中学受験ノウハウ 連載 しあわせな中学受験

別学、共学、大学付属校、進学校。あなたのお子さんに合うのはどんな学校?|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2019年5月30日 中曽根陽子

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中学受験で塾選びに並んで大事な親の仕事は学校選びです。なぜなら、小学生の時点では、子どもだけで自分にあった選択を行うのは難しいからです。では皆さんは、なにを基準に学校を選びますか? 今回は、学校選びをする前にまず知っておきたい、学校タイプ別の特徴を解説します。

違いの理解から始める学校選び

学校を選ぶときに、まず皆さんが気になるのは、中学入試の偏差値と大学合格実績かもしれません。確かにどちらもその学校の一面を数字で表す指標です。

しかし、大学合格実績だけが教育の成果でもありませんし、偏差値が高いから良い学校、低いから悪い学校という訳でもありません。

実際、偏差値をつくっている大手進学塾の担当者は、「競合校が少なく人気があれば偏差値はあがるし、同じ日時に集中している学校の偏差値はあがりにくい」といいます。

偏差値は、あくまでも入試の難易度を表す指標で、戦略を立てるための道具にすぎないのです。お子さんにとって良い学校を選ぶためには、偏差値だけでなく、さまざまな角度から学校をみるスケールを持つ必要があります。

まずは環境の違いを理解することが、子どもに合う学校選びの第一歩です。

男子校・女子校・共学。その違いはどこにあるのか

学校の種類も、大学付属校か否か、共学か別学か、などいくつか選択肢があり、それぞれに特徴があります。

男子校・女子校は戦前からの伝統校が多く、共学や別学は戦後にできた比較的新しい学校が多いのも特徴です。

最近は共学化する学校が増えていますが、男子校・女子校を選べるのは私立中学受験の特徴のひとつですね。しかし、親自身が経験していないと、その特徴は掴みづらいかもしれません。

私は、中学は女子校、高校は共学に通いました。そして、子どもは女子校の中高一貫校に通いました。また、取材で多くの学校を見てきました。それらの経験を踏まえて、学校の形態ごとにそれぞれの特徴をまとめてみました。

男子校 ―― オタク系から体育会系までが違和感なく共存している!?

異性の目を気にせず、のびのび過ごせたというのは、男女問わず別学出身者からよく聞くことです。

思春期は精神的にも肉体的にも微妙な時期ですから、男女ともに異性の存在を意識すると行動が制約されるというのはありがち。

特に男子は、例えば電車好きの”てっちゃん”のように、ひとつのことに熱中する傾向がありますが、男子校だとそれぞれに居場所があるようです。

桐朋中高のある卒業生は、「興味は違ってもお互いに気にしないし、オタク系と体育会系がふつうに学校のなかで共存していた」と話してくれました。

男子校は、先生も男性の割合が高く、男子の指導に長けている人が多いので、扱いづらい思春期の男の子との向き合い方に悩んだ保護者からは「男子の指導に詳しい先生のアドバイスが心強かった」という声もありました。

女子校 ―― おしとやかなお嬢さまというより、しっかりものが育つ!?

一方、女子校の生徒は、どの学校も外部からの印象とはうらはらに、元気で活発なタイプの生徒が多い印象です。

それは、共学校なら男子が担うような力仕事的な役割はもちろんのこと、学校生活のさまざまな場面でリーダーシップを発揮する機会も多く、自然に積極性や自立心が芽生えるからでしょう。

また、キャリア教育では、出産や子育てなど女性のライフステージを意識したものに特化できるのも女子校ならでは。

例えば品川女子学院では、「28プロジェクト」といって、出産年齢にリミットがある女性にとって、28歳を人生のライフ・ワークバランスを考えるターニングポイントと捉え、そこに向けたキャリア構築を考えさせていきます。

また、女子校には授業の一環として、茶道や華道、礼法などを取り入れている学校も多く、家庭ではなかなか経験できない教養を身につける機会として人気があります。

共学校 ―― 男女共同参画社会を、学校で体感

公立も含めると日本の学校教育のスタンダードです。近年共学志向が強まっているといわれていますが、理由のひとつは、保護者も共学出身者が多いということもあるでしょう。

少子化に伴い、共学化に踏み切る私学が増えています、2019年現在、首都圏の私学292校中、155校が共学(後述する別学・併学校も含む)です。

共学の魅力は、一言でいえば多様性です。もちろん別学にも多様性はありますが、性差による違いを日常生活の中で自然に体感できるのは共学ならではでしょう。

別学・併学校 ―― 男女別学と共学のいいとこ取り

別学(併学)は、校舎を完全に分けて、行事や部活だけを一緒に活動するところや、授業は男女別々だが食堂は一緒、学年が上がると授業も一緒にするなど、学校によってやり方はさまざまですが、別学と共学それぞれの良さを組み合わせている学校です。

大学付属校・半付属校・進学校の違い

2020年からの大学入試改革の行方がはっきりしないうえに、首都圏では私立大学の定員が絞られたことで大学受験が難化しています。このことを受けて、中学受験の保護者の間では、大学付属校の人気が高まっているようです。

しかし、人気不人気はその時々で変わりますし、学校によって系列大学との関係もさまざまです。その特徴をよく知って選ぶことをおすすめします。

ここでは、大学付属校・半付属校・進学校の違いを解説します。

大学付属校 ―― 生徒のほとんどが系列の大学に進学する

「大学付属校なら大学受験がないのが魅力」と思うかもしれませんが、学校によって内部進学(内進)の条件は異なります。

「よほどのことがない限り進学はできるが、希望の学部学科に進学できるかわからない」

「成績や出席率、内部進学のための論文やテストといった内部推薦進学の条件をクリアしなければ進学できない」

など、学校によって内進の条件はさまざまです。

なかには系列大学への進学枠が定員分はないところもありますから、系列大学への進学を考えて選ぶのなら、内部進学の条件を事前によく確認しておきましょう。

また系列大学に希望の学部がない場合には一般受験をすることになりますが、その時に、学校がどこまで外部受験対策をしてくれるのかなども聞いておきたいことです。

一般的に大学付属校の場合、大学受験のための勉強をしなくてよい分、大学と連携した授業など、探究的な学びに時間をかけることができます。また行事や部活動に時間を割けるのもメリットです。

半付属校 ―― 大半の生徒が系列大学へ進学するが、他大学にも挑戦できる

半付属校は、系列大学だけでなく、他大学進学にも熱心な学校です。大抵は、他大学進学のためのカリキュラムを整えています。さらに、「内部進学の権利を保持したまま、他大学を受験できる」といった独自の条件を整えているところもあります。系列大学に希望の学部や学科がないなどの理由で、他大学への進学を希望する場合にも方向転換がしやすいというメリットがあります。

進学校 ―― 系列大学はないので、全員が大学受験をめざす

進学校は大学受験を前提にしてカリキュラムが組まれているので、自然に大学進学に向けた準備が整います。なかには、予備校いらずの手厚い指導の体制が整っている学校もあり、そういうタイプの学校には、大学進学に向けて一丸となって取り組むという勢いがあります。また、進学校のなかには、系列校ではないものの特定の大学への推薦枠をたくさん持っている学校もあります。

変化が加速する時代。親は常に情報のアップデートを

今回は、まず学校のタイプ別に解説しました。これ以外にも校風や理念、力をいれている教育内容などは学校によってさまざまです。

2020年からの大学入試改革を皮切りに、今、学校教育は大きく変わろうとしています。あなたのお子さんにとってよい学校を選ぶためには、親が過去の常識にとらわれず、最新の情報を収集し、整理する必要があります。

次回は、学校の傾向を分析する方法を解説します。


これまでの記事はこちら『しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

※記事の内容は執筆時点のものです

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