学習 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験 算数を得意にするにはどうすればいい?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年2月04日 石渡真由美

4科目型の中学入試の場合は、国語、算数、理科、社会の総合点で合否が決まります。なかでも算数が得意だと有利と言われています。なぜなら、算数は得意か不得意かによって点差がつきやすい教科だからです。実際、入試でも合格者平均点と全体平均点の点差が最も大きいのは、多くの中学で算数です。では、算数を得意にするには一体どうしたらよいのでしょうか?

思考力が重要と言うけれど

今日の教育では、「思考力」や「記述力」といったものが重視される傾向が強まっています。今年から始まった大学入試共通テストも、これらの力を評価する内容になっています。それは従来型の「知識一辺倒の教育」からの脱却ともいえます。しかし、一方で私は「知識を覚えることが悪い」といった昨今の風潮にいささか危うさを感じています。なぜなら、物事を考えるには元になる知識が不可欠で、そこを疎かにして深い思考などできないからです。

算数の知識とは、解法パターンを覚えることです。受験算数には「つるかめ算」「和差算」「出会い算」など、さまざまな解法パターンがあります。算数を得意にするにはまずはこの解法パターンをきちんと覚えることが重要です。解法パターンを覚えるというと、単にテクニックを覚えるだけで、「思考力が大事」という流れに逆行しているように思われがちですが、実は算数はどれだけ解法を知っているか、それを記憶の引き出しからいかに瞬時に引き出して使えるか、それをどれだけ上手に組み合わせられるか、が重要なのです。

解法パターンと図式はセットで覚える

解法パターンを覚えることは大事です。しかし「ただの丸暗記」ではいけません。「なぜそうなるのか」「どうしてこの式になるのか」、理解・納得して暗記しなければ、すぐに忘れてしまうでしょう。受験算数にはいくつもの解法パターンがありますから、丸暗記だけで覚え、それを効率よく引き出すのはほぼ不可能です。したがって覚え方にも工夫が必要なのです。

そこでおすすめするのが、「図と解法をリンクさせる」ことです。たとえば、「和差算」や「倍数算」なら線分図を、「つるかめ算」「差集め算」「過不足算」なら面積図を、「出会い算」や「追いかけ算」なら状況図やダイヤグラムを、食塩水の問題ならビーカー図をといったように、解法パターンと図式をセットで覚えるのです。こうすると記憶に残りやすくなりますし、記憶を引き出しやすくもなります。上記のように図の描き方でおおまかにカテゴライズしておけば、覚えるべき解法パターンを減らすこともでき、効率よく覚えることができます。

長い文章問題を解く時もまずおこなうべきは図式化です。まずは問題文をしっかり読んで、その内容を図に描き出してみましょう。図形問題なら、問題用紙に書いてある図に数字や記号を書き込むのではなく、図も自分で描き起こします。そうやって自分の手で描いて“見える化”すると解きやすくなりますし、図を書いているうちに手指が動かされ、脳が活性化されてひらめき力もアップします。問題を読んで解法がパッと浮かばなくても、手を動かしているうちに解法を思い出すことがあるものです。

ところが、受験生のなかには「図を描くこと」を面倒くさがる子がいます。残念ですが、こういう子はなかなか伸びていきません。私は算数の文章問題を指導する際も、必ず図を描いて説明をします。そうでなければ、生徒達が理解できないからです。ですから、実際に問題を解く時も必ず図化するように口を酸っぱくして言っています。

よく算数が得意な子は「ひらめき力」があると言われます。しかし、そういう天才的な力を持った子はごく稀で、ほとんどの場合参考になりません。でも図を使えば、どんな子でもどんな難しい問題も解けるようになります。要はそれをやるかどうかです。図は、ごく一部の天才に対抗するための飛び道具のようなものだとお考えください。戦闘の時に飛び道具を使わない人はいませんよね。それと同じことです。

算数の解法を覚えるには、図を描く訓練なしでは身につきません。はじめはうまく線や円が書けない子もいます。でも、何度も描いていくうちにきれいに早く描けるようになります。音楽やスポーツもそうですが、うまくなるためにはたくさん練習を積むしかありません。逆に図がどんどん上手になってくれば来るほど、算数が楽しくなってきます。算数が得意な子ほど図を書くことも得意なものですが、真実は逆で、図が得意な子ほど算数が得意なのです。

そこで親御さんにお願いがあります。宿題チェックをする際には、答えがあっているかどうかよりも、まずは図がきちんと描いてあるかを見てあげてください。そのとき、字がきれいかどうかはあまり厳しく言う必要はありません。正確な図を描こうとしているかを確認し、少し雑になっていたら、きちんと図にすることの大切さを根気よく伝えてあげてください。わが子を算数が得意な子にしたければ、親御さんがほんのちょっとでいいですから算数の学習に関わってあげて欲しいのです。

よく出る2桁の計算や分数の計算は暗記する

それともうひとつ、算数を得意にするには計算力を上げることが成績アップの近道です。どんな問題でも算数には計算が必要です。その計算でつまずいてしまうと、もちろん得点できないばかりか、算数の思考の流れが遮断され、せっかく算数のセンスがあってもそれを活かすことができません。そして、計算にはある程度のスピードも要求されます。

計算ミスを防ぐために筆算をすすめる指導者は多いのですが、実は筆算自体に計算ミスのリスクがあります。たとえば次のようなものです。

「九九の書き間違えミス」
「位取りのミス」
「小数点につけ間違いのミス」
「自分の字が汚くて読めないために起こる読み取りミス」

ですから、私はや「平方数の計算」「3.14の計算」などは、九九を覚えるように暗記することをおすすめしています。「2桁×2桁のかけ算」も工夫によっては暗算でできます。たとえば「24×15」なら「24×10=240と24×5=120」に分解して計算します。こうすることで筆算による計算ミスを確実に減らせますし、計算の工夫をいろいろと考えることで脳を活性化することにもつながります。また、入試に出題される計算問題には、\(\frac{1}{8}\)=0.125、\(\frac{3}{8}\)=0.375、\(\frac{5}{8}\)=0.625などのように分数を小数に直して計算をすると非常に楽に素早く計算できることがあります。よく出る分数はその場で計算などせず、頭に叩き込んでおくことが中学受験生にとっては必須です。

算数を得意にするのに必要なことは、「解法パターンを図式とセットで覚えること」と「計算力を高めること」です。ここをしっかり鍛えて、ぜひ算数を得意科目にしてください。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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