中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

問題文の誤読、忘れ物……。不注意、ケアレスミスが多い子にどうしたらいい?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年4月07日 石渡真由美

「塾に行くのに忘れ物をしがち……」「問題文をきちんと読めば、解けた問題だったのに不正解」―― こういった子どもの不注意やミスに、頭を抱える親御さんは多いでしょう。ケアレスミスが多い子対して、どのようにアプローチすればよいのでしょうか。

ミスする前提の仕組みづくり

ケアレスミスというと「だたの不注意」といったイメージで、「注意すれば直るハズ」と考える親御さんもいます。しかし、実際はそんなに単純な話ではないことが少なくありません。たとえばケアレスミスが多い子は、生活の中でも注意散漫で、忘れ物をしがちだったりします。ただ、だからといって、その子がほかの子よりも、劣っているというわけではありません。

そもそも人間はミスをしやすい生き物です。だから世の中には、人がミスをすることを前提に、ミスをしても誤動作をしないように設計された製品がいくつもあります。たとえば、キッチンの水道のレバーは上げないと水が出ません。ひと昔前まではレバーを下げるタイプのものもありましたが、ちょっとモノが当たると水が出っぱなしになってしまうというトラブルが起こるため、わざわざ上に上げないと水が出ないようにしたのです。

電子レンジも同じですね。扉を開けたままで加熱できないのは、不注意による誤動作防止のためです。このようにミスすることを前提にした仕組みを作っています。この仕組みにしたがって行動し、それを習慣にすれば、ミスも減るという構図です。こうした身の回りにあるミス防止の機構は、普段の行動や勉強でも応用できます。

たとえば忘れ物をしがちな子の例で、塾に筆箱を忘れてしまう子がよくいます。そういう子の場合は、学校用の筆箱と塾用の筆箱を分けて同じものをふたつ用意します。そして、家で勉強するときは、ペン立てにある鉛筆を使うようにします。筆箱ひとつで学校と塾と家での勉強をやりくりしようとすると、毎回カバンに入れ替えないといけませんが、それぞれ用意してあれば、常にカバンに入れっぱなしにしておいてもよいし、忘れずに済みます。そうやって、ミスすることを見越して仕組みや環境を整えるのも有効な手段です。

ペナルティーも上手く活用。ポイントは楽しくやること

実は、中学入試の問題には子どもたちのケアレスミスを減らす工夫がされています。問題文を見ると、よく「間違っているものを選びなさい」「正しいものを答えなさい」など、その問題文の要所が太字になっていることがあります。

これは、学校側が受験生のミスを防ぐための配慮といえます。中学受験の合否はわずか数点の差で決まります。だからこそ、ケアレスミスには気を付けなければいけないのですが、学校側もミスの有無で合否を判断したいわけではありません。やはり、子ども達の真の実力を見たいというのが本心です。ですから、できるだけケアレスミスが起こらないように、わざわざ太字にしてくれているのです。

しかし、それでもケアレスミスをする子はいます。そういう子は問題をきちんと読んでいないことが多いです。たとえば「間違っているものを選びなさい」と書いてあるのに、正しいものを選んでしまう、といったようにです。

そうした場合、その子の理解が足りないのではなく、「焦ってよく読まなかった」とか、「なんとなく、これまでの感覚で正しいものを選んでしまった」などといった理由が大半です。落ち着いて問題文を読んで解くことのメリットを説くのが正攻法ではありますが、それでもなかなか変わらない場合が、親御さんが困惑するケースでしょう。

私は、正攻法でお子さんに度々言っても変わらない場合、ペナルティーを与えても構わないと思います。たとえばですが、「次から、問題文をきちんと読まずに間違えた場合は、ペナルティーとしてお小遣いから○円没収ねー」というルールにするのも、少額であればアリだと思います。「勉強にお金を持ち出すなんて……」と批判的に受け止める親御さんもいるかと思いますが、押してダメなら引く方法もときには必要です。

お子さんも「親にお小遣いを没収されてはたまらないぞ……」と、むしろやる気を出して、次は問題に意識を向けることがあります。少々手荒なやり方であるのはたしかですが、正攻法で変わらない場合、その効果は侮れないのです。もちろん、お小遣いを少額没収というのはひとつの例です。お子さんが「うーん、それはちょっと嫌だな、困る……」というペナルティーを設定すればよいでしょう。

ただしペナルティーを用いた行動改善は、用法・用量にくれぐれも注意です。実際にペナルティーを与えるときには、「あ、この問題、問題文をちゃんと読まなかったでしょー? ペナルティーの対象じゃないかなー?」といった感じで、楽しみながらやることをおすすめします。表情や声のトーンにも注意を払いましょう。また、お子さんのミスを改善するために、何から何までペナルティー偏重になるのは、避けるべきです。基本的には正攻法でお子さんに向き合いつつ、要所要所でペナルティーを用いることをおすすめします。

計算は大きな紙に書く。似たような公式は工夫して覚える

計算ミスの場合は、勉強のやり方を見直す必要があります。計算ミスの代表的なものは、公式の誤用などのうっかりミス、書き間違え、読み間違えです。これらが起こる原因としては、「字が汚い」「途中式を書かない」「余白の使い方が苦手」などが考えられます。いくつかの要素が複合的に絡むこともあります。

いずれの場合も、子ども任せにしていては、いつまでも経っても直りません。「またミスして!」と怒ってばかりで、実際には何も対策をしていない親御さんが少なくないのです。ここはしっかり親御さんが音頭をとって、お子さんと一緒に「何が原因でミスをしてしまうのか」を点検し、正していくことが大事です。

まずは、丁寧に書けているかをチェックしてください。筆算を行う場合は、数字を書く場所がズレていないか、「0」や「6」などの似たような数字がきちんと書けているかなどを見てあげましょう。

また問題集の回答欄はスペースが狭く、小さく数字を書かなければいけなかったり、スペースが足りなかったりすることがあります。スペースが小さいと計算がしにくく、字を小さく書かなければなりません。自分で書いた小さな字を読み間違えて、間違えることがあります。

そこで、おすすめしたいのが、計算専用の大きな紙を用意し、そこで計算する方法です。広いスペースがあったほうが、計算ミスは確実に減ります。ノートを使うのであれば、左ページに問題のコピーを貼って、右ページは計算に使うとよいでしょう。

また、中学受験の算数では、さまざまな公式を学びますが、似たような公式もあって、子ども達が混同してしまうことがあります。「授業ではちゃんと覚えたのに、テストではうっかり似たような別の公式を使ってしまった……」といったミスはしばしば見られます。

たとえば円の面積を求める公式は、「半径×半径×3.14」ですが、円のまわりの長さを求める公式は「半径×2×3.14」です。

公式は、なぜその公式を使って解くのか、原理原則を理解するのが大前提ですが、こうした公式も覚える際にその違いが明確になるように、工夫すると良いでしょう。

前述の円の面積と円周の例でいえば、「半径」という表現が重複していて、似ています。ですので、「円の面積は、半径×半径×3.14! だけど、円の周りの長さは、直径×3.14! 直径は半径の2倍」などとして、復唱したり、書いて覚えれば、公式を取り違えることも少なくなっていくでしょう。

習慣や意識を変えて、覚え方を工夫すれば、ミスする頻度は減らせます。親御さんからすると、子どものミスは責めたくなるものですが、叱ったところで簡単に直るものではありません。人間はミスをしやすい生き物で、ミスを完全になくすことは難しいのです。だからこそ、ミスすることを前提とした仕組みを作ったり、ミスを点検して、具体的に行動を見直すことが大切なのです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。