中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

子供の丸付け・解き直しに、親ができるアシストは? ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2022年12月14日 やまかわ

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首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

受験勉強では避けて通れない、丸付けと解き直し。しかし、なかなか自力でできなかったり、面倒に思ったりする子は少なくありません。お子さんが丸付け、解き直しをできるようになるために、親としてどのようなアシストができるか。田中先生に訊きました。

丸付け・解き直しに対するネガティブな気持ち

―― 受験勉強で丸付けと解き直しは重要なのですが、面倒がったり嫌がったりして、自力でできる子ってそう多くない印象です

丸付けや解き直しを億劫に感じる要因のひとつとして、少なからず学校や家の影響があると思います。おそらく「×(バツ)はよくないこと」という観念が浸透しているのでしょう。バツは罰を連想させますしね。

子供って、比較的小さいころから物事の良し悪しに関するボキャブラリーを身につけていますよね。たとえば、「コレはやっていいこと」とか「これはやったらダメ!」といった具合に。私はそうした「良し悪し」と、テストの○×を意図的に分別することが大事だと思います。

「×はよくないことだ」という観念が強まると、単に「×を減らしたい」とか「×なんて見たくない」のように、忌避したくなる。積極的に×と向き合うことが難しくなってしまいます。そうなると丸付けと解き直しも億劫になってしまいますよね。ですからまず、○×の「×」をどう考えて、どう扱うかが肝心だと思います。

そもそも、私たちはテストで不正解のときに付けられるマークを「バツ」と言いますが、実際には「✓」チェックマークですよね。チェックマークというのは、「ここは確認しておいた方がいいよ」というマークです。チェックマークと向き合って、なぜ間違えてしまったのかを分析し直してみることが大事なのですから、まずは親御さんが「×は(悪いことではなく)ギフトなんだ」ということを子供に教えてあげて欲しいと思います。

×はギフト。恐れる必要はない

―― ギフトですか

大人がよく使うのは、「×は伸びしろだ」という言い回しなんですけれど、子供たちのなかには「伸びしろ」という言葉に、いまいちピンとこない子もいます。クリスマスにギフト(贈り物)をもらったら子は、うれしいですよね。それと似た感覚で「×」を扱うんです。なんなら「×」があったときには親子で「おぉ」と喜んでもいいくらいです。

シンプルな10問の小テストがあったとして、○が4つで×が6つだったとしましょうか。そんなときは、親御さんから「お、克服できる問題が6つもあるってことじゃん。一緒に考えてみようよ」などと声掛けすればいいんです。

―― テストの×を悪いものと捉えないことが大事なんですね。ただ、親の目が届かないところで、否応なく「×はよくないこと」と思ってしまうことってありませんか?

たしかに学校や塾など周囲の影響から、答案の〇×を「良し悪し」と結びつけてしまうことはありますよね。

ただ、「ほかの人は『×はダメだ』と言うかもしれないけど、実はそうじゃなくて×は可能性なんだよ」とか、「まだできていないってことは可能性で、それを開拓していけばいいから×を恐れることは全然ないよ」とか。そういう言葉を小学生低学年のときから、積極的に与えてあげていいと思うんです。それで、お子さんがプラスの関心を持ってテストの×をチェックするようになったら、たいしたものですよね。

明確な事実は「×は罰ではなく、減点でもない」ということです。「まだ点数に結びつかない」ということだと認識し直し、次回の得点の契機、あるいは目安にすればよいのです。

丸付けの注意点

―― 丸付けと解き直しで自己点検できる子の方が伸びやすいですか?

ふたつの行いのメリットって「ここまでは自分の考えって合っていたんだな。ここから間違えたんだな」というように、思考や作業の流れを点検できることですよね。学業に限らず、そういったことを自分でできる子のほうが、伸びやすいでしょう。でも、小学生でそうした自己点検をこなすのはハードなことです。

―― お子さんが自分で丸付けをする、自分でやってみようということになった場合、親御さんが注意すべきことは?

前提の繰り返しですが、親御さんはお子さんに「×は悪いことではないんだ」ということを、“口酸っぱく”伝えて欲しいです。×というのはすごく大事な学びのチャンスということを伝えながら、練習して欲しいですね。それと、丸付けも解き直しも、いきなり子供の自力でできるわけではありません。上手になっていくのを親がアシストしていく時期が必要です。何カ月かは、親も一緒に時間をかけてやっていくというのはアリでしょう。焦らないことですね。

―― なかなか上手く行かず、丸付けだけは親御さんがやるという家庭もよく聞きます

「子供が自分でできなければダメだ」といった、カチコチの考えにとらわれないほうがいいですね。お子さんが自分でやるのと、親がアシストするのとのハイブリッドでいいと思います。

解き直しの注意点

―― 丸付けで×が多かった場合、解き直しではどのような配慮が必要でしょうか?

解き直しをしているけれど、「いつまで経ってもできない」「手も足も出ない」といった想いはモチベーションの低下を招く大きな要因です。「いったいどれだけ時間かかるんだ……」という想いで、長時間わからない問題とにらめっこするのは、気力も萎えてしまいます。

全問自力で正解にたどり着けることがテストの趣旨ではありません。「今の自分の〇〇の能力を測定する」というのが趣旨です。完璧志向になることで、かえって意欲が削がれてしまっては逆効果です。

ではどうしたらよいかというと、「時間を構造化して管理する」のが、完璧志向の肥大を防ぐコツのひとつです。あらかじめ「解き直しにかける時間はこれくらい」と目安を決めていいと思います。また、一度決めた目安の時間に縛られるのではなく、親子で定期的に見直すのがよいでしょう。

そのうえで、難しければその問題はいったん棚上げにしたり、別の問題に取り組んだりする。場合によっては諦めることも肝心です。

ただし、注意点があります。目の前の難問を棚上げにするか諦めるか、あるいはもう少し粘ってみるか……それはお子さんの目や表情をよく観察してから判断しましょう。完全な手詰まり状態なのか、あるいは「あとちょっとで解けるかも……」という手応えを感じているのか。もし、後者であるならばもう少し時間を取りましょう。

目や表情から読み取れないときは、「この問題を解き直してから○分経っているけど、手応えはどうかな?」と訊ねてみるのもいいですね。親御さんが眉間にシワを寄せて言うのではなく、表情も言動も「爽やかに」ですよ。

―― どの問題を、どの程度解き直すかというのも悩みのタネです

大切なのは解き直しが終わったあとに、子供が爽快感を持てるかどうかです。そのためには、前述したように完璧を求めすぎないことが肝心です。一度にすべてのことを解決しようとすると消化不良を招きますし、時間がかかってマンネリ化にもつながります。

問題選択の目安については、キーワードをお伝えしておきましょう。「CSPゾーン」と言います。次の図を見てください。

まず、中心にある(Comfortable)ゾーンは「楽ちんゾーン」とも呼べ、頑張らなくてもできるゾーンです。Cゾーンでもケアレスミスをしたりすると×をもらうことがあります。

つぎは黄色の(Stretch)ゾーン。これは「背伸びゾーン」です。頑張れば、あるいはちょっと質問したり、時間を掛けたりすればできる領域です。

そして円の外側の赤い部分、(panic)ゾーンは「お手上げゾーン」と呼びます。

Pゾーンの問題は、今の学力との差が大きく、背伸びをしたくらいでは届きません。その「差」の中に何があるかを診断し、順序立てて学習を積み重ねる必要があります。この領域への挑戦には、専門家のアシストがあった方が良く、子供が孤軍奮闘しても無力感を感じてしまうかもしれません。

そして、Pゾーンを減らしてCゾーン、Sゾーンを広げていくためには、解き直しで正解に辿り着いたか否か、要するに○にできたかということよりも、その過程でどんな発見・気づきがあったのか、自分にどんな知識が抜けていたのかを意識したいところです。それらを洗い出せれば、その解き直しは実りのあるものだったということになります。そこから少しずつ学んでいけばいいのです。

また、間違えた問題の量が多い場合は、満遍なく解き直すのではなく、そのなかから基本問題をいくつか選んで解くのも工夫のひとつです。もちろん、特定科目に対して得意意識を持っているお子さんであれば、応用レベルの問題の解き直しに挑戦してみてもいいでしょう。

苦手科目の解き直し

―― 苦手科目の解き直しは悩みの種です

お子さんがやってみて、手も足も出ない(Pゾーン)とすれば苦味しかないですよね。テストの模範解答はこうなっているけれど、それを読んでも“ちんぷんかんぷん”だとしたら、学びの道筋をつけるサンプルは大人が提供していいと思います。親御さんも一緒になって考えてあげていい。

たとえば「この問題は、テキストのここの部分を読み返して再挑戦してみるのはどう?」とか、「一度参考書の基本問題を解いたうえで、テスト問題の解き直しにもう1回戻ってきたらどうだろう?」とかです。とにかく子供にとっては、手も足も出ない状態で放ったらかしにされたら苦いだけですから。

―― 「もう少し易しいこの問題から、やってみようよ」と声掛けするとかですか?

そうです。そうこうするうちにある領域であれば、「何とか自分でも対応できそうだな」(PゾーンのSゾーン化)って思えてきたりして、苦手意識が少しずつ軽減されてくる。苦手意識が濃厚なうちは、見ただけで「嫌だ!」となるかもしれないけれども、それが薄まってくれば挑戦しようという意欲も多少湧いてくると思うんです。

―― 子供も親も特定科目が苦手で……という場合は、辛いです

何から何まで親が子供に付き添って、「自分の力でできるようさせなければならない」というふうに思わなくてもいいんです。たとえば、「もう1回自分で問題を読んでみて、やってみてわからなかったら、質問においでよ」とか、「お父さん、お母さんにはわからないなぁ……、明日先生に質問して、わかったら教えてくれると嬉しいな」と言うのだっていいですよね。

それと、机上で模範解答とにらめっこするだけじゃなくて、親子一緒に調べて話し合うのもおすすめです。スマホやネットを活用して調べてみるのだっていいでしょうし、目の前の問題を解き直すことに拘泥しなくていいと思います。

それと、何かを学ぶというもっと広い観点で考えた場合、これは以前のコラムでもお伝えしましたが、本物を見ることが私のおすすめです。「週末に博物館に行って一緒に調べてみようよ」なんていうのもありですよね。

―― テキストを読み直してわからなかった場合、映像や実物を確認したりするのはよさそうですね。ただ、やはり手を動かすことは必要ですよね?

情報のインプットということで言うと、まずは目ですよね。それから人によっては、声に出して読んでみるとか耳を使うことがある。手を動かしているときというのは、脳が刺激を受けているわけです。その刺激を受けているということと、情報の入力とが重なって、定着を促進するということはあると思います。

―― 解き直しをするときに自分宛てにノートに何かメッセージを残したりするのはどうでしょう?

自分が気づいたことや発見したことを、ちょっとメモしておくというのはすごくいいと思いますね。

学びを促進するのはポジティブな感情

―― 最後に本日のテーマで、保護者の皆さまへメッセージをお願いします

テストには○×がありますが、その×の解釈は自分で決められます。×はネガティブなものと捉えられがちですが、私は「ギフト」というくらい楽天的にとらえることをご提案します。そのほうが勉強のモチベーションも下がりにくく、成績も伸びていきやすいからです。この連載でも度々お伝えしていますが、学びを促進するのは基本的に「うれしい」とか、「楽しい」というポジティブな感情ですから。

また、解き直しで「完璧な答えを出せるようになりました」とか、「×だったのを全部〇にできました」という状態にするのが目標ではない、ということもお伝えします。それよりも、この次に違うタイプの問題がテストで出たとして、そのときに使えるかもしれない基本事項を押さえたり、問題に取り組む態度に磨きをかけたりするほうが大事です。丸付けと解き直しのその途中で、その子に何が起きているか、何を学んだかということが大事ではないでしょうか。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

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田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。