連載 中学受験は親と子の協同作業

中学受験はスタートが肝心! 大手塾の入塾テストで上位クラスを狙うには|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.42

専門家・プロ
2019年9月26日 石渡真由美

中学受験をするなら、大手進学塾に通うのが一般的です。大手進学塾の受験カリキュラムは3年生の2月から4年生コースがスタートします。それに合わせて、各塾では3年生を対象に入塾テストが実施されます。では、その入塾テストではどんな力が求められるのでしょうか?

11月から入塾テストが始まる

大手進学塾では、11月から翌年1月にかけて、これから中学受験の勉強を始める3年生を対象に入塾テストを実施します。入塾テストの目的は、「入塾そのものの可否」と「クラス分け」です。

「塾はお金を払って行くところだから、誰でも行けるのではないの?」と驚かれる親御さんもいるかもしれませんが、結果によっては入塾できないこともあるのです。でも、安心してください。チャンスは11月、12月、1月と3回あります。はじめはテストの問題や形式に慣れず、よい結果が出せないかもしれませんが、次のテストで挽回できれば大丈夫。それには入塾テストの中身を知り、対策をすることが大事です。

こんなに違う! 小学校の勉強と入塾テストで求められる学力

中学受験をするお子さんは、小学校では成績がよく、「テストはほとんど満点」という子が多いと思います。しかし何も対策をせずに入塾テストを受けたら、おそらく20〜30点くらいしか取れないでしょう。そのくらい入塾テストの問題は難しいということです。

入塾テストは「算数」と「国語」の2教科で、それぞれ40分程度の時間で行われます。学校のテストといえば、1枚の用紙に問題と解答欄が一緒になっていますが、入塾テストの多くは問題用紙と解答用紙が別々になっています。しかも問題用紙が何ページにも渡ります。例えば大手進学塾サピックスの入塾テストの場合、B4サイズの問題用紙が7枚程あります。こうした形式に慣れていないと、それだけで戸惑ってしまい、じっくり問題に取り組むことができなくなってしまいます。まずはこの形式に慣れておくことです。

次に中身についてですが、塾の入塾テストは小学校の授業で習う内容よりも、はるかに難しい問題が出題されます。

入塾テストの「算数」で問われる力は次の3つです。

① 計算問題
正確でスピーディーな計算力

② 一行問題
短い文を理解し、和差積商(+−×÷)を判断する力

③ 応用問題
長い文を道筋立てて理解し、試行錯誤する力

小学校の授業では、計算は1段階の計算までしかやりませんが、入塾テストでは四則計算、かっこの計算、3桁の和と差までが出題されます。応用問題では、パズルや迷路など脳トレに近い問題が出るため、それに慣れていないと解くのに時間がかかってしまうでしょう。

「国語」で問われる力は次の3つです。

① 小学3年生までの漢字
② 語句の知識問題
③ 文章読解

漢字知識は小学3年生までに習う漢字ができていれば大丈夫ですが、3年生までに習う範囲の漢字であれば、上の学年で習う読み方も出題されるので、音読みと訓読みの両方を覚えておく必要があります。文章題は2500字程度の長めの物語が出題されます。小学校の教科書では、3000字程度の文章を何回かの授業で分けて読みますが、入塾テストでは2500文字程度の文章を一気に読む力が必要です。こうした文章量の多さにも慣れておかないと、40分の制限時間内で問題を解き終えることができません。

つまり、入塾テストで高得点を取るためには、入塾テストに必要な知識を覚え、小学校のテストとは問題量も難易度も違う入塾テストの傾向に慣れ、それをスピーディーに解く練習をしなければいけないということです。

入塾テストが難しい理由

では、なぜ入塾テストでそこまで難しい問題が出されるのでしょうか?

それは、この先の受験勉強について来られるかどうかを判断するためです。大手塾の授業は、小学校の授業のようにクラスの子が全員分かるまで丁寧に教えてはくれません。年間のカリキュラムが固定されているため、その日の授業で習う単元は、その日に終わらせるというのが基本です。したがって「理解できないところは、家庭でしっかり復習をしてきてくださいね」というスタンスで先へ進みます。

また、大手塾に通ううえでぜひ知っておいていただきたいのは、多くの塾が「何人の生徒を難関校へ合格させたか」という実績を重視しているということです。塾にとって一番ありがたいのは、難関校へ入ることができる実力を持った子どもがその塾に通ってくれること。そのため、テキストをはじめ、すべての学習カリキュラムが、そうした成績優秀な子どもを意識して設定されています。

上位クラスでの入塾を目指したほうがいい

入塾テストでは、「その塾に通えればOK」ではなく、できるだけ上のクラスを目指しましょう。

上位クラスには、その塾のトップクラスの先生がつくことが多く、授業ではテキストに載っている基礎問題から応用・発展問題まで隈なく学習します。(実際は優秀な子が多いため、基礎は軽く触れる程度で応用・発展に時間をかけられる、ということです)

これに比べ、下のクラスの場合は子ども達の理解スピードに合わせて授業を進めていくために、授業が基礎学習だけで終わってしまうことがあります。その傾向はクラスが低ければ低いほど顕著な印象です。そして、塾から出される宿題は授業で習ったものの類題です。上位クラスの生徒が習った応用・発展問題には触れることができません。

なお、入塾後のクラス変動の材料となる組分けテスト(各塾によって名前は異なります)は、すべてのクラスで共通の問題です。

上位クラスにいれば、授業で習った範囲しかテストで問われないため、授業の内容さえしっかり理解できていれば問題ありません。しかし、それ以外のクラスの子は、授業中に学習しきれなかった範囲や問題レベルまで出題されるため、低いクラスになればなるほど、厳しい状況になります。つまり、クラスを上げるチャンスが極めて少ないということです。

下のクラスで入塾するなら、他塾を検討したほうがいい

こうした状態が続いてしまうと、6年生になったときに、志望校の問題レベルに戸惑うことになります。ですから大手進学塾に通うのなら、最初の入塾テストでいかに上位クラスに入れるかが重要になるのです。

近年、難関校を狙うのであれば、難関校に多くの合格実績を出しているサピックスに入れるという流れが目立ちます。しかし、サピックスに通いさえすれば、みんなが難関校に行けるというわけではありません。サピックスで一番下のAクラスからスタートするのであれば、それよりも入塾テストの難度がゆるめの別の大手進学塾で、上位クラスからスタートするほうが効果は高いでしょう。

中学受験で塾選びは大切ですが、お子さんの学力に見合わない塾で頑張らせるよりも、お子さんの実力に合った塾でのびのびと学習をする方が良い結果へとつながります。あまりブランドにこだわらず、わが子にとってのベストな学習環境はどこかという視点で入塾を検討しましょう。

中学受験は、はじめが肝心です。しっかり入塾テスト対策をして、新4年生コースをベストな状態でスタートしましょう。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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