート、補習の嵐、コピーの山と、あらゆる手間を先生にかけさせるという特典で溢れます。

これは、これで人の情けをこれ以上ないくらい享受できるのでありがたいポジションではあります。

家庭でも学校でも「存在を認められる」環境が大切

しかしです、問題は真ん中よりも下なんだが、深海魚と呼ぶには微妙な立ち位置にいる生徒なんです。学校は「心配ない」という理由でほったらかしにします。つまり、いてもいなくても、あまり目に入らないという立場として存在します。

前述の大学の先生はこうおっしゃいました。

「りんこさん、ウチの大学に来て教授陣と向かい合った学生はみんなこう言うんですよ。『今までの人生でこんなに自分の話を聞いてくれた人はいなかった』と。『自分の意見を言ってもいいんですね?』と。どれだけの子供たちが家庭でも、学校でも「いない者」として扱われているんだろうか?」

2020年の大学受験大幅変更を見ずとも、これからの世の中は自分の頭で考え、さらに、その考えを自ら発信して、協力者を募り、協調して生きて行くことが必須になっております。

私たち親はこのことに気付き、まず子供の話を遮ることなく聞かないといけないんです。「意見を声に出すことはいいことなんだよ」と。

そのために「発言しやすい環境」にわが子を置いてあげることが大切になります。深海魚の親は発狂寸前に追い込まれますので、子供は意外とのほほんとしていますが、親御さんにはおすすめしません。

アタクシが「入るなら上位(の位置取り確率が増す学校)」と主張するのはこういう意味があります。

人間は「存在を認められる」ということが「愛されている」と実感できる第一歩なのです。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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