連載 ホメ夫先生のやる気引き出し術

「皿に食塩は溶けません!」勉強中の緊張ムードを変えるナイスリアクション|全力珍回答! ホメ夫先生のやる気引き出し術(6)

専門家・プロ
2015年10月06日 辻義夫

こんにちは。辻・E・ホメ夫です。

10月になりました。ぐっと涼しい日が多くなり、すっかり秋ですね。今回は、珍回答というよりは、「ナイスリアクション!」にスポットを当てたいと思います。

「はい!はい!」ではなく、「いいえ!いいえ!」

私は現在、SS-1(エスエスワン)という中学受験専門の個別指導教室の副代表を務めさせていただいておりますが、昔は一斉授業の大手塾で指導していました。そのときの1シーンです。

辻「この問題、分かる人いる?」

子どもたち「はい!はい!は~い! 先生!は~い!」

一斉に子どもたちの大きな声が響きます。

先生にあててほしいので、子どもたちは一生懸命自己アピール。

放っておくと収集がつかなくなるので、そんな時の先生の常套手段は……

辻「はいはい言う人はあてないよ!」

こう言うと、ほとんどの子どもは黙って手を上げるのです。

そこである子がこんなリアクションをしました。

Aくん「いいえ!いいえ!」

「はいはい」言う人はあてられないので、「いいえいいえ」ときたわけです(笑)。

まさにナイスリアクション! というわけで、思わずAくんをあててしまったのですが、こういうナイスリアクションができるお子さん、頭の回転が速いんですね。クラスのムードメーカー、中心人物になることも多いです。

ユーモラスなリアクションがクラスのムードを和らげる

頭の回転が速く、クラスのムードメーカーでもあるAくんは、いわゆる叱られ役になることも多いのですが、本人はそんなことは全く気にしていない様子。

ある授業で、私はふだん非常におとなしい女子のB子さんをあててみました。

けっこう難しい問題です。

最近力がついてきているはずなんだけど、この問題はどうだろうか、という期待と、「B子ってけっこうやるじゃん」とちょっとクラスのみんなの前で花を持たせてあげられればという気持ちからです。

B子さんは、ちょっと口ごもりました。無理もない、急に聞かれてスラスラ、というほど単純ではない問題です。

そんなとき先生は、対話の中でちょっとずつヒントを出しながら、子どもが答えにたどり着けるように導いていくのです。

それでもちょっと難しいかな、と感じたときは、「よし、よくここまで考えられたね」とねぎらって、できるだけ子どもを傷つけずに正解を示します。

B子さんはちょっと混乱しているようでした。急にあてられて、とても緊張している様子です。これで進展がなければ、切り上げよう、と思いながら私がB子さんに「この状態で、さらに何gの食塩を溶かすことができると思う?」と問いかけたとき、すかさずAくんが、

「先生、皿には食塩は溶けません!」

と素っ頓狂な声で言ったのです。クラスじゅうの子どもがどっと笑い、B子さんも思わず笑っていました。

「その『さら』じゃないんだよ!ほんとにおまえってやつは……」

と形式上、Aくんを叱りながら、若かった私はAくんに感謝していました。

すっかり緊張がとけたB子さんは、その後私といっしょにその問題を解き切ったのです。Aくんの粋なはからい(?)で、B子さんに余裕ができたのでした。

「ちぇっ、その『さら』じゃないのかよ!」

と素知らぬふりでおどけるAくんが、ちょっとイケメンに見えたものです。

こういった様子は、今日も日本中のあちこちで飛び交っているんでしょうね。今思い出しても、清々しい気分になります。

Aくん、ナイスリアクションでした!

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです


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※記事の内容は執筆時点のものです

辻義夫
この記事の著者
辻義夫 専門家・プロ

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

つじ よしお大手進学塾での指導経験を経て、中学受験専門プロ個別指導SS−1創設メンバーとして副代表、現在は顧問を務める。「わくわく系中学受験理科」と称される指導法、勉強法は「楽しく学べて理科系科目が知らない間に好きになってしまう」と好評。子どもの良いところをほめまくることから「辻・アインシュタイン・ホメ夫」の異名を持つ。「カレーライスの法則」「ステッカー法」など子どもが直感的に理解できて腑に落ちる解法を編み出す名人でもある。著書に『頭がよくなる 謎解き理科ドリル』(かんき出版)『中学受験 見るだけでわかる理科のツボ』(青春出版社)『中学受験 すらすら解ける魔法ワザ 理科・計算問題』(実務教育出版)などがある。

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

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