中学受験ノウハウ 連載 データで見る中学受験

【千葉県】2023年度中学入試結果と大学合格実績との関係|データで見る中学受験#2

専門家・プロ
2023年8月31日 佐藤潤平

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新連載「データで見る中学受験」は、中高の教育データ解析・分析のスペシャリスト佐藤潤平さんが、客観的なデータをもとに、なるべく中学受験を客観的に読み解こうとする試みです。

まずは当面、2023年度中学入試の結果と大学合格実績のデータから、中高一貫校の人気に、大学合格実績がどのように関係しているかを考えていきます。

受験者数の増加が続く、首都圏の中学受験戦線。

この流れを受けて、少子化がすすむ中での新設校設立、校名変更や共学化、先進的カリキュラムを導入した新コース設置など大胆な改革を行うケースが相次ぐ一方、募集停止の決断に踏み切る学校もその数を年々増やしており、中高一貫校を取り巻く世界はめまぐるしく変化しています。

スピード感ある中学受験シーンおいて、わが子の学校選びに悩んでしまう保護者の方は多いのではないでしょうか。

そこで本連載では、首都圏の中高一貫校を、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県のエリア別に分析。各校の中学受験者数のデータと、それぞれの大学合格実績のデータを突き合わせ、各学校の「現在地」を数字から考察していきます。

この結果を、お子さんの学校選びのひとつの指標として役立てていただければ幸いです。

連載第1回の埼玉県に続き、今回は千葉県の学校を取り上げていきましょう。

【2023/9/20追記】記事内で分析に使用している「2023年度首都圏中学入試結果と大学合格実績との関係_入試結果・大学合格実績」のエクセルデータを、中学受験ナビ会員特典として、「マイページ」からダウンロードいただけるようになりました。

気になる方は、ぜひ会員登録(無料)の上でご利用ください。記事の末尾でもくわしくご案内しています。

千葉県の2023年度 中学入試状況(1/10~12)

2023年度の千葉県中学入試は346名の増加になりました。

新型コロナウイルスの不安が残る2021年度入試では、2/1入試を本命校とする受験生の感染リスク回避と考えられる行動が観測されていました。2023年度入試では男子を中心にこれらの受験生が戻ってきたといえます。

共学校の学力上位校では、受験者・実倍率共に増加しています。

難易度帯A・Bに絞ると、受験者数(1/20・21・22合算)は7,866名→7,962名→9,020名(2021年度→2022年度→2023年度)と、増減率101.2%・113.3%でした。

一方、合格者数は2,914名→2,902名→3,098名と増減率99.6%・106.8%であったことから、受験者数の増加数に対し2023年度は合格者数を絞ったことが分かります(※参考 実倍率2.70→2.74→2.91)。

この学力帯に属する学校の判断は、「2023年度入試では、第一志望者が増加しているなどの理由で合格者の入学率が高まる」と予想したと考えられます。

なお、2023年4月には流通経済大学付属柏中学校が新規開校し、209名の受験生を集めました(1/22男女計・実倍率1.71)。東京方面からはつくばエクスプレスと常磐線沿線、埼玉方面からは東武野田線沿線の受験生への訴求が成功したといえます。

▼共学校

▼女子校

※各グラフのA~Hは、中学受験の難易度帯を示しています。
 Aが最も難易度が高く、Hが最も低いです。2023年度四谷大塚80%偏差値に基づく難易度帯
 ⇒A:65以上、B:64~60、C:59~55、D:54~50、E:49~45、F:44~40、G・H:39~

※各グラフの棒グラフは受験者数(左軸)、折れ線グラフは受験倍率(右軸)を示しています。

進学校の大学合格実績の推移と平均との比較を見る

進学校と呼ばれる学校は、有名難関大学に卒業生を送り出す学校でもあります。大学進学実績の高さが受験生の支持を集める一方で、進学実績以外の要素が中高一貫校としての人気に影響していると思われるケースも存在します。

例えば、先進的な教育内容を採り入れている、生徒一人ひとりに目を配る面倒見の良さがある、といった理由などで、大学進学実績がそれほど高くないのに、中学受験で人気が高く、偏差値が高くなる、というケースです。

ここでは進学校の2020年度・2021年度・2022年度の大学合格実績を、大学群ごとにレーダーチャートに落し込みました。比較のため、首都圏全校の平均、中学受験の難易度をA~Hに分けた場合に属する難易度帯の学校の平均もわかるようにしています。

志望校選びの一助となれば幸いです。

このレーダーチャートから以下の3つのことが確認できます。

  1. 各大学群の合格バランスを確認できる:どの大学群に多く合格者を出しているか
  2. 経年変化を確認できる:2020年度・2021年度・2022年度でバランスがどのように変化しているか
  3. 平均との差を確認できる:「1都3県全ての学校を対象とした平均合格割合」と「各校の難易度と同じ難易度帯の平均合格割合」との比較(2022年度)

この2022年度の大学合格実績を踏まえて、2023年度中学受験における主要3日間の受験者数の増減を合わせて見てみたいと思います。

【レーダーチャートの読み方の例】

※実線:■2022 ■2021 ■2020
 点線:全ての学校を対象とした平均合格割合
 グレーの網掛け:各校の難易度と同じ難易度帯の平均合格割合

神奈川男子御三家の一角を占める、聖光学院を例にあげて説明しましょう。

2020年から2022年にかけて「東京大・京都大」と「旧5帝大(大阪大・名古屋大・北海道大・東北大・九州大)・一橋・東京工業大・筑波大」への合格割合が伸びる一方、「国公立医学部」は減少傾向にあることが分かります。また、「1都3県に本校がある大学」に合格する生徒が50%を超えています。

聖光学院の入学時偏差値は65以上で、学力難易度帯「A」の学校群に当たりますが、高校卒業後に国公立大学へ進学する生徒は、学力難易度帯「A」の学校群の平均を、全項目で上回っています。私立大では、ほとんどの生徒が早稲田大・慶應義塾大・上智大・東京理科大・国際基督教大に合格していきます。

① 大学合格実績の受験者増への貢献度が高いと考えられる学校

ではいよいよ、各校のレーダーチャートを見ていきましょう。

すべての学校というわけではありませんが、行われている教育の特徴や、合格実績の推移に影響を及ぼした可能性のある要因の考察なども、できる限り解説しています。

まずは、中学受験者数が増えていて、かつ、大学合格実績が顕著に伸びている学校からご紹介します。

【学力難易度…A:偏差値65以上、B:偏差値64~60】

● 渋谷教育学園幕張

東京大・京都大への合格割合が毎年20%を超え、国公立大に60%前後が合格する全国屈指の進学校です。選択肢の一つとして海外大学への進学を提案しており、開校間もない頃から国際部を設置しサポートしています。

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佐藤潤平

佐藤潤平

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(株)Levier(ルヴィエ) 
カルチャースクール紹介誌、大手新聞、ラジオ番組、進学情報誌等の企画・編集・制作を経て、中高の教育データの解析・分析、思考力・判断力等の評価方法の開発などを手がけている。また学校・塾のコンサルティング、受験に関する種々のリサーチやソフトウェアの制作などを行う森上教育研究所 高校進路研究会を主宰している。