連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

子どものメンタル・体調が心配。入試直前期の焦りとどうつき合えばいい?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年12月10日 石渡真由美

12月も半ば。この時期になると、「間に合わない!」「合格は難しいかも……」など、さまざまな気持ちが入り乱れます。SNSなどをみていても、この時期は特に焦りの色の濃いものが増えてきます。どうしたら子どもたちの(親の?)心を落ち着かせることができるのでしょうか?

直前期でも子どもは意外とピンと来ていない

初受験でプレッシャーに押しつぶされないか……。緊張から体調を崩さないか……。お子さんの受験に不安を感じる親御さんは多いと思います。

たしかに直前期にメンタルが弱ってしまう子はいます。しかし、皆が皆そうなるわけではありません。むしろこの時期はまだ入試がどんなものなのか、ピンと来ていない子の方が多いものです。

2月に実施される東京・神奈川の入試が本命の子であれば、1月に実施される埼玉・千葉入試の合否で現実を知って、初めて「入試ってこういうことか!」と気づきます。そこでようやく「頑張らないと!」と、子どもたちにエンジンがかかるのです。ですから緊張感・臨場感を得るためにも、1月の埼玉・千葉入試は受けておくことをおすすめします。

ただし、メンタルが極端に弱い子は、例年1月20日頃に実施される千葉の入試で不合格だった場合、気持ちの立て直しができないまま2月入試を迎えてしまう恐れがあります。メンタルが極端に弱い子というのは、たとえば模試の結果を2日間くらいひきずってしまい、ご飯ものどを通らないような状態に陥ってしまうような子のことを指します。こうしたケースでは1月入試は前半に実施される埼玉校の入試だけを受験し、千葉県の入試は受けないなどの気配りが必要です。

理想は1月入試で2校受験し、1勝1敗です。ひとつ合格を手に入れることで自信をつけ、ひとつ不合格を経験させることで、気持ちを引き締めるというのがいいでしょう。そうやって2月入試に向けて気持ちを高めていきます。

心配なのは、お母さんのメンタル 今こそお父さんを頼って

受験をするのは子どもなのに、本人に緊張感が足りない。そばで見ているお母さんからすれば、「この調子ではマズイ!」「頑張らせなきゃ!」と心穏やかにはいられません。実はこの時期に心配なのは、お子さんよりも、お母さんのメンタルです。

毎年どこの塾でも「なかなか成績が上がらない」、「今の状態だと、第一志望校合格は難しいと塾に言われた」などの理由で、塾に不信感を抱き、慌てて転塾をしたり、家庭教師・個別指導に切り替えたりするご家庭があります。

でもそれは多くの場合、まずい結果を招きます。直前期に学習環境をガラっと変えると、子どもが混乱するだけでなく、学習ペースも崩れかえって調子を落としてしまいます。ですからこの時期まで来たらもう腹をくくって、転塾などは考えない方が良いです。もし子どもの勉強が思うように進まないことに、お母さんがイライラしてしまったり、塾とうまくいっていないな、と感じたりしたら、一度子どもの受験から離れて、子どもの学習管理や塾とのやりとりをお父さんに任せてしまう方がいいと思います。

一般的に男性と比べて女性は共感力が強く、頑張っているのに子どもの成績が伸び悩んでいると、自分のことのように思えて過度に落ち込んでしまうところがあります。また、子どもが全く焦らないことに対して過度に苛立ってしまったりもします。いわば、お母さんの中に2人の人間がいるような心の状態に陥りやすく、精神的に不安定になりやすいのです。

もちろん、女性のみなさんが必ずしも不安定になるわけではありませんが、そうなりやすいことをあらかじめ知っておくと、「私、今ちょっと気持ちが不安定だから、パパお願いね」とバトンタッチしやすくなります。お母さん自身も自分のことを冷静に分析する必要があるのです。

大事なのは、お母さんが笑顔でいられる状態を意識的につくることです。もし頭の中が子どもの受験一色で参っているなら、一日趣味に没頭してリフレッシュしたり、外出して気分転換をしたりするといいでしょう。おすすめなのはテニススクールですが、今さら通えないわという場合には温泉などに行ったりエステの予約をしてみたりしてください。極端な話のようですが、お母さんがニコニコしているほうが、子どもの心は安定し、落ち着いて勉強することができるのです。

直前期だからといって、特別なことをしない

直前期にお母さんにお願いしたいのは、お子さんの健康管理です。まだ弱点対策が終わっていない。もしこの苦手単元が入試に出てしまったら……、といった不安から睡眠時間を削って、勉強時間を増やそうとする親御さんが少なくありません。しかし、直前期にそれは絶対に避けましょう。

小学生は肉体的にはまだまだ子ども、大学受験を控えた高校生のようには無理が利かないものです。入試のために、徹夜で勉強なんてできないのです。個人差はありますが、直前期であっても、7~8時間の睡眠時間を確保してほしいと思います。

ちなみに、入試に合わせてこの時期から朝型の学習スタイルにしておくといいとアドバイスをする先生がいますが、私は必ずしも、無理をして朝型にする必要はないと思っています。というのも、私自身が中学受験を経験したときに、母が塾の先生に同じように言われ、直前に朝型に変えようとしたのですが、当の私は朝が大の苦手で調子を崩してしまったのです。

それでも朝型にしておかないと不安だわ、という場合は、2月入試が本命の子であれば、1月入試に合わせて一度朝型にシフトさせてみましょう。それでうまくいくようならそのまま早起きをさせ、ダメなら元に戻す。「絶対に朝型にしなければ」と固執するのではなく柔軟に対応する心が大切です。直前期だからといって、無理をさせたり、特別なことをさせたりするのはおすすめしません。普段と同じように、やるべきことを淡々とやるというのがいいと思います。

最後の最後は得意科目で自信を持たせる

入試で合格するためには、できるだけ苦手を残さないことです。ですから苦手科目の勉強は、コツコツと続けていきましょう。しかし、本当の直前期(ラスト1週間前など)になったら、苦手科目の深追いから手を引いて、得意科目をより得意にする勉強に切り替えましょう。

その方が勉強をしていても気分が乗るし、得点力を伸ばせるからです。最後の最後に大切なのは、子どもに自信を持たせること。ポジティブな感情があると、“ここぞ!”というときに今ある力を発揮することができます。入試本番まであと1カ月と少し。どうか親御さんもポジティブな気持ちを忘れずに、お子さんを応援してあげてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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