連載 中学受験は親と子の協同作業

低学年からの塾通いで気をつけるべきことは?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.46

専門家・プロ
2019年11月21日 石渡真由美

近ごろ都心では低学年からの塾通いが増えています。その背景には共働きで放課後の預け先がなかったり、通常であれば4年生からスタートする人気中学受験塾の席確保のためだったりと、さまざまな思惑があるようです。しかし低学年からの塾に通わせる場合、気をつけて欲しいことがあります。

1、2年生コースは思考・発想系の学習が中心。楽しく取り組めればOK

中学受験の勉強といえば、4年生コースが始まる3年生の2月からスタートするのが一般的です。ところが今は、どの進学塾でも1年生からコースを設定しています。しかし低学年のコースは、数や模様の連続性などの法則を見つけたり、迷路やクイズのような問題を解いたりするなど、思考・発想系の学習が中心となります。

これらは中学受験の勉強に関係するものの、直結するものではありませんし、低学年から塾に通っていたからといって、4年生以降の成績が保証されるわけではありません。ただ、こうした頭を使う学習が「マイナスだ」ということでもありません。お子さんが「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤に楽しく取り組めるようなら、勉強系の習い事のひとつとして選択するのもいいでしょう。

低学年から成績を上げようとすると、テストのための勉強になってしまう

低学年からの塾通いは、お子さんが楽しく取り組めればOKです。ところが、多くの場合そうはいきません。なぜなら低学年コースでも月1回テストが実施されるからです。しかも成績表には点数・順位・偏差値まで記載されています。

成績が出されると、穏やかな気持ちでいられなくなるのが親というもの。すると、テストでいい点を取らせるための勉強が始まってしまいます。塾に通うのは週1回なのに、テストでいい点を取らせるために、子どもにドリル漬けの生活を強いてしまっている親御さんは少なくありません。こうなってしまうと、自由な発想を徹えようという本来の目的からズレてしまいます。そして子どもは遊ぶ時間をなくしてしまいます。

低学年の子どもにとって、大事なのは自由な時間と遊びです。子どもは遊びを通じていろいろなことを学びます。また、自由な時間を使って熱中することを学びます。本来なら外遊びをどんどんやらせたいところですが、それがなかなか難しい社会環境になってきました。それでもなお、子どもが自由に遊べる時間を充分に確保してあげてほしいのです。学校の放課後に友達と遊ぶことは、安全な遊びの環境として貴重なものです。

友達との遊びが難しいのなら、家族一緒に散歩をしたり、博物館や動物園や水族館に行ったりしながら、子どもが楽しめるものを見つけてあげてください。この時期に遊びのなかで子どもが体験したことが、中学受験の勉強が始まってから決定的に大切になってきます。低学年からの塾通いは、このような体験学習のひとつと捉えて、テストの点数に一喜一憂しないようにお願いします。

全国模試や無料の理科実験教室は入塾を誘うための入口

小学生になると、どこで情報が流れているのか、多くの塾から無料模試や無料体験の案内がやってきます。中学受験をする・しないに関わらず、わが子の学力は気になるものです。無料で学力テストや理科実験教室が受けられるのであれば、「やってみようかしら?」と考える親御さんは少なくありません。

しかし、こうしたものの裏には、多くの場合入塾の勧誘があることを知っておいてください。塾から「今ここでやっておかないと困ることになりますよ」という不安を煽る電話がかかってくるのも珍しいことではありません。無料模試や体験教室を受けること自体はいいのですが、その成績は冷静に捉えるようにしてください。

低学年は「読み・書き・そろばん(計算)」が大切

低学年の学習で大切なのは、生活知識(身体感覚)を豊かにすることと、基礎学習です。これらをないがしろにして難しい問題ばかり解かせても意味がないばかりか、その後の伸びを阻害してしまうこともあります。「9歳(10歳)の壁」といわれる小学校3・4年生になって、はじめて抽象的な事柄を理解できるようになります。それまでに無理をして受験勉強の先取りをさせることには注意が必要です。

また、低学年の学習系の習い事として公文が人気です。公文は自分のレベルに合わせて反復学習ができるという点ではいいのですが、決められた枚数を終わらせることだけが目的になりがちです。丁寧に取り組んでいればいいのですが、解答が殴り書きになっている場合は、注意が必要です。そのようなときは、そろばんがおすすめです。指を動かすことで、集中力が持続する子どもが多いのです。

低学年のうちは、まずは「読み・書き・そろばん(計算)」で学習の基礎を鍛え、それでもまだ余裕があるというのであれば、塾で思考・発想系の学習もしてみる、というスタイルがいいでしょう。判断のポイントは基礎学習がしっかりできていることと、子ども自身が楽しく通っているかどうかです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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