学習 連載 中学受験の「新」常識

子供には本心でぶつかろう|下剋上受験著者 桜井信一さんに聞く 中学受験の「新」常識【4】

専門家・プロ
2021年1月26日 ハルカ

中学受験は賢い子だけのものではない。普通の子こそチャレンジすべき。この連載ではいままで当たり前だと思ってきた中学受験の常識を見つめ直します。著書『下剋上受験』や『下剋上受験塾』で多くの受験生とその保護者から支持を集める桜井信一さんに、中学受験の常識についてお話をうかがいました。
桜井信一

オンライン塾「下剋上受験塾」主宰。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。 娘の下剋上のために一念発起して小5の勉強からやり直す。塾には行かず、父娘の二人三脚で偏差値を41から70に上げ、100%不可能とされた最難関中学「桜蔭学園」を目指した。その壮絶な受験記録を綴った『下剋上受験』はベストセラーに。 2017年1月には待望のドラマ化。学習講座「桜井算数教室」「国語読解記述講座」では、のべ2000人の親子が参加し人気を博した。2020年、オンラインの「下剋上受験塾」を立ち上げた。

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下剋上受験塾

伝えたいのは数のおもしろさ

――桜井さんが子供と接するときに気を付けているのはどんなことでしょうか。

一番気をつけているのはギャグを言わないことです(笑)。小手先のおもしろさで笑わせるのではなく、子供には私が楽しそうに解いている姿を見せたいと思っています。

中学受験の算数ってエキサイティングなんですよね。以前もお話ししましたが、私は子供たちに「実生活と結びつけると算数はこんなにおもしろいんだ」と気づいてほしいんです。たとえば12と72を見たときに同じ数の仲間だってことに気づくかどうか。子供に対して「わかる?」と聞くのではなく、「私はそんな風に数を見ているんだ。こういうところまで見ているのはかっこいいと思わないか」と伝えようとしています。

――たしかにそうやって数のしくみに気づけるとおもしろいですよね。

私は算数を教えるときは徹底して横のつながりを意識させるようにしています。たとえば分数倍は直角三角形の面積を求めたり相似を調べるときにも使えるのですが、塾では単元ごとに授業をするのでそこまで教えてはいられないでしょう。でも算数はすべてつながっています。横のつながりに気づければ勉強時間も圧縮され、結果的に成績も伸びるはずです。

子供に響く声かけを

――子供にそこまで教えるのは大変ではありませんか。

子供は多少難しいくらいの話を盛り込んだほうが意欲的に取り組んでくれます。あとは教え方も重要ですね。多くのオンライン授業では用意した図形や解説をきれいにまとめていますが、私はぶっつけ本番で問題を解いています。準備しすぎると練習したような教え方になってしまい、ライブ感やワクワク感のある授業になりませんからね。

――あくまで子供目線を徹底されているのですね。

娘の受験勉強でも私は一緒にイチから勉強して教えました。子供と並走して受験に挑んだからこそ気づけたことも多いです。でも同じ方法はおすすめできませんし、私ももう一度は無理ですね(笑)。だからオンライン塾というかたちでほかの親御さんたちに近道を示したいと思っています。

――桜井さんのように子供に響く声かけをするコツを教えてください。

本心をぶつけることですね。たとえばなぜ中学受験をするのかに対して「学歴は必要」「将来の選択肢を増やす」といった表面的なこたえは子供に見抜かれます。

私は娘に勉強ができないことの恥ずかしさや勉強ができることのかっこよさを伝え続けました。中学、高校、大学と決められたレールに乗って平凡と言われる生き方をすることがどれだけ大変か。私はそうでない行き方をしたから分かるんだと。忍耐力と継続力がある人は信用できる。だからそういう力を身につけてほしいんだという本心をぶつけました。

自分が何を尊敬し、それがどれだけかっこいいかを伝えるのはなかなか難しいことです。まずは、親自身が本心で何を学んでほしいかをしっかり言語化すること。そうすれば、ちゃんと子供に響くのではないでしょうか。

生まれ変わってもこの家にと思われるように

――小学生は反抗期が始まる時期でもありますよね。なかなか親の言葉を聞いてくれない家庭もあると思いますが……。

親も人間ですから自分を大きく見せたいと思ってしまうんですよね。でも自分ができなかったり忘れたりするのを棚に上げて叱られたら、子供だって反抗したくなってしまうでしょう。逆にたくさん手をかけてもらっている実感があれば、反抗する理由はなくなると思います。

世の中にはもっと恵まれた家庭がたくさんあるなかでこの子はこの家に生まれた。ならうちに生まれて良かったと、生まれ変わってもこの家に生まれたいと思えるようにしてあげなければと私は思っています。

反抗期こそ子供に手をかけてあげて

――子供が反抗期に入ってしまったらより一層手をかけてあげるべきだということでしょうか。

そうですね。親とはいえまだまだ自分のことで精いっぱいという人もいるでしょうが、子供を適当にあしらっていたら親として認めてもらえないのではないかなと。たとえば料理に手間をかけるとか欲しいものを聞いてあげるとか、できることはどんどんやってあげてほしいです。親子で話し合った結果なら、ゲームの課金も良いと思います。

親が手をかけて心をこめて向き合っていれば子供には伝わります。中学受験が終わったら一緒に勉強することはなくなるでしょう。中学受験は親子で挑める最後の受験なんです。ぜひ今よりもう少し子供に手をかけてみてください。

※記事の内容は執筆時点のものです

桜井信一
桜井信一 専門家・プロ

オンライン塾「下剋上受験塾」主宰。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。 娘の下剋上のために一念発起して小5の勉強からやり直す。塾には行かず、父娘の二人三脚で偏差値を41から70に上げ、100%不可能とされた最難関中学「桜蔭学園」を目指した。その壮絶な受験記録を綴った『下剋上受験』はベストセラーに。 2017年1月には待望のドラマ化。学習講座「桜井算数教室」「国語読解記述講座」にはのべ2000人の親子が参加し人気を博した。2020年、オンラインの「下剋上受験塾」を立ち上げた。

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ハルカ
この記事の著者

大手進学塾で6年間国語講師を務め、塾では主に5,6年生を担当。偏差値20台の勉強しない子供から、御三家に合格するレベルの子供まで幅広いレベルを受け持ちました。モットーは「無理なく楽しく効率的に」。

現在は中学受験を応援する個人サイトを運営。教育系webライターとして教育系、子育て系サイトでの活動も行っています。

中学受験アシストブック
https://assist-book.com

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