連載 中学受験のイロハ 鳥居りんこ

どのくらい人参を嗅げるかを確認しておきましょう|中学受験のイロハ 鳥居りんこ(26)

専門家・プロ
2016年12月01日 鳥居りんこ

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私立中高一貫校では各校が生徒にさまざまなことを体験させようと知恵を絞っております。

もちろん学業は必ず修めなければならないものですので、どの学校も必死でがんばっている分野です。どのようなシラバスで6年間を過ごすのかをチェックするのは必須です。

(こちらについては後の回で綴ろうと思っております)

さらに、学業以外にその学校でしか味わえない体験というものがあります。これを私は「(馬の鼻先)人参」と呼んでおります。

特別な体験が子供の人生を深めるきっかけに

例えば、部活動であったり、修学旅行であったり、農業体験のようなプログラムがそれに当たります。私は12歳から18歳という頭が柔らかく、感受性が強い時期にあらゆるものをどん欲に吸収することが、その後の人生を深く楽しめることにダイレクトに繋がっていくと考えております。

その時代に「これが好きだな」とか「これは得意だな」と子供自身が発見できる何かをつかめれば、親としても本当にありがたいと思うのですが、なかなか、人生思うようにはいきません。

しかしです。人間は不思議なもので、一度嗅いだ匂いは脳のどこかにインプットされているようにも思うのです。その時は若すぎてわからなかったけれども「この匂いはどこかで嗅いだことがあるような……」という経験が大人になって生きてくるように感じています。

どういう体験を用意しているかで、その学校が目指す人物像が分かる

通常、親と平々凡々と暮らしているのでは到底できない体験をわが子に与えることも可能なのが私学教育であります。

それは海外研修であったり、留学プログラムであったり、高・大連携授業であったり企業とのコラボであったり、遠泳であったり、一流どころの芸術鑑賞などなどであったりするわけですが、どの体験もその学校に在籍したからこそ、味わえるものなのです。

ある男子校では便利な時代だからこそ、電気もないような場所に生徒を連れて行き一晩、頑張らせるというようなことをやっております。生徒は薪を集め、調理をしたり、お風呂を沸かしたりしなければならずそのサバイバルで、意外な生徒が意外な実力を発揮したりして一目置かれる存在になったりするようです。

先生方に「手出しはしないのか?」と質問したところ「こっち(引率教師軍団)はこっちで(自分らのご飯を作成することに)必死なんで!(生徒の飯まで気を配る余裕なんかない!)」という回答をいただき爆笑しました。

この経験が、ある者にとってはアウトドアに目覚めるきっかけになったり、心のどこかに「どうやっても生きてはいける」という確信に繋がったりするのだそうで、こういう手荒い教育方法もありなんだなぁと感心したことがあります。

私学がどのくらいの頻度でどういう「人参」を嗅がせて、子供たちの今ではない未来に投資しようとしているのかを見ていくことで、その学校が目指す人物像がわかってくると思います。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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