連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

成績が自然と上がる学習環境のつくりかた|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年4月06日 石渡真由美

なかなか勉強を始めようとしない。すぐにゲームをしてしまう。もしかすると、その原因はモノの置き方にあるかもしれません。では、子どもが勉強しやすい環境とは?

子どもの学習意欲は、学習環境に大きく影響する

みなさんが、たまには凝った料理でも作ってみようかなぁと思い立ったとします。その時にキッチン周りに調理器具がぐちゃぐちゃに置かれていたり、調味料や食材がバラバラに保管されていたりして整理整頓されていないと、やる気が失せてしまいませんか。生活空間がきちんと整理されているかどうかは、何かをやろうとするときのモチベーションに大きな影響を与えます。

学習環境についても同じことが言えます。長年、塾講師や家庭教師をしていると、子どもの成績と家庭環境が密接に関連していることに気づかされます。例えば成績優秀で都内の私立トップ中学を目指すご家庭では、リビングも子ども部屋もきちんと整理整頓されていて、モノが乱雑に散らかっているということはありません。一方、成績的に苦しい子の場合、一見おしゃれな外見の自宅でもモノがあふれていたり、問題集や参考書がうまく整理されていなかったりと、整理収納に関して改善の余地があることが多いのです。

頭のいい子の家は、思い立ったときにすぐに勉強できるように工夫されている

では、「子どもの成績が上がる学習環境」とはいったいどのようなものなのでしょうか。私は、以下の3点を挙げたいと思います。

① 思い立ったときにすぐに学習を始められるよう整理整頓されている
② 生活動線に沿って学校や塾の準備が可能な、合理的な家具配置がなされている
③ ゲームやマンガなど、気が散る原因となるモノが極力排除されている

この3点に留意しながら、子ども部屋の環境を整えていきましょう。

整理収納の基本的な流れは「モノの分類」→「モノのグルーピング」→「定位置の決定」です。この流れに従い、まずはモノ(教材)を分類していきます。

モノは大きく分けて次の4つに分類できます。

① アクティブ:常に使用されているモノ
② スタンバイ:使用される準備が整っているモノ
③ プロパティ:ただ単に所有されているだけのモノ
④ スクラップ:廃棄を待つのみの使えないモノ

成績があまり芳しくない生徒の場合、このアクティブ・スタンバイの教材が少なく、プロパティ・スクラップの教材が多いという傾向にあります。そこで一週間の学習スケジュールを見直し、それに合わせスタンバイおよびプロパティの中からアクティブに昇格できる教材を選び出します。残った教材についてはすべて廃棄処分とします。

思い切って廃棄処分とした方がいいのは、「今使っていない教材は今後も使わない」可能性が高いからです。いつか使うだろうと取っておいても、入試が終わるまで使わずに終わってしまった、ということはよくあることです。もったいないと感じるのであれば、ネットのフリマアプリなどで売ってしまうのもアリです。最近のフリマアプリはとても使いやすく売買も簡単なので是非検討してみてください。

アクション数を減らすことが勉強開始への近道

教材を整理していった結果、ほとんどがアクティブ状態となっていることが理想です。教材は使われないと意味がありませんので、基本プロパティやスクラップは0にします。過去問題集など受験直前期にしか使用しないものももちろんありますので、スタンバイは多少残っていても構いませんが、プロパティやスクラップはできる限り減らしていきましょう。

教材の全体量も極力少ない方がよいでしょう。教材がたくさんありすぎると、最初はアクティブ状態であってもだんだんと使わなくなってしまい、スタンバイやプロパティ状態になってしまうからです。

教材の取捨選択が完了した後は、いよいよそれらを並べていきます。基本的には教材は全部、学習机の周辺に並べるのがよいでしょう。本棚などを遠くに置くと、それを取りに行くために「椅子から立つ」「歩く」「教材を手に取る」「戻る」「座る」といった行動を取らねばならず、アクション数が増えてしまいます。アクション数が増えてしまうと学習意欲自体がそがれる結果となってしまいます。

教材を並べる際は、一般的には「算数・国語・理科・社会」のように科目ごとに並べたり、大きさを揃えて並べたりすると思います。その方が見栄えもいいですからね。しかし学習効率を高めるためには、科目ごとや大きさごとに並べる並べ方は、あまりいい方法ではありません。何故なら、勉強をするときにいろいろなところから教材を持ってこなければならないからです。これもアクション数を無駄に増やしてしまい、収納的にも学習効率的にもマイナスです。

ここでは塾のスケジュールに合わせたグルーピングを行い、教材をひとまとめにしていく方法を推奨したいと思います。たとえば月曜日に「算数と社会」、水曜日に「国語と理科」の授業がある塾ならば、「算数のテキストとノートと宿題用問題集、社会のテキストとノートと宿題用問題集」をひとまとめにしてファイルボックスに入れ、「月曜日」とラベリングします。こうすることで、月曜日の塾の準備をスムーズに行うことができ、かつ忘れ物も減らせます。さらに月曜日に出された宿題を火曜日におこなう際も、どの教材を使ったらよいかがすぐにわかり、学習に取り掛かりやすくなります。他の塾の日の分も同様にして整理し、定位置を決めていきましょう。毎日行う計算練習帳や漢字練習帳などは、日々の教材として別にひとまとめにしておきます。

机まわりの整理ができてきたら、今度は子ども部屋・家全体の学習環境の整え方を考えていきます。ここで基軸となるのが「動作・動線の意識」です。受験生にとって家庭学習の中心は「塾の宿題」ということになりますから、一番よく使う塾のテキスト類やノート類は椅子に座った状態で手が届く場所に配置するのがよいでしょう。

百科事典や国語辞典などは、リビングにセットしておくようにするとよいです。こうしておけば、たとえばテレビでニュースなどを見ていて知らない言葉が出てきたときにすぐに調べることができますし、情報番組などで学んだこともその場で確認でき、非常に効率的です。日々の計算や漢字練習をリビングでおこなう習慣がついている子であれば、それらもひとまとめにしてリビングに置いておいてもよいと思います。

勉強の妨げとなるゲーム類は、あえて取り出しにくい場所へ置く

最後に、子どもにとって学習時の集中力の妨げになるゲーム類やマンガ類などの「誘惑」を、どう上手に収納方法するかの問題です。これは「整理・収納のテクニック」をあえて逆手に取り、グルーピングや動線を無視した収納というものを提案したいです。

たとえばゲーム類ですが、一般的にはテレビのすぐ近くに、ゲーム機とソフトをまとめて置いていると思います。この方が、ゲームがすぐにできて便利ですよね。しかし、その「整理収納の常識」を無視して、あえてゲーム機本体とコントローラーとソフトをバラバラに、しかもテレビから離して収納しておくのです。置き場所も、クローゼットや押し入れの上の段など、あえて取り出しにくいところに収納します。ゲーム類の使用頻度からいうとこれは非常に効率の悪い収納方法ですが、受験勉強にとってゲームというのは大きな妨げとなるわけですから、むしろそれらの「誘惑」は、わざとアクション数が増える収納場所の方がいいわけです。

整理収納のテクニックは、生活上の単なる知恵ではありません。それを超えて学習や仕事の能率をアップさせることができる、生き方そのものの力につながるものです。早い段階でそうした力を身に付けていることは、子ども達の将来のためにも、とても意義のあることだと私は思います。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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