【東京都-①】2023年度中学入試結果と大学合格実績との関係|データで見る中学受験 #3
新連載「データで見る中学受験」は、中高の教育データ解析・分析のスペシャリスト佐藤潤平さんが、データをもとに、なるべく中学受験を客観的に読み解こうとする試みです。
まずは当面、2023年度中学入試の結果と大学合格実績のデータから、中高一貫校の人気に、大学合格実績がどのように関係しているかを考えていきます。
受験者数の増加が続く、首都圏の中学受験戦線。
この流れを受けて、少子化がすすむ中での新設校設立、校名変更や共学化、先進的カリキュラムを導入した新コース設置など大胆な改革を行うケースが相次ぐ一方、募集停止の決断に踏み切る学校もその数を年々増やしており、中高一貫校を取り巻く世界はめまぐるしく変化しています。
スピード感ある中学受験シーンおいて、わが子の学校選びに悩んでしまう保護者の方は多いのではないでしょうか。
そこで本連載では、首都圏の中高一貫校を、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県のエリア別に分析。各校の中学受験者数のデータと、それぞれの大学合格実績のデータを突き合わせ、各学校の「現在地」を数字から考察しました。
この結果を、お子さんの学校選びのひとつの指標として役立てていただければ幸いです。
連載第2回の千葉県に続き、今回は東京都の学校を取り上げていきましょう。
東京都にはご存じのとおり膨大な数の中高一貫校がありますので、一度にまとめることが難しく、3回に分けてお届けします。
また、お待たせしました!
記事内で分析に使用している「2023年度首都圏中学入試結果と大学合格実績との関係_入試結果・大学合格実績」のエクセルデータを、中学受験ナビ会員特典として、「マイページ」からダウンロードいただけるようになりました。
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Contents
東京都の2023年度 中学入試状況(2/1・2・3)
2023年度の東京都中学入試は、主要3日間の合計受験者数は4,030名の増加になりました。
地域別にみていくと、城東エリア+2区(※)が19,157名→20,125名→20,937名と増加。
それ以外の23区は63,006名→65,981名→69,722名と大幅に増加するなか、三多摩エリアは16,863名→16,797名→16,509名減少傾向にあります。三多摩エリアではその中でも、一般的に第一志望校を受験する人が多い2/1午前入試が減少し、2/1午後、2/3午後は増加傾向にあります。このことから都心の学校を第一志望とし、地元の学校を併願する傾向がありそうです。三多摩エリアの附属校人気が落ち着いてきていることもその理由の1つでしょう。
難易度帯別にみると、共学校ではC・D(17,068名→18,839名→19,006名)、E・F(14,634名→13,589名→17,617名)の中堅~中堅上位層が分厚く。女子校はC・D(6,841名→8,906名→9,527名)の中堅上位層が厚く。男子校は、A・B(8,365名→8,596名→9,766名)の上位層とE・F(3,422名→3,351名→4,148名)中堅層が厚くなっています。
新型コロナウイルスの流行以降、この中堅層の伸びは顕著になっており、2024年度入試でもこの傾向は続きそうです。
※城東エリア+2区:足立、葛飾、荒川、台東、墨田、江東、江戸川・北・板橋・足立区
▼共学校
▼女子校
▼男子校
※各グラフのA~Hは、中学受験の難易度帯を示しています。
Aが最も難易度が高く、Hが最も低いです。2023年度四谷大塚80%偏差値に基づく難易度帯
⇒A:65以上、B:64~60、C:59~55、D:54~50、E:49~45、F:44~40、G・H:39~
※各グラフの棒グラフは受験者数(左軸)、折れ線グラフは受験倍率(右軸)を示しています。
進学校の大学合格実績の推移と平均との比較を見る
進学校と呼ばれる学校は、有名難関大学に卒業生を送り出す学校でもあります。大学進学実績の高さが受験生の支持を集める一方で、進学実績以外の要素が中高一貫校としての人気に影響していると思われるケースも存在します。
例えば、先進的な教育内容を採り入れている、生徒一人ひとりに目を配る面倒見の良さがある、といった理由などで、大学進学実績がそれほど高くないのに、中学受験で人気が高く、偏差値が高くなる、というケースです。
ここでは進学校の2020年度・2021年度・2022年度の大学合格実績を、大学群ごとにレーダーチャートに落し込みました。比較のため、首都圏全校の平均、中学受験の難易度をA~Hに分けた場合に属する難易度帯の学校の平均もわかるようにしています。志望校選びの一助となれば幸いです。
この連載をずっと読んでくださっているみなさんには繰り返しになりますが、もう一度ご説明しましょう。
このレーダーチャートから以下の3つのことが確認できます。
- 各大学群の合格バランスを確認できる:どの大学群に多く合格者を出しているか
- 経年変化を確認できる:2020年度・2021年度・2022年度でバランスがどのように変化しているか
- 平均との差を確認できる:「1都3県全ての学校を対象とした平均合格割合」と「各校の難易度と同じ難易度帯の平均合格割合」との比較(2022年度)
【レーダーチャートの読み方の例】
※実線:■2022 ■2021 ■2020
点線:全ての学校を対象とした平均合格割合
グレーの網掛け:各校の難易度と同じ難易度帯の平均合格割合
神奈川男子御三家の一角を占める、聖光学院を例にあげて説明しましょう。
2020年から2022年にかけて「東京大・京都大」と「旧5帝大(大阪大・名古屋大・北海道大・東北大・九州大)・一橋・東京工業大・筑波大」への合格割合が伸びる一方、「国公立医学部」は減少傾向にあることが分かります。また、「1都3県に本校がある大学」に合格する生徒が50%を超えています。
聖光学院の入学時偏差値は65以上で、学力難易度帯「A」の学校群に当たりますが、高校卒業後に国公立大学へ進学する生徒は、学力難易度帯「A」の学校群の平均を、全項目で上回っています。私立大では、ほとんどの生徒が早稲田大・慶應義塾大・上智大・東京理科大・国際基督教大に合格していきます。
① 大学合格実績の受験者増への貢献度が高いと考えられる学校
ではいよいよ、各校のレーダーチャートを見ていきましょう。
すべての学校というわけではありませんが、行われている教育の特徴や、合格実績の推移に影響を及ぼした可能性のある要因の考察なども、できる限り解説しています。
まずは、中学受験者数が増えていて、かつ、大学合格実績が顕著に伸びている学校からご紹介します。
【学力難易度…A:偏差値65以上、B:偏差値64~60】
● 筑波大附駒場
東京大・京都大をはじめ、国公立大チャートのほとんどの項目で振りきれています。年によって若干の受験者増減はありますが、学力最上位生が集まるため多少の実倍率の変化は入りやすさに関係しません。
とじる
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