中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

成績が安定しないときはどうすればいい? │ 中学受験塾のトリセツ#16

2023年7月11日 天海ハルカ

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成績の上下が大きく安定しない……。

せっかく好成績をとっても、次のテストで大きく下がってしまうことが続くと素直によろこべませんよね。

毎回好成績をとは言わないけれど、せめて上下幅は少なくして、安定した成績をとってほしいというのが親の心情ですよね。

塾講師としては、成績が安定しない子には基礎が固まっていない子が多いという印象を抱いています。

ほかには、精神的な不安定さが成績に繋がっているケースも。

今回は成績が安定しない子の原因と改善策についてお話しします。

基礎力が不足しているケース

偏差値の上がり下がりが激しくなかなか安定しない原因のひとつに、基礎が身についていないことが考えられます。

たとえば、過去3~5回分の模試結果を比較して見て、「35→55→40→55→45」などと大幅な上下変動があるなら、基礎的な勉強を見直すと良いかもしれません。

確実にとれる基礎問題を落とさないことで成績は安定する

国語が安定しない場合、そもそも基礎にあたる漢字や語彙の問題を、安定して解けるようになっていない可能性があります。

漢字や語彙のような知識問題は、勉強した内容がそのまま主題されるため、着実に点をとりやすいのです。

「勉強したから点がとれた」という実感は、子どもにとって勉強を続ける大きなモチベーションにもなります。

漢字や語彙の知識があいまいな状態で、確実にとれる基礎問題すら落としてしまうのはもったいないですよね。

さらには、応用にあたる読解問題でも、そもそも問題文をきっちり理解することができず、読解力の有無に関係ないところで、得点が難しくなってしまいます。

基礎力は応用問題を解くためにも必要です。

成績が安定しないうちは、応用問題にあてている時間を半分ほど基礎問題にまわし、底上げを図ると良いでしょう。

6年生の夏までは徹底的に基礎力を磨いて

基礎力があれば、わからない問題を手持ちの知識から推測して解くことができます。

いわゆる応用力というやつですね。

この積み重ねは、学年が上がるにつれて大きく成績に影響します。

過去問を始める6年生の夏以降は非常に忙しくなるため、成績が安定しないのであれば、「6年生の夏までは徹底的に基礎力を磨いてほしい」というのが塾講師としての意見です。

具体的には、手持ちの問題集の基礎編を繰り返す、漢字や計算を毎日少しずつやっていくなどです。

漢字や計算などを飛ばして難しい応用問題に取り組むのは、成績が低いほどハイリスクローリターン。

基礎という土台ができていなければ、大変な思いをして応用問題を理解したとしても、テストで類似問題を解くことはできないでしょう。

成績が安定しないうちの復習では、ある程度応用問題を捨てでも、基礎固めをしっかりすべきだと思います。

単元ごとに得意不得意があるケース

科目内の単元ごとに得意不得意のばらつきがあると、成績は安定しにくくなります。

たとえば理科だと、「生物は好きで点数が取れるが地学は興味がないため成績も低い」などです。

これでは理科のテスト範囲が生物中心の回は結果がよく、地学中心の回は結果が悪いという形で、成績が大きく上下してしまいますよね。

算数や社会でも単元ごとの得手不得手は顕著になりやすく、国語でも読解文のテーマとの相性で成績は変わります。

国語の講師としては、「説明文がとことん苦手」「昔の話は全然わからない」といった話をよく聞きました。

苦手が組み合わさった回と得意が組み合わさった回では、成績が大きく変わってしまいます。

塾のカリキュラムによっては同じ単元が時期を空けて再登場することもありますが、多くの場合、学ぶ内容が増えてしまいます。

初回は基礎で次回は応用、という感じですね。

算数の平面図形でいうと、「初回は三角形や円といった単純な図形の面積を求め、次に出てくるときは円を含めた複数の図形が組み合わさった面積を求める」などです。

夏期講習などで、復習やまとめの授業がある場合はしっかり参加して学び直したいところです。

また、今の内容の前段階を過去に勉強していたということであれば、そのときのテキストを引っぱりだして復習するのも効果的。

苦手な単元が克服できると、その科目自体の苦手意識が薄れることもあります。

苦手な単元は重点的に復習し、全体を底上げしましょう。

集中力のなさが成績の不安定に繋がるケース

集中力がない子は、その日の気分でテストに向かいます。

気分が乗らずに途中で答案から目を離したり、ペンやテスト用紙で手遊びをしたりする子は、残念ながら6年生でも見かけます。

最後までしっかり問題に向き合える子と、途中で集中が切れてしまう子では、同じ知識量でも結果は変わってしまいますよね。

こういった子は集中力が続く日なら好成績になるため、勉強内容が悪いわけではなく、集中力のムラをなくして実力を出せるようにすることが必要です。

とはいえ、テスト中の様子はその場にいないとわかりません。

そこで、塾の出番です。

成績だけでなく授業中での様子、テスト中での様子を聞いて、集中力に関する話が出たら警戒しましょう。

家での勉強中に集中できていないようなら、集中力を鍛えるためにタイマーを使ってみてください。

タイマーをかけている間、おしゃべりや立ち歩きは禁止です。

集中力がない子はとにかくすぐに気が散ってしまうので、その時間だけは飲み物やトイレも禁止して、勉強だけに向かう時間を作ります。

タイマーをかけた完全集中の時間は15分程度からでOK。

机で勉強に集中するクセを体に染み込ませれば、テストでもその集中力が生かせることでしょう。

モチベーションに差があるケースも

成績が安定しない原因には、モチベーションが不安定という理由も考えられます。

たとえばご褒美がかかった回だけは成績が良い、などはこのパターン。

成績が上がると油断して勉強の手を緩めてしまい、怒られてまた頑張るとすぐに上がるというようなケースも、広い意味ではモチベーションの問題と言えます。

先生から「君ならできるよ」とテスト前に声をかけられた回だけは好成績になる、という子もいました。

小さなことで勉強やテストへのモチベーションは変わります。

「算数、最近いい感じだね」「テストの後においしいごはんを食べよう」など、ポジティブな言葉は子どもの前向きな気持ちに繋がります。

勉強力を増やさなくてもモチベーション次第で点数が上がるかもしれないのなら、試してみる価値はありますよね。

「底上げ」で安定した成績を

子どもは精神的にも肉体的にもまだまだ不安定です。

そう考えれば、成績が安定しないのもめずらしいことではなく、むしろ足りないことがわかりやすくてありがたいとすら思えます。

大切なのは、「成績がガクンと落ちた回」の分析と対応です。

「勉強が足りないから勉強時間を増やそう」という漠然としたものではなく、「算数の基礎で点数が取れていないから基礎計算を重点的に勉強しよう」など、具体的な対策を考えると、子どもも納得して実践しやすくなると思います。

成績は「全体の引き上げ」より「底上げ」を中心に。

子どもの様子を見ながら、対策をしていきましょう!

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※記事の内容は執筆時点のものです

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