連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中堅校でも記述問題が増加傾向に。記述に強くなるには?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年11月25日 石渡真由美

記述力がもてはやされるようになるずっと以前から、御三家をはじめとする難関中学の入試では記述問題が出題されていました。しかし、近年は中堅校でも記述問題を出す学校が増えてきています。2021年から始まる大学入学共通テストで、記述問題が出題されることが決まっていますが、そのことが影響していると思われます。では、記述に強くなるには、どんな対策をすればよいのでしょうか?

書くことが苦手な子は、書写から

記述に強くなるには、苦手意識をなくし、とにかく「書くことに慣れる」ことです。ところが「書くこと」そのものに苦手意識を持っている子が少なくありません。そういう子どもは昔からいたでしょうが、近年その数が激増しているように感じます。以前のように学校でも家庭でも、子どもたちに「文章を書かせる」ことをしなくなったことが要因であると考えられます。

そんな子たちににおすすめしたいのが、書写です。書写は手本となる文章をただ書き写すだけでよいため、頭を抱えて、文章をひねり出す必要はありません。そのうえ、たくさんの文章を書き写しているうちに、新しい言葉を覚えたり、言い回しを学んだりと、上手な文章の書き方を学べます。

実は私も小学生の頃、親に命じられて毎日書写をしていました。最初の頃はとても面倒くさかったように記憶しています。ところが続けているうちに、徐々に書くことに抵抗がなくなっていったのです。それだけではありません。同じ言葉や接続詞が続いたりすると、「なんだか気持ちが悪いな……」と感じたりするようになっていきました。また同じ意味を表すにもさまざまな表現があることを知ったりもしました。ただ文章を書き写しているだけなのに、気がつくと多くの言葉を覚え、読みやすい文章が書けるようになります。書写の効果は絶大なのです。「書くこと」が苦手な子は、まずは文章の書き写しからはじめてみることを強くおすすめいたします。

学校が記述問題を出す理由とは

記述に強くなるには、書くことに慣れる必要があります。しかし、もちろんそれだけで易々と攻略できるわけではありません。近年の入試ではある事柄に対して、「あなたはどう思いますか?」と解答者の意見を聞くタイプのものが増えてきました。その事柄についてある程度わかっていないと、自分の意見を述べることができません。したがっていくら文章の体裁が整っていても、内容が的外れでは入試で点を取ることはできません。

意見記述の問題でよく取り上げられるのが、社会構造や政治、地球温暖化などといった世の中に関することです。たとえば、2020年の中学入試では、消費税が8%から10%に引き上げられたことに対して、意見を問う学校がありました。こうした事柄について、学校や塾の授業でも触れることはありますが、教科学習では扱わない内容を問われることもあります。

学校側はこうした問題で「世の中に、どれくらい興味・関心を持っているか?」を問うています。今の中学受験は扱う内容が高度で、覚える知識も膨大です。しかし、学校側は勉強だけをして、世の中で起きていることに無関心な子を望んでいるわけではありません。そこで、記述形式で、受験生の興味・関心を見ているのです。受験勉強だけをガリガリやっているだけでは、対応できない入試問題が増えてきているわけです。

世の中のしくみを知るうえでおすすめしたいのが、朝日小学生新聞から出ている『天声こども語』です。朝日小学生新聞の記事を抜粋し、内容を書き写すもので、先に述べた書写と効果は同じですが、ここではもう一歩踏み込んで、要点を書き出し、要約をします。短い文章にまとめる練習は、記述の対策に最適でしょう。新聞社から出ているだけあり、政治、経済、科学、文化などさまざまなテーマに触れることができるのが大きなメリットです。

記述に強い子は家庭内の会話が豊富

教科書やコラムなどを書写して書くことに慣れる。『天声こども語』でさまざまなテーマに触れながら、文章のポイントを見つけ、要約する。こうした方法でかなり記述力はつくと思います。

しかし、記述問題で問われる「世の中への興味・関心」を育むには、こうしたトレーニングと同じくらい、あるいはそれ以上に家庭内の会話が重要です。たとえば、テレビのニュースを親子で一緒に見て、「これってどう思う?」「お母さんはこう思うけど、あなたはどう思った?」などの会話を日常的に交わしているほうが、子どもは自然と世の中に興味・関心を持つようになります。家庭内の会話が豊富な子は、語彙が増えるだけでなく、世の中のさまざまなことに興味・関心を持つようになり、それが各教科への興味にもつながっていきます。そのため、“自分事”として学ぶことができます。すると、勉強も楽しくなるのです。

わが子を記述に強い子にしたいのなら、親御さん自身が世の中のさまざまなことに興味・関心を持つことです。ぜひ親子でたくさん会話をしましょう。それから、書くことのハードルを下げる練習をする。このふたつを忘れてはいけません。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。