中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

新学年で、まずはじめにやるべき成績アップのサポート ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2023年4月19日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

新年度がスタートして半月ほど経ちましたね。

新しい生活リズムに身体も馴染んできたころではないでしょうか。

親御さんたちも、新年度になったばかりのころは、自分が異動して新しい環境になじむので手一杯だったり、自分の異動は無くとも周囲のメンバーが入れ替わったりしてやはり慣れるまで時間がかかったりしていたと思います。

そろそろ落ち着いてきて、お子さんの成績アップのためのサポートを頑張ってみようかなと思う時期ですよね。

そこで、今回の記事では、このタイミングで親御さんにしてほしい成績アップにつながるサポートについてお話をしようと思います。

この時期、優先度が高い「目標設定のサポート」

成績アップにつながるお子さんへのサポートは様々あります。

例えば
・学習環境を整える
・目標設定をサポートする
・フィードバックを与える
・自走できるように計画の立て方などを教える
・親子で学習する時間を作る
などなど。

他にももちろんあるでしょう。

可能であればこれらのサポートを同時に進めても良いですが、ただ、なかなか難しいですよね。

そこで、優先順位を決めてどれか1つ手始めに取り組むとしたら、ぜひやってほしいことが「目標設定をサポートする」ことです。

目標が定まることでやる気が出る

人のモチベーションの仕組みは「移動」と似ています。

目的地があり、現在地がわかると、目的地に向かって歩きだそうという意欲が出てきます。

期限が決まっていて、歩きでは間に合わなそうだとなったら、急いで走ったり、何か他の移動手段を考えたりします。

目的地がわからない状態を何と言うかはご存知ですよね?

そう、「迷子」です。

残念ながら、多くの受験生は迷子状態で日々を過ごしています。

そもそも目標について考えていないか、または目標設定の仕方について教えられていないため考えても適切な目標を立てられないからです。

そのせいで日々の勉強に対してやる気が湧かず、だらだら勉強して成績が上がらなかったり、遊ぶ時間が減ってストレスを感じたりします。

それってとてももったいないですよね。

そこで、私たち指導者や親が目標設定をサポートしてあげることが大切になるのです。

目標を決めるうえで大事なポイント4つ

目標を決める上では、考えるべきポイントがいくつかあります。

1.結果と過程、どちらに焦点を当てるか

まず1つ目は、目標は結果に焦点を当てたものにするか、過程に焦点を当てたものにするか、どちらが良いのかということです。

結果に焦点を当てた目標とは、例えば「算数のテストで90点以上を取る」「今度のサッカーの試合で勝つ」といったもので、過程に焦点をあてたものは「毎日30分算数の問題を解く」「毎日リフティングの練習を20分やる」といったものです。

どちらの目標設定方法も効果的ですが、子どもが相手であれば、過程に焦点をあてたものの方がより効果的なことが多いと思います。

目標とする結果を手に入れるために何をしたら良いかわからずなにもできないままという子が多いからです。

もちろん子どもの性格や学習スタイルによって、結果に焦点をあてた目標の方がモチベーションが上がるという子もいますので、絶対に過程に焦点をあてた目標にしなければいけないというわけではありません。

あなたのお子さんに合わせてどちらかを選択するか、または両方を組み合わせてみてください。

2.短期と長期の目標を組み合わせる

次に2つ目のポイントは、短期目標と長期目標を組み合わせることです。

短期目標は1週間から1ヶ月程度、長期目標は半年から1年程度のスパンで設定するのが基本です。

もちろん、まだ子どもですから、1週間でも長すぎると思ったら1日単位で超短期目標を設定しても良いですし、逆に3年後の受験という超長期目標があっても構いません、

いずれにせよ、短期と長期で相互につながりのある目標を組み合わせることがおすすめです。

なぜこれが効果的かというと、長期的な視点で達成したい大きな目標や目的があることが目標に向けた一歩を踏み出すためには大事ですが、それだけでは人間は努力し続けるのは困難です。

同時に長期目標達成へとつながる短期目標を設定し、短期目標達成という小さな成功体験を積み重ねていくことで、自信や達成感を得ることができ、モチベーションアップにつながっていきます。

実際に研究においても、短期目標だけを立てさせたグループ、長期目標だけを立てさせたグループ、両方を立てさせたグループを比較したところ、両方を立てたさせたグループがもっとも良い成績をおさめたそうです。

あなたもお子さんと長期目標と、そこにつながる短期目標について、話し合って決めてみてくださいね。

3.目標は具体的に

そして、次の3つ目のポイントは具体的な目標にすることです。

結果に焦点をあてるにしろ、過程に焦点をあてるにしろ、数値を入れながら明確な目標を設定することが大切です。

例えば、「来週の算数のテストで80点を取る」とか、「土日は算数のテキストの問題を3ページずつ解く」といったものが具体的な目標です。

「算数で良い点が取りたい」とか、「土日はテスト勉強を頑張る」とかは具体性に欠けるので効果的ではありません。

この具体的な目標を考えるというのは子どもにとってはかなりハードルが高いようです。

悪気無く「宿題を頑張る」のような具体性に欠ける目標を言う子がたくさんいます。

悪気はないのですから叱っても意味はありません。

「頑張るって何をどれくらいしたら頑張ったことになるのかな?」
「良い点ていうのは何点くらいかな?」

といった感じで問いかけて、考えを掘り下げさせてあげましょう。

4.達成可能な目標にする

最後に4つ目のポイントとして、達成可能な目標にすることです。

達成可能性の高い、やや難しいくらいの目標を決めることが、パフォーマンス向上には適切であるとされています。

達成のために努力を要しない簡単すぎる目標は成長につながりません。

一方で、困難すぎる目標はモチベーションの低下を招いたり、練習する課題のレベルが自分の力量に合わなかったりして、これもまた成長につながりません。

しかし、子どもがちょうど良い難易度の目標を自分で立てるのは意外と難しいことです。

ですから、ここでもまたサポートが必要になってきます。

ちょうど良い目標を立てるためには、目標を3段階に分けるのがおすすめです。

まずは最低限絶対にこれだけは達成したいという「簡単」な目標と、ここまで達成するのはかなり困難をともなうという「意欲的」な目標を決めます。

例えば、

簡単な目標:これまでの模試の平均偏差値は超える
意欲的な目標:偏差値自己ベストを大幅に更新する

といった感じです。

そうすると、その中間あたりに、やや難しいが達成可能性が高い目標が設定できると思います。

例として偏差値という結果に焦点をあてた目標を挙げましたが、行動に焦点をあてて目標を決める場合にもやり方は同様です。

あなたのお子さんにとって、簡単すぎず難しすぎない、ちょうど良い目標はどの程度の目標でしょうか?

お子さんと相談しながら決めていってくださいね。

以上、目標設定のサポートの仕方でした。

あなたのお子さんにあった目標を立てることができれば、モチベーションが高まり成果に繋がるでしょう。

どんな目標がぴったり合うか、試行錯誤しながら探してみてくださいね。

まとめ:長期目標を立てるサポートの重要性

最後に、長期目標に関して、オマケの話をしようと思います。

少し前に伸学会に通う5年生の子たちに、中学受験をする理由を聞いてみました。

あなたはどんな答えが多かったと思いますか?

「行きたい中学校があるから」
「将来のため」
「勉強がおもしろいから」

多くの親御さんはこうした理由が出てきてほしいと期待するのではないでしょうか。

しかし、残念ながらこうした理由は少数派でした。

実際に子どもたちが書いた理由はこういったものでした。

筆跡で誰が書いたかわからないようにぼかしてあるので、小さな文字は読めないかと思いますが、左上の方は十分読めますよね。

「親が決めた」「親がきめた」「親の都合」「親がきめた」「お父さんとかにいけといわれたから」「みんなやってるからっておやにいわれた」
などなど、本人の意志ではなく親によって塾に通わされていると言っている子がかなりたくさんいることがお分かりいただけると思います。

「『楽しい』といわないとおせっきょう2時間くらい!最悪」
と書いた子もいます。

大げさに言っているだけとは思いますが、教育虐待の可能性もあるので、我々も面談などで慎重な対応が必要そうです。

2時間のお説教が真実かどうかはさておき、この子が「本当は言いたくないセリフを無理矢理言わされている」ということは間違いなさそうです。

真ん中あたりには
「じゅくに入ったらみんなやってたから」「みんながやるから」「みんながするから」「学校のみんなが受験をしているから」「みんながやっている」「兄にあこがれ目指したから」「姉がやったから」
といった感じで、周囲からの影響という回答が並んでいます。

つまり、ほとんどの子どもは、受験に対して目的意識が無い状態で受験勉強をスタートするということです。

5年生になっても、子どもたちのホンネはこんなものです。

頭が良くなりたいとか○○中学校に行きたいとか、目標は自然と持つようになると思ったら大きな間違いです。

ですから、1~2年後にこうなっていたいという長期目標を見つけるのを手伝うことが、親御さんがしてあげられるもっとも重要なサポートかもしれませんね。

これからの時期ちょうど説明会や文化祭といったイベントが多くなります。

ぜひそういったものも活用しながら、長期目標を見つけてくださいね。

あなたのお子さんが良い目標を見つけられることを祈っています。

それでは。

※記事の内容は執筆時点のものです

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