中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

[読者質問に回答]子どもを勉強嫌いにさせたくない……中学受験塾はどう使えばいい?│ 中学受験塾のトリセツ

2024年2月20日 天海ハルカ

0

6年生に進級し、いよいよ中学受験本番。

エンジン全開でしっかり勉強してほしいと思う一方で、あまりに頑張りすぎて勉強嫌いになってしまったらどうしよう……という悩みも生まれます。

中学受験塾の雰囲気に飲まれて早々に燃え尽きてしまうことは避けたいもの。

今回は「中学受験塾のトリセツ」へ届いた「子どもを勉強嫌いにさせたくない」というご相談に、塾講師の立場からお答えします!

中学受験塾に通わせていると子どもが勉強嫌いになりそうで……

■ニックネーム

ゴウ

■お子さまの学年

新小6

■質問内容

受験塾に通い、勉強を長時間させることで、後々、子どもが勉強嫌いにならないかと心配です。

志望校の偏差値レベルはそんなに高くはなく、本人の持ち偏差値とほぼ同等ぐらいです。でも、受験のための塾となるとどうしてもゆるくはないので……。

本人は、学校見学に行くと「入りたい、頑張る」と言います。だからといって張り切って勉強するというわけでもないのですが、言葉と行動が一致しないところは幼いからでしょうか?

勉強との向き合い方としては、夏休みぐらいからモチベーションをゆっくりあげていく方が良いのでしょうか?

ゴウさん、はじめまして。

お子さんはこの春、6年生になるとのこと。受験ムードが高まり、これまで以上に授業時間が増える中学受験塾で、勉強が嫌いになってしまわないかと心配されているのですね。

たしかに6年生は受験学年ですから、どんな塾でも「勉強中心の生活を」という雰囲気を高めてきます。

お子さんが勉強嫌いにならないか心配されるのはもっともですし、勉強嫌いにさせたくないという意識はとても重要だと思います。

入試までの1年は短いようで長いもの。最後まで全力で走りきるためには、中学受験塾のカリキュラムや雰囲気をうまく使えると良いですよね。

そこで塾講師の立場から、「子どもを勉強嫌いにさせない中学受験塾の使い方」の工夫をいくつかご提案します

志望校のレベルになっているのはアドバンテージ

まず、お子さん自身の偏差値と志望校が近いのであれば、現状の勉強がうまくいっているということです。

このまま自分のペースを保って勉強を続ければ良いかと思います。

塾講師の率直な実感としては、この時期、「現状では志望校に対して偏差値が足りない」という受験生のほうが多いんですよね。

さらに子どもにとって受験は身近なものではないこともあり、塾では6年生になると受験ムードを強めます。

足りない偏差値を埋めるべく、適度な危機感と緊張感を与えるという意図なのですが、正直言うとこれも合う子・合わない子がいるとは思います。

そういった雰囲気を楽しめたり気を引き締めたりできれば良いのですが、圧倒されて余計な焦りを生んでしまう子も。

その場合は「あなたは自分のペースでやればいいんだよ」と声掛けしてあげてください。

「みんなと一緒でなくていい」という声掛けはきっとお子さんの力になります。

勉強嫌いにならないためには効率を意識

多くの子どもにとって長時間の勉強は苦痛です。

勉強嫌いにさせないためには、できるだけ勉強時間を短く済ますことが重要です。

短く済ますといっても勉強量が足りなくては困ってしまうので、短時間でしっかりと学習内容を身に付ける効率的な勉強方法を心がけましょう

たとえば理科や社会の問題を繰り返し解くときは、一度解けたものは飛ばして、解けなかったものだけを解いていくなどです。

子どもは効率を考えるのが苦手なのですよね。

素直で頑張り屋さんな子ほど先生の指示を額面通りに受け取って、「ここからここまで全部やるって言われたから」と自分を追い込んでしまいがち。

「やること」の指示はもちろん必要ですが、ぜひ「やらないこと」の指示もしてあげてください。

効率的に進めるためには、塾から出される課題を正確に把握することも大切です。

余計な部分まで手をつけていては、時間がいくらあっても足りません。

課題内容があやふやなまま子どもが帰ってきたら、保護者がしっかり塾に確認し、できれば優先順位も聞けると良いですね。

優先順位が低いものを省けるだけで、時間的にも精神的にもずいぶんと楽になるはずです。

次の過去記事もよかったら読んでみてくださいね。

分散させてストレスを下げる

勉強嫌いにさせないためには、効率だけでなく分散も効果的です。

同じ10ページ解くのでも、一気にやるより2回に分けたほうが気持ちは楽ですよね。

工夫次第で、勉強量を確保しつつ「勉強ばかり!」と思わせないようにできます。

分散できるのは時間だけではありません。

たとえば理科や社会の語句は「覚える→解いて確認→覚え直し」の繰り返しですが、これも分散できます。

覚える作業は寝る前にテキストを読んでこなし、解く作業は夕方じっくり進めるなどですね。

時間をあけることで記憶が定着しやすくなるという副次効果もあります。

とにかく「自分が勉強ばかりさせられている」と思わせないように工夫しましょう。

夏まで受験エンジンを温めていこう

ご相談に「夏休みぐらいからモチベーションをゆっくりあげていく」とあった通り、夏をひとつのポイントとするのは良いですね。

夏から入試までは夏期講習、過去問、入試と一気に進むため、塾ではよく「夏は受験の天王山」と言われます。

夏までは全力疾走の準備期間とし、自分のペースをつかんでいきましょう。

具体的には、6年生のカリキュラムや勉強量に慣れることです。

6年生になると学校や塾の時間も変わります。

塾の終わる時間が1時間変わるだけでも生活リズムを合わせるのは大変なんですよね。

お子さんの様子を見ながら、親子ともに生活リズムを作っていってください。

それでも勉強嫌いの兆候が出たらひと休み

いろいろと工夫しても、勉強嫌いを完全に防ぐのは難しいもの。

6年生になったばかりのときは受験学年という気持ちが強く、入試までの1年が短く思えるかもしれません。

しかし実際に6年生として始めてみると、入試までの1年は長いんですよね。

塾に通う日数も勉強する時間も今までよりずっと長くなっているため、途中で苦しくなることもあると思います。

そのときはひと休みすることも考えてみてください。

勉強から丸一日離れる日を作ったり、夏期講習前にリフレッシュをかねてテーマパークへ行ったり、たった1日でも心持ちは大きく変わります。

毎日の勉強も大切ですが、最終目標は入試当日です。

休みを挟みつつ、本番に照準を合わせて走り抜けましょう。

「勉強しないのに志望校へ行きたい」子どもはとても多い

「学校見学に行くと『入りたい、頑張る』と言います」とのことから、志望校への意識はあるものの勉強はなかなか進められないのかと感じました。

個人的には、小学生は大多数がそんなものだと思っています。

というのも、我が家も同じなんですよね。

我が娘は「絶対に受験する」と言いながら、勉強には文句ばかり。

あまりに腰が重すぎて受験をやめる提案までしたこともありますが、その度に突っぱねられて今に至ります。

塾へ来る子どもたちも同じです。

塾では一生懸命なのに家庭学習はなかなかできないという子は多く、「先生から声をかけてほしい」とお願いされることもあります。

志望校のために入試までずっと頑張り続けられる子は“まれ”です。

なんとか勉強を促し続けるのが親の役目。大変な役回りではありますが、一緒に頑張りましょう!

この連載では匿名での質問を受け付けています。ぜひ、塾について、中学受験についての質問などを、こちらの質問受付フォームからお寄せください。

※記事の内容は執筆時点のものです

0