連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

まじめにコツコツ勉強しているのに成績が上がらない……。学習のやり方をどう見直せばいい?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年1月07日 石渡真由美

塾に通っていて家庭学習も地道にやっている。それなのに成績が上がらない。こうした状況はとても歯がゆいものです。頑張っても報われないことが続くと、お子さんのモチベーションも下がってしまいます。そうならないためには、勉強のやり方を早急に見直す必要があります。

時間の長さ・回数よりも、集中して勉強する時間が大事

勉強をしているのに成績が上がらないというのは、そもそも勉強のやり方が間違っているのだと私は思います。

多くの親御さんは「たくさん勉強することが良いこと」だと思っているようです。しかし、勉強は「時間の長さ・回数」ではなく「質」が大事です。長時間勉強していても、授業中の集中力が欠けていたり、宿題をやるときにいい加減にやっていれば、理解も進みませんし成績だって上がらないでしょう。

個人差はありますが、小学生の子どもの集中力が続くのは、せいぜい40分程度です。その集中できる時間にどれだけ学習内容を吸収できるかにかかっています。なかなか集中できない子には、タイマーなどを使って「今から40分間、集中してこの問題集を取り組もうね」と、時間を決めて集中する経験を積むのが効果的です。

適度な負荷を親から与えてみる

多くの受験生が塾に通いますが、ただ塾に通ってさえいれば成績が勝手に伸びていくわけではありません。親御さんは、塾に通うことで子どもが勝手に勉強し、伸びていくことを望みますが、現実はそうはなかなかいかないものです。基本的に自分から勉強する子どもはごくまれです。精神的にまだ幼い小学生なら、なおさらです。

私は、努力する以外の近道など存在しないと思っています。仕事でもスポーツでもそうですが、成果を出す人は総じて努力を惜しみません。今は世の中の空気感が全体的にどこか甘くとらえているところがあり、少しきついことを言とすぐ「パワハラだ」とかいわれてしまう風潮が蔓延していますが、私はそれは危険なことだと考えています。もちろん、休みもなくハードな練習を強要するのはよくないことです。しかし、その一方で「嫌なことはやらない」という姿勢を黙認していては、なかなか成長できないことも現実です。そういう厳しい現実も保護者の方は意識する必要があると私は思います。

私は「やることをやる」経験が重要だと思うのです。これは極端な例かもしれないですが、私の家では、宿題をちゃんと終わらせないと夕飯が出てきませんでした。ご飯が食べられないのは嫌ですから、それこそ集中して宿題を終わらせました。そうしているうちに、ご飯前に宿題を終わらせることが当たり前になりました。いまなら「児童虐待だ」というそしりを受けかねませんね。しかし私にとってはまさにこここそが「原体験」となっており、母親には厳しく当たってくれたことをとても感謝しています。

こうした手法が今の時代にそぐわないのは理解できます。しかし、子ども任せにせず、親が関与して勉強を促したり、適度な負荷をかけてあげた方がうまくいく場合もあるということです。前述したようなタイマーをつかった集中学習などは、適度な負荷を与える方法の一例といえます。

子どものつまずきタイプを見極める

勉強に努力は不可欠です。しかし闇雲に努力してもうまくはいきません。子どもにはそれぞれつまずきの傾向があります。その傾向を見極めて、それに合った勉強のやり方に変えていくことも大事です。

私の考える主なつまずきのタイプは、次の4つです。それぞれの対策をあげていきましょう。

①学んだことをすぐに忘れてしまう

このタイプの子どもには授業の後に、宿題で一度やって終わりではなく、しばらくしてもう一度やらせてみます。1週間ごとに解かせてみる、日曜日に覚え直すなど、家庭内でルールを決めておくといいでしょう。

効率よく学習させるために「苦手単元」を細かくチェックする必要はあります。たとえば算数の旅人算で、「うちの子は追いかける問題と出会う問題は理解できているけれど、池の周りを回る問題になると理解できていないようだ」、といった感じで、どこでつまずいているかを親御さんがチェックしてあげましょう。むやみにやるのではなく、ピンポイントで苦手対策をしてあげると、忘れにくくなります。

②興味のないことはまったく覚えられない

理科や社会の暗記科目を苦手とする子がいます。子どもは興味のあるものは一生懸命勉強しますが、興味がないものに対しては、やる気が起きないものです。

そうした子は、まず興味を促すきっかけを作ることです。たとえば社会の地理にまったく興味のない子には、ゲームの『桃太郎電鉄シリーズ』(桃鉄)がおすすめです。桃鉄をやっていると、自然と日本地図に詳しくなり、その土地の特徴を楽しみながら知ることができます。歴史が苦手な子には、『信長の野望』などの歴史ゲームもありだとおもいます。

理科の植物が苦手なら、図鑑を持って親子で散歩に出かけるのもいいですね。植物の花の名前というのは、その花の特徴を表したものが多いものです。たとえばオオイヌノフグリという花がありますが、これは果実の形が雄犬の陰嚢に似ていることから、このような名前がついたと言われています。実際に見てみると「なるほど!」と思うのですが、そういうエピソードを知ると楽しみながら覚えることができます。こんなふうにして子どもたちの興味を喚起することが大切です。

③学習に対して常に受動的なタイプ

先にもお伝えしましたが、基本的に子どもは自分から進んで勉強をしません。そこで親御さんが促したり、適度に負荷をかけたりすることになりますが、この時に気をつけてほしいのが、親が何でもかんでも先回りしてしまうと、いつまでたっても自主性が身につかず、受け身の子になってしまいます。

小学生の頃から受け身タイプの子になってしまうと、中学に入ってからも大人からの指示がなければ勉強ができない子になってしまいます。そうならないためには、できるだけ自分のことは自分でやらせることが大切です。

まず学校の準備は自分でやらせましょう。子どもに任せると忘れ物をして恥をかいてしまうのでないかと心配される親御さんは少なくありませんが、失敗は成功のもとです。子どもにはたくさんの失敗を経験させることが大事です。

失敗を経験せずに学ぶことはできません。自分のことを自分でやれるようになると、勉強に関しても、自分で学習スケジュールを立て、自分の意志で勉強するようになります。ただ、小学生はまだ精神的に幼いのですべてを自分で、というわけにはいかないと思います。でも、その下地を作っておくと、必ず後伸びします。

④目的意識がぼんやりしている

精神的に幼い子で、親から言われたことしかやらないぼんやりタイプの子は、なかなか成績が上がっていきません。そういう子は、全国模試などを受けさせて、今の自分の位置付けをハッキリさせると、急にやる気のスイッチが入り、頑張り出すことがあります。

それでもぼんやりしている子は、中学受験の目的を考え直す必要があります。なにがなんでも上位校を目指すのではなく、中堅校で6年間ゆっくり伸びていけそうな学校を選ぶようにするとよいでしょう。親御さんからしてみれば、中学受験をするからには上位校に入れたいという思いがあると思いますが、精神的にまだ幼い子を無理に引っ張っても、効果は期待できません。それどころか、親御さんにガミガミ言われて勉強嫌いになったり、「できない自分」という劣等感を植え付けられてしまったりと、子どもは自己肯定感を得ることができず、その後に伸びていくはずの芽を摘んでしまう恐れがあります。

このように、お子さんの様子を見ながら、対応を変えていく必要があります。大切なことは、中学受験で勉強嫌いにさせないことです。受験後も子どもたちの人生は進んでいくのですから。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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