連載 ホメ夫先生のやる気引き出し術

小4男子が天体の問題で珍回答。模範解答とぜんぜん違うけど実は正解?|全力珍回答! ホメ夫先生のやる気引き出し術(5)

専門家・プロ
2015年9月30日 辻義夫

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こんにちは。辻・E・ホメ夫です。今回も、受験生たちのすばらしい珍回答を紹介し、思い切りホメちぎりたいと思います。

さて、今回は、まだまだ子どもっぽい幼さのある小4男子の話です。

私の経験上、男の子はかなり大きくなるまで「子ども」です。たとえばこの記事を読んでいるお母さん、ご主人(お父さん)のことを見て「子どもなんだから……」と思ったことありますよね?

大人になってさえそうなんですから、小学生は思いっきり「子ども」です(笑)。でも、そのなかにとても鋭い感覚が育っていることがあるのも確かなんです。

「正解する」と「理解している」は一致しない

彼と天体の問題を解いていたときです。

問題は、

「星座早見盤の東西の方角が、地図の東西とは逆になっている理由を答えなさい」

というもの。

実はこの問題、子どもたちにとっては「おなじみ」のもので、正答率も高い問題です。

模範解答は、

「観測したい方角を下にして使うから」

です。

みなさん、星座早見盤を使ったことはありますか?簡単に言うと、まるい板に星座が描かれたもので、円周部分を地平線と見立てて使うものです。

空を見上げながら、実際に見える星座と見比べながら使うのですが、たとえば南の空を観測するときは、南の地平線、つまり「南」と書かれた円周部分を下にして使います。

南を向いて立ったとき、東は左、西は右になりますね。地図では、南を下にした場合に東は右、西は左になりますから、星座早見と地図の東西の表記は逆になるのです。

ここまで文章で説明してきましたが、「ちょっとわかりにくいな」と感じた方もいるのではと思います。これはいわば当然で、本来は立体的な図などを使って説明しないとわかりづらいものです。

だから、子どもたちの中にも、この問題を正解できるにも関わらず(つまり「観測したい方角を下にして使うから」と覚えてしまっている)、意味がよくわかっていない子が多くいるのです。

これに対して彼の答えは 「中に入って使うから」でした。

???

私は、何を言っているのか一瞬理解に苦しみ、彼に聞いてみました

「え?『中に入る』ってどういうこと?」

すると彼は身振り手振りで、星座早見盤を頭にかぶるように使うのだ、ということを説明してくれました。つまり、平面の円盤である星座早見盤を、ドームのように見立てて、その「傘」の中に自分が入って使うのだというのです。

正面が南の方角であるドームに入ってしまえば、確かに東は左で右が西になり、地図の表記とは逆です。

彼の書いた答えは、テストでは正解とはならない場合が多いと思います。何を言わんとしているのか、採点者に伝わらない可能性が高いからです。

でも、正解の「字面」だけを覚えて◯になっているお子さんより、実はしっかり理解していたのです。

この子は小学校高学年になって国語の学習に力を入れ始めてから、考えと表現がピタリとリンクして、相当高いところまで成績が伸びたのです。

結果だけを見てお子さんの実力を見誤らないでください

テストの結果や問題の正誤を見るとき、単に〇だったというだけでは、本来のお子さんの力を見誤ってしまう可能性があります。「本当に◯なのか」という視点で見ると、お子さんの潜在的な力を見極められることがあるという、私にとっても貴重な経験でした。

みなさんも一度、お子さんの答案をそんな視点で見なおしてみませんか?

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです


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※記事の内容は執筆時点のものです

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