連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

頭のいい子の家庭の共通点ってなに?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年10月14日 石渡真由美

塾の成績がいいだけでなく、いろいろなことを知っている頭のいい子っていますよね? 頭のいい子に育てるには、親はどんな関わりをすればいいのでしょうか。頭のいい子の家庭の共通点を探ります。

親が子離れしている

中学受験の塾講師の仕事に就いて、かれこれ30年以上が経ちます。その間、たくさんの親子を見てみましたが、頭のいい子の家庭の親御さんは、早くから子離れできていると感じます。聞くと、小さい頃から自分の洗濯物は自分でたたんでいたり、学校の準備も自分でしていたりと、子どもに任せている家庭がほとんどでした。仮に子どもが忘れ物をしても親が届けることは一切していませんでした。子どもに「困った」経験をさせて、失敗から学ばせているのです。

入塾前に「自分のことは自分でやる」習慣がついている子は、学習スケジュールも自分で立て、自分で課題を見つけ、自分で勉強する傾向があると感じます。親がやることは、学習スケジュールのフォーマットを作ってあげることと、学習の進みを確認することくらいです。中学受験は親のフォローが不可欠と言われていますが、子どもが自立していれば、親の負担はグンと減り、子どもと衝突する機会も少なくすみますし、ほかのことに時間をかける余裕も出てきます。

中学受験を成功させる秘訣は「いかに子どもを大人にするか」です。大人度が上がると、自分で学習スケジュールを立てて勉強するだけでなく、自分は何が得意で何が苦手か自己分析することができ、自分で修正できるようになります。また、自分中心の世界から人を思いやったり、共感したりといった他者理解ができるようになります。人の気持ちがわかるのは、国語の読解力や記述力にも必要な力です。

小さい頃から本に親しんでいる

頭のいい子の家庭には、本がたくさんあります。小さい頃から小説や図鑑、事典に親しんできた子は、何もして来なかった子と比べて基礎知識の量が違います。そのため塾の授業で習ったことが「初めて聞いたこと」であるケースが極端に少ないのです。

図鑑や事典に親しんでいる子は、たとえば理科・社会の授業を受けていても「あ、あのことか!」とすでに知っていることがよくあります。プラスアルファの知識を積み上げればいいので、暗記の際の負荷が少なくなります。「知っていることを、詳しく知ることができて楽しい!」と感じる子も多いようです。知ることを楽しむ土台ができているので、「勉強をしている(させられている)」感覚が少なく、自然と知識を吸収していきます。

小説に親しんでいる子は、共感力や一般常識力が養われている印象があります。小説にはいろいろなバックグランドを持つ家庭の人が出てきますし、戦争、貧困、差別、ジェンダーなど、社会でどんな問題が起きているかを知ることもできます。

ただし、ファンタジー要素が強い子ども向けの本だと、その力は付きにくい印象です。読書は好きだけど、国語の成績が伸びない子は、こういった類の小説のストーリー展開を楽しむだけで満足しているように感じます。大人度を上げるには、お子さんの興味のある分野で、少し背伸びをさせた本も渡してあげるといいでしょう。私の教え子の中には、小6の夏休みに「永遠のゼロ」を読破した子がいました。この生徒は最上位校の国語の入試問題で困ることは全くありませんでしたね。

パズルやナンプレなど、試行錯誤する遊びが好き

頭のいい子は、自分であれこれ考えるのが好きです。特にパズルやナンプレのような、ああでもない、こうでもないと試行錯誤するゲームに親しんでいます。一方、普通の子はいわゆるテレビゲームを好みます。もちろんこれらのゲームの中にも、考えながら進めるタイプのものもあるのでしょうが、攻略ルートがある程度決まっていて、しかもその攻略法が本やインターネットで検索すれば簡単にわかってしまうものが多いです。そのため、思考力を充分に鍛えるところまではいかないと感じます。

パズルやナンプレなど、人によってやり方が多彩で、簡単に正解が出せないものをやり遂げられる子は、あれこれ考えてみることに慣れているようです。こうした子は算数の難問などに直面しても、「難しいけど、解いてみるぞ!」と前向きに取り組むことができます。受験勉強でも、粘り強さや難しさを楽しむ気持ちを持った子のほうが伸びやすいのです。

中学受験をする多くの子は、親からすすめられて勉強をはじめ、通っている塾の言われるまま、与えられた課題をこなしがちです。しかし、そのような受け身の姿勢をずっと続けていると、成績は必ず伸び悩みます。伸びる子、すなわち頭のいい子は、自分で考える力を備えています。学習スケジュールの組み立て方にしろ、勉強に対する姿勢にしろ、トライアル&エラーをくり返して成長しているのです。

中学受験をする目的が明確

成績がよい子は、受験をする目的が明確だと感じます。トップ層になると、単に「御三家の○○中に行きたい」ではなく、「○○中に入って、△△をしたい」というように、入ってから何をやりたいかまで明確なことが少なくありません。

トップ層の子のほど明確でないとしても、「校庭が広くて、思いっきり部活ができるから○○中がいい!」「○○中の文化祭が楽しかったから、通いたい!」など、目的意識がある子のほうが、勉強にも身が入りやすいです。ですからお子さんがピンときてないのに、親が一方的に志望校を決め、それを押し付けるようだと、肝心なときに受験勉強を自分ゴト化しづらくなる可能性があります。

とはいえ受験生は小学生ですから、子どもの判断だけで熱望校を決められるとは限りません。親御さんが自然な形で、上手に誘導したほうがよいこともあります。

たとえば、私の母は仕事をしていて忙しい人でしたが、自分が行かせたいと思う学校へ私をよく連れて行きました。家から自転車で行ける距離に武蔵中があり、(今は難しいかもしれませんが……)当時は守衛さんに一声かければ、敷地内を見学できたのです。武蔵中の敷地内には川があるのですが、私はその川が気に入って、そこが入り口となり武蔵中に通いたいと思うようになりました。目指す学校が決まってからは、受験勉強も頑張りました。親の誘導にまんまと乗せられたのかもしれません。しかし、何度か見学して、子どもながらにその学校の魅力を発見できたことは、受験勉強にも確実に好影響を与えたと感じます。

今の親御さんは共働き家庭が多く、多忙です。そのため、子どもの受験を塾任せにしているケースが多いと感じます。仕事の調整がつかず、学校説明会に行かずに受験校に選んでしまったり、塾の先生に言われるがまま志望校を決めてしまったりする家庭も目にします。しかし、私はお子さんに中学受験をさせるのであれば、積極的に親御さんがたくさんの学校を子どもに見せてあげるべきだと思います。中学受験は子どもの自立度の高さが大きく影響しますが、肝になる学校選びは、親御さんにもきちんと関わって欲しいと思います。このように、わが子を頭のいい子にするには、親御さんの関わりがとても重要なのです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。