連載 中学受験は親と子の協同作業

【中学受験】4・5年生の夏休み 夏期講習を受講する上で意識すべきことは?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.3

専門家・プロ
2018年7月12日 石渡真由美

夏休みはまとまった勉強時間が確保できるため、受験生にとっては有意義な期間。でも「夏期講習にさえ通っていれば大丈夫」というわけではありません。では、この夏、何をすればよいのでしょうか? どんなことに気をつければよいのでしょうか? 今回は、4・5年生の理想の夏の過ごし方についてお伝えします。

大手進学塾の夏期講習カリキュラムは予習型の授業が中心

夏休みになると、各大手進学塾では夏期講習が始まります。夏期講習の期間は塾によって多少異なりますが、4年生は10~18日間、5年生はおよそ20日間で設定されています。

夏期講習のカリキュラムは、以前はSAPIX以外の塾では復習が中心で、夏休みの間に苦手科目の補強をすることができました。ところが、4年前に中学受験の主要テキストである四谷大塚の『予習シリーズ』が改訂されてからは、それを使う塾(四谷大塚・早稲田アカデミー・四谷大塚の準拠塾)でも予習型の授業に変わり、新しく学ぶことと弱点補強を同時にやらなければならない状況になっています。それは、子供にとっては大きな負担です。

ただし、「正しいやり方」で勉強を進めていけば、この夏の頑張りが秋以降の成績につながっていきます。しかしそれには、これまでの勉強のやり方を見直し、変えていく必要があります。

【4年生はココを変えよう!】とりあえず覚える勉強から納得して理解する勉強へ

3年生の2月からスタートした受験勉強も半年が経ち、4年生は塾通いにも慣れてきた頃でしょう。一学期のカリキュラムは、小学校の授業で習う勉強よりは難しいけれど、内容に連続性があるため大きくつまずく子はあまりいません。

しかし、夏休み明けの二学期からは、「倍数算」や「相当算」などの特殊算や、平面図形の角度を求める問題など、いよいよ中学受験のための勉強に変わっていきます。夏期講習では、その導入となる内容を学習していくので、特別な理由がない限り受講したほうがよいでしょう。(ただし、日能研だけは復習型の内容です)。

4年生の夏休みの目標は、次の3つです。

[1]「読み」「書き」「計算」の基礎学力を高める
[2]考えて解く習慣を身につける
[3]一学期の復習と二学期の予習

ここで一番大事なのは、[2]の「考えて解く習慣を身につける」。4年生の夏に一番取り組んで欲しいことです。

4年生のこれまでの内容は比較的易しく、例えば算数なら式に当てはめさえすれば、正しい答えを出すことができました。しかし、そのやり方をいつまでも続けていると、4年生のうちは基礎問題が中心なのでなんとかなりますが、5年生になって応用問題が出てくるようになると、太刀打ちできなくなってしまいます。

では、どのように学習を進めていけばよいのでしょう?

それは、これまでの“とりあえず覚える”という勉強から“納得して理解する”勉強へと変えることです。

例えば算数なら、すぐに式に当てはめて解こうとせず、問題を読んで分かっていることをメモや図にしながら考える習慣をつけます。植木算の問題なら、「あ、これは植木算だから一つ増やせばいいんだ」と公式に当てはめるのではなく、「なぜそうなのかを理解するため」に実際に木の絵を描いてみる。そうやって「なるほど、だから1本多いのだな」と自分で納得して理解することが大切なのです。ここでしっかり筋道を追って理解しておけば、5年生になって応用問題が登場しても、つまずくことはありません。

もう一度言います。4年生のうちは内容がそれほど難しくはないので、式に当てはめれば答えは出ます。でも、そこで“スピード”に走らず、“納得のいく理解”をすること。とても大事なことですから、意識して取り組むようにしましょう。

4年生のうちは夏期講習の日程が短く、内容もそれほど難しくはありません。塾で出される宿題は、その日授業で習った内容の理解の定着につながるので、できるだけ全部やるようにしましょう。そして、受験勉強の学習ペースを整えていきましょう。4年生の夏で大事なのは、“とりあえず覚える”という勉強から“納得して理解する”勉強へ変えることと、学習ペースを整えることです。

【5年生はココを変えよう!】“全部やる”から“やるべきことを取捨選択する”学習へ

ところが、5年生になると状況は変わってきます。5年生になると夏期講習の日数が増える上に、授業で習う内容も難しくなってきます。また、宿題の量も4年生の1.5倍と増えます。そうなってくると、手が回らなくなってくる子供が続出します。ここで大事なのが、やるべきことの取捨選択です。

5年生の夏休みの目標は次の3つです。

[1]基礎学力を高める
[2]“理解から納得へ”の学習に変える
[3]一学期の復習と二学期の予習

[1]の基礎学力とは、算数なら小数・分数の計算力、国語なら語彙力と読解力です。小数・分数の計算が苦手な子はいますが、中学受験をするならそこは避けては通れません。入試で出される計算問題は、確実に点を取るためのものですから、計算力を鍛えることは必須です。また、国語の入試は読解力が重要ですが、問題をしっかり読んで解釈する力をつけるには、それ以前に言葉を知っていなければなりません。5年生のうちにできるだけ多くの漢字や熟語を習得しておきましょう。

[2]の“理解から納得へ”は、4年生の夏の学習で伝えていることです。4年生のうちからその“考える習慣”が身についている子なら問題ありませんが、多くの子は身についていないまま、5年生でつまずき始めます。特に4年生のうちは成績が良かった子は要注意です。ここでもう一度「単純理解や機械的暗記だけで終わっていないか、きちんと納得して理解しているか」見直してみる必要があります。

理解」とは、「どうしてこの答えになったの?」と聞かれた時に、きちんと筋道を通して説明ができるかどうか。「この公式を使ったからできたんだよ」では、「理解」ではありません。そしてすぐに忘れてしまいます。

夏期講習で新しいことを習う時は、「なぜそうなのか? なぜその解き方なのか?」を意識しながら聞き、その後に自分で実際に解いてみて「なるほど! そういうことか!」と子供の気持ちが動くことが大切です。感情が伴った「理解」は、すぐに忘れたり記憶が曖昧になったりすることがなく、それが「納得」つまり“本当の理解”になります。

[3]の一学期の復習は[2]の学習を意識しながらやりましょう。二学期の予習は、日能研以外の塾では夏期講習のカリキュラム自体が予習型になっているので、講習の内容をしっかり理解することが大事です。特に二学期から始まる算数の『比』は、多くの子が苦手とする単元です。夏期講習ではその導入となる内容を学習していきますので、ここでしっかり基礎を固めておきましょう。

ただし、塾から出される宿題はすべてやる必要はありません。この時期になると、塾の宿題量は多くの子の限界を超えるほどの多さになります。そのため、ただ終わらせることに力を注いでしまうと、理解の定着がないまま気力と体力を消耗するだけで、ムダな夏を過ごすことになります。

そこで大事なのが「今何を優先してやるべきか」の取捨選択です。具体的な方法としておすすめしているのが、「○△×学習」です。やり方は簡単です。塾の授業で習った問題に、「○=簡単に解けた」「△=だいたい分かったけれど、似たような問題が出た時に解けるかどうかまだ自信がない」「×=先生の説明を聞いてもよくわからなかった」の印をつけます。○はすでに理解できているので、宿題をやる必要はありません。×は理解できない問題なので、今ああだこうだと頭をひねらせても時間のムダ。ここは割り切って「今はやらない」という選択をします。

やるべきことは、△の問題です。夏休みの宿題は膨大です。ですから、この△を○にすることに力を入れ、少しでも得点につなげていけるようにしましょう。5年生の夏休みのポイントは、「すべてをやろうとしない」ことです。このやり方は受験直前期まで続けてください。特に6年生は必須です。

5年生のうちは子供によってはなんとか全部やり切れてしまう子もいます。でも、そのやり方が6年生では通用しません。ですから、5年生の夏を境に学習の進め方を変えていくことをおすすめします。

中学受験の目的は志望校に合格することで、塾の宿題を終わらせることではありません。中学受験において塾は不可欠ですが、塾の言われるままに勉強をしてつぶれてしまう子が多いことを知っておいて欲しいと思います。

夏休みは秋以降の勉強にスムーズ移行するための重要期間

4年生の夏休みは、“とりあえず覚える”勉強から“納得して理解する”勉強へと変えていく。5年生の夏休みは、“すべてをこなす”のではなく“取捨選択”して学習をする。このように、4・5年生の夏休みは、これまでの勉強のやり方を変えることがポイントとなります。

夏休みはまとまった勉強時間が確保できるから、親は子供についたくさん勉強をさせてしまいがちです。しかし、理解のないままただ闇雲に勉強をさせても、効果は出ません。むしろ、子供の気力と体力をいたずらに消耗させるだけです。夏休みは、秋以降の勉強をスムーズに移行するための大切な期間。「正しいやり方」で学習を進めていくことが、秋以降の成績アップへとつながっていきます。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。