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22年入試理科で時事問題はどう扱われたか。問題を解くために求められる力は?|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年5月06日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

前回は2022年入試の理科の問題について分析・解説しました(記事はこちら)。22年の理科の問題の大きな特徴として、時事問題の増加が挙げられます。時事問題の特徴と学習のポイント、さらに理科の入試問題の変化について小川先生に伺いました。

22年入試ではどのような時事問題が扱われたのか? 出題形式は?

入試の理科における時事問題の取り上げられ方は、おもに3つのタイプがあります。一つ目は、「はやぶさ2が目指した小惑星の名前を答えなさい」(答:リュウグウ)というような、単純に知識を聞くタイプです。

二つ目は、ある単元を掘り下げる大問の導入で、時事問題を扱うタイプです。たとえば、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が、子どもの頃に夢中になった書籍『ローソクの科学』について触れてから、ろうそくの燃焼について、実験結果などを交えて掘り下げていくといったものです。

三つ目は、大問の内容すべてが時事問題というタイプです。22年入試では、渋谷教育学園幕張中や早稲田中といった学校が、新型コロナウイルス感染症を扱いました。東洋英和女学院中は、2021年7月にEUが発表した車に関する規制についてのニュースを導入に、ガソリン自動車、電気自動車、水素自動車について考えさせる問題を出題しました。いずれも時事問題を掘り下げて考える問題です。近年は、身近な事象を題材に理科的思考力を測る問題が増えていますが、その題材の一つとして時事問題を取り上げています。

22年入試(理科)の時事問題で取り上げられたテーマで特徴的なものを3つ挙げると、「新型コロナウイルス感染症」「環境(気象を含む)」「天体現象」です。

環境については、「SDGsや脱炭素」「梅雨の豪雨や台風など気象に関するニュース」が目立ちます。天体現象は、皆既月食や惑星探査など、ここ数年間にニュースになったことが取り上げられることが多いです。これらのなかでも、「SDGsや脱炭素」は世界的な動きであり、今後、取り組みがますます加速していくことから、入試問題でも扱われると考えられます。

入試対策として、6年生の秋頃に時事問題集を使って学習する受験生も多いでしょう。もちろん知識を蓄えるに越したことはありませんが、入試問題では細かな知識をひとつひとつ聞かれることは多くありません。むしろ時事問題を題材に、これまでに学習してきた内容とリンクさせて考えて答えるような思考を働かせるのが大事です。

たとえば梅雨どきの豪雨でニュースになる「線状降水帯」という気象用語があります。問題集で大雨が降った地域を単純に覚えるだけでなく、梅雨どきに豪雨が増える理由を考えたり、線状降水帯ができる仕組みを学んだり、自分が住む地域で豪雨災害が起こったらどう対応すべきか考えたりすることが必要です。そのためのきっかけとして、ニュースになったときには、ぜひ家庭でお子さんと話をしてみてください。天体現象に関しては、実際に見ることができるものについて、そのときに見ておくほうが、より記憶に残りやすくなります。

入試はいま過渡期。問題を解くために求められる力とは

中学入試の理科の問題は、いま過渡期にあります。ひと昔前は、法則や用語などを覚えて解く問題が主体でしたが、先ほど述べたように、身近な事象を題材に理科的思考をはたらかせて解く問題が目立っています。

これには大学入試の変化も影響しています。大学入試も解法をパターン的に覚えて、それに当てはめて解くタイプの問題から、文章・グラフ・資料を読み取って、内容を整理し考えさせる問題へ変化しています。定理や公式については、その成り立ちへの理解も求められるようになっていると感じます。このような変化は中学入試の理科でも現れています、問題の導入文の文字量が多く、一見すると国語の問題のように見えるものもあります。

こうした入試問題の変化があるため、塾のテストや模試の問題と、入試問題の乖離が出始めています。

入試問題は理科の各分野(物理・化学・生物・地学)の専門の先生方が、およそ一年かけて問題を作成します。一方、塾のテストや模試の問題作成には、そこまで人手や時間をかけられませんから、入試問題と同じようなレベルのものをつくるのは難しくなっているのでしょう。

こうした状況にあるため、塾のテストや模試の成績が良い子でも、入試問題は解けないということが起こり得ます。また塾で学んだことをただ固めただけでは、入試では通用しないケースもあります。ですから入試問題と、塾のテストや模擬試験の段差をどう埋めるかがカギになります。

その方法の一つは、過去問演習を通して実際の入試問題に慣れることです。長文を集中して読めるだけの力をつけ、さらに、文章の間に差し込まれるグラフや図なども含めて、条件を整理する練習が必要です。もう一つは、塾・学校で法則や定理を習ったらそれを暗記するだけでなく、なぜその法則ができたのか、なぜその法則や定理が成り立つのか根本的な部分を考える姿勢を身に付けることです。読解力や論理的思考力は中学受験のときだけ必要なものではなく、中学以降の学びにおいて常に必要となるものです。小学生のうちからこれらの力を身に付けることは、きわめて大事なことだと考えます。


これまでの記事はこちら『なるほどなっとく 中学受験理科

※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。