連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

夏の学習でやる気を維持するために、保護者が意識すべきこと|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年7月23日 石渡真由美

もうすぐ夏休み。受験生にとっては、勉強に集中できる大事な時期です。しかし、今年はコロナ禍で、自治体によっては学校の夏休みが短縮となっているところもあります。第二派も懸念され、親子さまざまな不安があるなかで受験勉強のやる気を維持するにはどうしたらよいのでしょうか?

過剰な心配が表出すると、子どもに影響を与える

今年は新型コロナウイルスの影響で、小学校の夏休みが短縮されます。私の塾がある吉祥寺周辺の小学校では、夏休みは例年5週間程ありますが、今年は3週間程に短縮されています。塾のカリキュラムは変わらないため、7月中は学校が終わった後に、塾の夏期講習を受けることになります。そして、8月24日過ぎには小学校の二学期が始まり、同じように学校と塾の生活になります。このようにこの夏は受験生にとってハードになるうえに、受験勉強に集中できる期間が、例年より少なくなってしまっています。
 
こうした状況ですから、「今年の受験生は不利だ」と感じる親御さんは少なくありません。確かに夏休みが短縮されてしまうと、「やるべき勉強を消化できないのではないか」と不安を感じるのはやむを得ない面があります。しかし、それは受験生みんなに当てはまることでもあります。大変なのは自分のお子さんだけではありませんから、親御さんは過度に不安に苛まれないようにしてほしいと思います。特に、親御さんが「今年の受験は大変だわ……」「なんでうちの子のときに限って……」などネガティブな言葉を発すると、子どもは「僕はついていない」「頑張っても、ダメかもしれない」とマイナス思考になりかねません。そうなってしまうと学習のモチベーションにも影響が出る懸念があります。

挑戦するには「セキュアベース」が不可欠

コロナ禍で私たちの生活は変わりました。今、自宅でリモートワークをされている親御さんも多いことでしょう。リモートワークは感染を防げるメリットがありますが、家族全員がそろっている状態で、仕事を進めていくのはなかなか難しいものですよね。家にいるのに家事と子育てをお母さん任せにしているお父さん、その様子とわが子受験のサポートでストレスを抱えるお母さん。“コロナ離婚”などという言葉も出てきているように、新型コロナウイルスをきっかけに夫婦間の衝突も増加傾向にあるようです。しかし、そういった家庭内ギクシャクが、子どもの勉強の集中力に悪影響を及ぼします。

「セキュアベース」という言葉があります。直訳すると「安全基地」という意味です。人は誰でも何かに挑戦するときには、不安を抱くものです。そんなときには不安をやわらげ、安心感を与える存在が不可欠です。小学生の子どもにとって、それは親(家庭)であるのは言うまでもありません。親同士の仲が険悪だったり、いつもイライラしていたりするようでは、子どもは安心感どころか不安でいっぱいになり、挑戦しようという気持ちにはなれません。中学受験は小学生の子どもにとって大きな挑戦ですから、子どもを安心して勉強させるには、セキュアベースである家庭がリラックスできる場所でなければならないのです。

子どもの心の安定に規則正しい生活を

私の経験上、実は子どもは成績の上下ではあまり落ち込みません。子どもがストレスを感じたり、メンタルが弱ったりするのは、意外と生活のリズムが崩れているときに起こりやすいのです。たとえば、塾の宿題が終わらず、夜遅くまで勉強をした翌朝は、体調がすぐれず、気持ちも落ち込んだり、やる気がなくなったりします。「子どもに元気がないな……」と思ったら、生活のリズムをぜひ見直してください。また、運動不足も脳の働きを低下させます。この夏は学校と塾の両立で毎日が忙しいかもしれませんが、ときどき体を動かす遊びを取り入れるようにしましょう。そうやって、生活にメリハリをつけたほうが、勉強に集中できるでしょう。子どもの心の安定は、家族の笑顔と規則正しい生活が大事です。中学受験を成功させるか否かは、家庭の力にかかっています。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。