中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

わが子のやる気の源は何だろう? ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2022年4月20日 菊池洋匡

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親子で“楽しく”試行錯誤をすれば、子供の成績はグングン伸びます。自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生が、その方法を中学受験生の保護者のみなさんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

今回の記事では、試行錯誤の第一歩として「子どものやる気の源を探る」というテーマでお話をしたいと思います。

怒ることは問題解決には繋がらない

子どもが勉強を先延ばしにしたり、ダラダラ取り組んだりしていると、「なんでちゃんとやらないの!」と怒りたくなりますよね

以前開催した保護者セミナーで「この1週間で『勉強しなさい!』と怒った回数」を聞いてみたところ、4~6回程度で手をあげる方が多かったです。

つまり、2日に1回以上は怒っているという方が大半なのですね

なかには7回以上、つまり毎日怒っているという方も、ちらほらと。

あなたはこの1週間で何回「勉強しなさい」と怒りましたか?

ちょっと考えてみてください。

…………………………。

さて。子どもに怒ってしまった方たちには残念なお知らせなのですが、この「怒る」という行為は、問題解決には繋がりません

何度も怒っている方がたくさんいるのが良い証拠です。

効果がないからこそ、同じ理由で何度も怒らなければならないわけです。

そして、なぜ効果がないかというと、怒られたことで子どものなかに「ちゃんと勉強をした方が良い」という価値観が育つことは、まず無いからです。

その瞬間は怒られて怖いから渋々従ったとしても、だんだん怒られることにも慣れていき、少し怒られたくらいでは動かなくなります。

怒る以外の手段を知らなければ、親御さんとしては「もっと激しく怒る」しかなくなります。

その「激しい怒り」にもいつかは子どもが慣れてしまい、どんどんエスカレート……

怖いですよね

ですから、「怒ったら子どもが勉強をした」という状況を「成功」だと思ってはいけません。

子どもが自発的に勉強をし、終わったあとには達成感や充実感など、次につながるポジティブな気持ちが残ることが「成功」だと決めましょう。

そして、そう導くための働きかけを模索していきましょう。

「子どものやる気の源」とは?

というわけで、あらためて今回のテーマ「子どものやる気の源」です。

やる気の源は、子どもの性格や置かれている状況によって様々で、「これひとつあれば大丈夫」といった万能なものはありません

親子といえど別の人間ですから、「自分がこれでやる気になった」というものを押しつけても、確率で言えばうまくいかないのが普通です。

ですから、様々なやる気の源のパターンを知って、わが子に試してみることが大切になります。

そこで、私の著書でも紹介している、東京大学の市川伸一先生が提唱された「学習動機の二要因分類」という切り口から、子どものやる気のパターンを例示してみたいと思います。

これを参考にして、お子さんのやる気を引き出せそうなアプローチを考え、試してみてくださいね。

※市川伸一『学ぶ意慾の心理学』をもとに作図

この二要因分類では、「学習内容の重要性」「学習の功利性(実益の重要性)」の二軸で分類し、やる気の源を6パターンに分けています

たとえば「充実志向」は、その内容が好きだからやっていることで、それによって物質的なメリットを求めているわけではありません。

歴史好きな子が、放っておいても勝手に歴史関係の本を読んでいるようなケースです。

その内容であることが重要で、他の内容ではダメ。そして、勉強することによる実益は重視していません。

それに対して「関係志向」は、周囲との関係性が動機になるパターン。それによって物質的なメリットを求めているわけではないのは同じですが、内容も重視していない点で違いがあります。

みんなと一緒に勉強することがやる気の源で、みんなが一緒にやってくれるなら社会でも算数でも何でも良いわけです。

ちょっと勉強から離れた例をあげると、「サッカーが好きでサッカーがやりたい、他の子が野球をやるなら俺は1人でサッカーをやる」というのは充実志向的なパターンで、「みんなと一緒に遊ぶのが好き、みんなでやるなら野球でもサッカーでも良いよ」というのは関係志向的なパターンですね。

そして、「報酬志向」は内容は重視しておらず、実益重視です。

テストで良い点を取ったらご褒美をくれるなら勉強するよ、というパターンがこれに当たります。

ご褒美がもらえることがやる気の源であって、学習する内容は社会でも算数でも何でも良いわけですね。

注意してほしいのは、「怒られたくないから勉強する」というのは報酬志向に含まれるという点です。

ご褒美で釣って子供を勉強させることに心理的に抵抗を感じるのに、一方では怒って勉強させていたりするのは大きな矛盾があることは、知っておくと良いと思います。

「学習内容の重要性」「学習の功利性(実益の重要性)」という軸について、理解ができたでしょうか?

では、もう少し具体的に考えていきましょう。

充実志向を煽れないか?

充実志向は「楽しいからやる」ので、勉強への原動力としてはもっとも強いものになります。

好きな科目は放っておいてもやる子は多いですよね。

勝手に楽しいと感じてくれれば良いのですが、そうではない場合にはどうしたら良いでしょうか?

考えられる充実志向につなげる糸口としては、元々好きなことと紐づけてあげるという方法があります。

たとえば電車が大好きな子は、日本全国の路線図をよく知っていて、そこから都道府県の名前や特産品(農産物や伝統的工芸品)をつなげて覚えていったりすることができるので、社会を好きになってくれるケースが多いです。

一時「うんこドリル」なんて漢字ドリルが流行りましたが、あれも「うんこが好き」な小学生に楽しく勉強させるアプローチとして秀逸だと思います。

訓練志向を煽れないか?

自分の成長が喜びになるのがこのパターン。

大事なのは、成長を可視化し、可能ならば数値化することです。

以前の教え子の中に100マス計算にはまって、11~20までのかけ算を超スピードで解く子がいました。

勉強が苦手な子だったのですが、だからこそこれまであまり経験していなかった「スコアがどんどん伸びていくこと」が楽しくなってしまったようで、ハマって何度も繰り返すうちに、すごい成長を遂げました。

前よりもできるようになった!

この気持ちをお子さんに与えるために、どんなことができそうですか?

実用志向を煽れないか?

大人だと強力な動機になりますが、子どもの勉強だと難しいですよね。だからこそ意識的に探してみたいものです。

旅行に行くときには地図帳を片手に持って、その土地の特産品を味わったりお土産に買ったりすると、勉強して良かったという実感につながるかもしれません。

また、日ごろ買い物に行くときにも、「○○%オフ」の値引きシールを見たら「これっていくらお得なんだろう?」と計算してみると、学んだことの活用になりますね。

ほかには、どんなことができそうでしょうか?

関係志向を煽れないか?

私たち伸学会では、お互いに教え合ったり、小テストのスコアでチーム対抗戦をしたりして、一緒に勉強している感を出しています。

ご家庭のなかでも、親子で教え合ったり、一緒に勉強したりすることはできそうですよね

先日、私のオンラインサロンのメンバーさんから、「うちの子の動機は私(親)に褒めてもらいたいとか、認めてもらいたいというのが強いみたいなんですけど、、良いんでしょうか?」といったご相談をいただきました。

心配になってしまうこともあるようですが、とても良い状態です。

動機にはダメなものはなく、複数ある方がより良いと考えていただければと思います。

自尊志向を煽れないか?

勝てる勝負は積極的にやるけど、負ける勝負からは逃げたり癇癪を起こしたりする子って多いですよね(笑)

勝っているうちはいいけれど、負けが込むと逆にモチベーションが激下がりするので、取り扱いが難しいのが、この「自尊志向」です。

勝ったり負けたり、ちょうど良い勝負ができる環境を与えられるかを考えてみましょう。

報酬志向を煽れないか?

一番手っ取り早く与えられるのがこの動機です。

大人だって、「仕事が終わった後の自分への小さなご褒美」を糧に頑張ることって多いですよね。

子どもにも、そうしたちょっとした後押しが必要な場合も多いです。

特に、今現在勉強が嫌いな子には、「勉強を楽しみなさい」といって充実志向を与えようとしても無理な話です。

まずはこの報酬志向から入り、やっているうちに楽しさに気付くのを待つ、という作戦が良いと思います。

以上、二要因分類によるやる気の源6パターンでした。

どの動機で行動しているか分析してみよう

あなたのお子さんは今、どの動機で行動していますか?

「社会は好きだから充実志向だな」「算数は怒られないように渋々やっているから報酬志向か」「サッカーの練習は友達とやるのが楽しいから関係志向と、上達して喜んでるから訓練志向のダブルだな」など、分析してみると、ものによって違った動機で行動していることも見えてくるんじゃないかと思います。

そして、今の状態を踏まえて、動機が2つ3つと増えていくように働きかけていきましょう。

一発で正解を見つけられなくても大丈夫。

試行錯誤していくうちに、お子さんの心に刺さるものが見つけられますよ。

宝探し感覚で楽しんでくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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