中学受験ノウハウ 連載 私学を覗く

法政大学第二中・高等学校のミリョク ―― 私学を覗く

2021年1月07日 石井知哉

神奈川県川崎市に位置する法政大学第二中・高等学校。法政大学の附属校として「10年一貫教育」の理念にもとづく教育方針で、高い人気を集めている。部活動も非常に盛んで、全国大会常連のハンドボール部やテニス部はとりわけ有名だか、ほかにも凄い部活動がたくさんあることをご存知だろうか。

民主的で科学的。個性豊かな法政二中高の部活動

体育部32クラブ、文化部が21クラブと、数だけでも相当なものだが、グランドホッケー部、自転車競技部、重量挙部、ボート部など、他校ではお目にかかれないような活動も目立つ。体育部も文化部も設備が整っているのみならず、大学の施設を使用できるという附属校の強みを存分に活かし、充実した活動を行っている。

そんな法政二中高の部活動の特徴は「民主的運営」にある。そう答えてくれたのは、入試広報主任の望月則男先生だ。高校の部活動は部長、副部長、マネージャーの三役が中心となって、生徒たちが自主的に活動を運営している。部費について生徒会との話し合いを行うのも三役だという。

もちろん顧問の先生はいるが、活動はあくまで生徒主導。運動については、卒業生が技術指導に訪れることも多いという。「10年一貫教育」の精神は、こういうところにも息づいている。

中学の部活動でも、共有された目標に向かって一枚岩になれる組織づくりが求められている。部活は、居心地の良い遊び場ではなく、クラブ活動を通して「中学生として大きく成長できているのか」という視点をもった運営が貫かれているのだ。

充実した設備のなかで活発に。法政二中高の体育部

法政二中高は3つの体育棟に代表される非常に充実した運動設備を誇る。コロナ禍のなか、密を避けたり一定の対人距離を保ったりと、工夫しながら集中して練習に励んでいる。

多くの部が活動するため、場所と時間を区切って、うまく体育館をシェアしている。サーブ練習に取り組む女子バレー部の隣では、男子バレー部のスパイクが飛び交い、その向こうでは男子バスケットボール部がコート上を駆け回る。

別の棟に移動すると、空手部とフェンシング部が同じ空間を半分ずつ分け合う姿があった。時間が来ると整理体操と終礼、片付けをテキパキと済ませるフェンシング部。その後には卓球部が速やかに準備を済ませてラリーを始める。

いずれの部も、上の学年の先輩が活動をリードしている姿が印象的だ。顧問の先生も「指導する」というより「見守る」という様子。入試広報委員の小林究先生によれば「中学においては、顧問が必ず練習場所にいて丁寧に指導を行いますが、高校においては、顧問が口出しをするのは、専ら怪我や事故の防止など安全面のことや、体育施設を利用する際の部活間の調整ですね。あとは生徒たちが自主的に活動を進めています。中学生は高校生の活動を見て憧れ、『私も高校生みたいに…』と思うことも多いようです」とのことだ。

広々とした体育館では、さまざまな部が汗を流している

隣り合う空手部とフェンシング部の練習風景。両部員とも真剣そのもの

活動に最適な環境でアツく。法政二中高の文化部

文化部だって、負けてはいない。多くの文化部の部室が入る法政二中高の施設「木月総合文化棟」の中でも、数々のアツい活動を見せてくれた。

どこからともなく流れてくるメロディーに誘われるままに足を運ぶと、そこで活動しているのは合唱部。全員しっかりとマスクを着用しながら、美しい歌声で楽しませてくれる。

合唱部の練習風景。法政二中高には音楽室が4つもある

美術室をのぞくと、静まり返った空気の中、美術部員たちが各自で選んだモチーフでデッサンに集中している。どの部員のまなざしも真剣そのもの。そんななか、ふと気づいたのが、美術室の電灯がほかの各部屋と違うことだ。美術活動は、色の見映えが大事なので、美術担当の教員の意見を踏まえて、最適な部屋のつくりにしたのだという。

美術部の活動は、美術活動に最適な設計がなされた美術室で行われる

さらに歩みを進めると、広い立派な和室に到着。そこで活動していたのは、文芸日本古典研究部だ。袴姿を整えた部員全員が迎えてくれた。張り詰めた空気で迫力満点の活動風景は、凛々としていた。

鍛錬を積んだ文芸日本古典研究部員たちの競技カルタは、体育部に勝るとも劣らぬ大迫力

この日は動画撮影にあたり、プロが撮影する風景を見たいということでカメラ部も同席。こういうコラボレーションは、実に微笑ましい。

法政二中高の部活動が重視する「勝ち負け以上に大切なもの」

ここまで紹介したのは、もちろん法政二中高の部活動のほんの一部だ。どの部も真剣、部員たちの笑顔が多く見られる。生徒たちが実に楽しそうなのだ。また、体育系も文化系も大会やコンテストで華々しい成果をあげる部も多い。その秘訣はどこにあるのだろうか?

「高校クラブでは1990年代の前半頃から、部活動は “勝ち負け” を超えた “人格を形成する場” としての側面を重視するようになりました。」と話してくれたのは、入試広報委員の小林靜子先生。「中学・高校ともに、(1)人間関係の構築 (2)品性・マナーの向上 (3)学習と部活の両立、の3点を軸に生徒の成長度に目を向け、結果に至るまでのプロセスを大切にしています。」という。

実際に活動の様子を見ても、そういう気風はありありと伝わってくる。

その一例が物理部だ。実は物理部は、CanSat甲子園の全国大会の常連なのである。CanSatというのは、小型衛星と類似の技術を使用して製作される、飲料水の缶サイズの小型の模擬人工衛星だ。設計からプログラミング、製作までを部員たち自らの手で行い競う大会で、何度も優勝を飾っている部なのである。

近年では人命救助をミッションに掲げ、災害時に探索に役立つCanSatの開発をテーマとしている。単に技術力を高めるためでなく、社会的に意義のある研究を進めているのだという。

全国大会優勝のごほうびは国際大会出場。物理部の活動がきっかけで、海外との交流や研究者への道を志した卒業生もいるのだとか

なるほど、こうした活動は、目先の勝負を追求していては、実現が難しい。部活動がきっかけで、将来の選択肢が増えたり、社会に目を向けたりと、子供たちの可能性が広がる。それは、部活動の教育的な面を大切している、法政二中高ならではのものではないだろうか。

◇ ◇ ◇

近年「ブラック部活」なる言葉があるらしい。朝から晩まで、過酷な練習時間が課され、生徒や教員が疲弊するような部活動を、「ブラック企業」にちなんで、そう呼ぶようになったのだとか。今日ではさらに進んで、「部活動不要論」のような論が聞かれることさえある。

しかし法政二中高の各クラブを見ていると、体育部も文化部のいずれにおいても、生徒たちが自ら選んだ部の活動に真剣に打ち込み、そして心から楽しんでいる姿が印象的だ。「ブラック部活」とは対極に位置する、そうした取り組みは、生徒たちの人格形成に大きなプラスをもたらすに違いない。

学校Web:法政大学第二中・高等学校

※記事の内容は執筆時点のものです

石井知哉
この記事の著者

株式会社QLEA教育事業部部長。教育系Webサイト「School Post」を主宰。2000年、早稲田大学第一文学部 哲学科卒業。東京都の塾業界にて指導歴20年以上。現在は、東京都大田区で個別指導塾2校舎の教務・運営を統括する傍ら、千代田区麹町に超少人数制個人指導道場「合格ゼミ」を開設。豊富な実践経験に裏付けられた独自の理論とメソッドに基づき、小学校低学年から中・高・大学受験生、就職試験対策の指導にあたっている。幅広い学年・学力層・教科を対象に、個々の成長を最大限引き出す指導を得意とする。

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