連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

子どもの学習スケジュール管理に、親はどこまで関わるべき?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年4月27日 石渡真由美

学校には学校の時間割が存在し、塾には塾のカリキュラムが存在します。そのほかにピアノやサッカーなど習い事があると、スケジュールを管理するのは大変です。そこに「いつまでに何の宿題をやるのか」「テストに向けての学習計画はどうするのか」など学習スケジュールの管理が乗っかってきます。ではいったい誰がその管理をしてあげるべきなのでしょうか? 子どもに任せるべきなのでしょうか? 親がやるべきなのでしょうか? 今回は中学受験の学習スケジュールを上手に管理していく秘訣をお伝えしたいと思います。

受験勉強で一番大事なのは宿題。疎かにすると成績は上がらない

一般的に中学受験の勉強は、塾のカリキュラムがスタートする小学3年生の2月(塾では小学4年生の扱い)から入試本番までの3年間かけて準備を進めていきます。授業日は塾によって異なるものの、4年生が週2日程度、5年生が週3日、6年生になると週3〜5日と増えていきます。

塾は受験勉強を進めるうえで欠かせませんが、「塾に行けば家で勉強をしなくていい」というわけではありません。よく「高いお金を払って塾に行かせているのに、子どもの成績が伸びない」とおっしゃる親御さんがいますが、基本的に塾は受験に必要な各教科の単元を教える場であって、成績を伸ばしてくれるところではありません。

子どもの学力が向上するのは、授業を聞いているときではなく、宿題で授業内容を振り返っているときです。どんなにマジメに授業を聞いていたとしても、それを家で振り返えらなければ、知識は身に付いていきません。スポーツ選手が好成績を出せるのは、良いアドバイザーがいるからではなく、そのアドバイスを受け入れながら、自主的なトレーニングや反復練習をして、自分の力に変えているからです。この反復練習にあたるのが「塾の宿題」といえます。ここを疎かにして、成績向上は望めないのです。

したがって、宿題管理は中学受験の必須条件といえます。では、それを誰がやるのか。やはりお子さんが慣れるまでは親御さんがきちんとリードされた方がいいと思います。子どもに任せてしまうと、期限内に終わらなかったり、丸付けが雑になってしまったり、間違えた問題の解き直しを全くせず答を丸写しして終わらせたり、カンニングをしてしまったりするからです。なかには子どもだけでできるケースもありますが、それができるのは全体の約1割程度の精神年齢の高い子だけで、あまり参考にはなりません。「うちの子はそんなことはできない……」と思ったら、親御さんが管理するしかありません。

宿題は終わりさえすればいいというわけではありません。問題を解いてみたけれど間違えてしまった箇所や、わからなかったところを、丁寧に見ていく必要があります。私の塾には、「宿題ノート」というものがあり、そこに式や答えを書くだけでなく、間違えたときは「なぜ間違えたのか」理由と根拠を自分なりに考え、書き残すように指示しています。

そうすることで間違えた原因を把握し、次に生かすのです。これをきちっとやっている子は、たいてい成績が伸びていきます。もちろん初めはみんなうまくできません。しかし、毎日続けていくと自分なりに工夫するようになり、成績にも徐々に効果が出てきます。すると、伸びていく快感を覚え、自分でやるようになるのです。

このように、はじめは親御さんがしっかり宿題を管理し(やったかどうかだけではなく、きちんと理解できているかどうかをチェック)、少しずつお子さんに任せていくというのが理想です。自分で自分の間違いを気づき、修正できるようになると、成績も上がっていきます。

1日の学習スケジュールはざっくりでOK。やることにこだわるとうまくいかなくなる

中学受験の勉強は、毎回塾で新しい単元を習い、それを宿題で振り返り、テストで実力を測り、できなかった箇所を見直して修正していくサイクルになっています。受験の準備期間は3年程度あるといっても、次々に新しいことを習っていくので、毎日計画的に勉強を進めていかなければ、積み残しが増えていくばかりです。

しかし、私は1日の学習スケジュールをガチガチに決めてしまうことには反対です。「何時から何時までに何を何ページやる」と細かく予定を組んでいても、その通りに行かないことの方が多いからです。やると決めたことがやれていないと、親御さんもフラストレーションが溜り、子どもを叱ることが多くなります。すると、勉強に対するモチベーションが下がってしまったり、親子関係がギクシャクしてしまったりと、かえってうまくいかなくなってしまうことが懸念されます。また、やることにこだわってしまうと、宿題が終わったかどうかのチェックだけをして、きちんと理解できているかどうかのチェックが甘くなります。

ですから1日のスケジュールはざっくりと決めておく程度にするのが私のおすすめです。たとえば、算数の宿題と漢字ドリルと、時間に余裕があれば理科のテキストを読んでおくといった感じでいいと思います。その際、やろうと考えているドリルやテキストを机の上に積み上げておくといいでしょう。そうすると、「今日はこれだけやればいいんだな」と大体の目安がわかります。そして、終わったものからテキストやドリルを片付けていきます。そうすると、やった分だけテキストの山がどんどん低くなり、「今日はこれだけやったんだ」と達成感を味わうこともできます。

1ヶ月、半年、1年後の目標は明確に立てる。曖昧なビジョンでは頑張る気持ちは生まれない

1日の学習スケジュールはざっくりで構いませんが、1ヶ月先、半年先、1年先のビジョンはしっかり持っておきましょう。目標が曖昧だと、何をどう頑張っていいのかわからなくなるからです。

たとえば今、お子さんが小学5年生で、第一志望の学校が偏差値60の難関校だとします。しかし、偏差値は45しかありません。「入試本番まではあと1年半以上もあるから、なんとかなる」と、楽天的に構えていると、あっという間に時間が過ぎてしまい、慌てることになります。そこで必要になるのが目標です。

GWは小学校がお休みになるため、受験勉強にはもってこいです。でも「とにかく算数を頑張る」というような漠然とした目標ではうまくいきません。今現在のお子さんの学力が偏差値45で、偏差値60の学校を目指すということは、現時点での偏差値15ポイントの差があるということです。小学5年生の5月であれば、入試までは20ヶ月。ということは、1ヶ月に偏差値を0.75ポイント、半年だと4.5ポイント上げなければなりません。であれば、半年後に偏差値5ポイント上げる目標を立てておきます。偏差値を5ポイント上げるのは、各教科の成績をどのように上げていけばよいか考える必要があります。そうやって具体的な対策を考えていくことが大事なのです。

1日の学習スケジュールはざっくりで構いません。でも1ヶ月先、半年先、1年先のビジョンは立てておくべきなのです。目標は心の中に留めておくのではなく、文字に書き出しておきましょう。目標を文字に書くと、書かない人よりも達成率が高いというエビデンスもあります。これを「コミットメント効果」と言います。「結果にコミットする」というテレビコマーシャルでおなじみのアレですね。1ヶ月後、半年後、1年後に、自分はどうなっていたいかビジョンを掲げ、日々の勉強を頑張る。それが中学受験を成功させる秘訣です。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。