
「名は体を表す」できれば漢字で暗記しましょう!|全力珍回答! ホメ夫先生のやる気引き出し術(17)
ホメ夫が小学生のころ、クラスメートの一人が先生にあてられて教科書の本文を読んでいるとき「楽しい」を「らくしい」と読んで、クラスが爆笑の渦に巻き込まれたことがあるのですが(そういうホメ夫も「初々しい」を「はつはつしい」と読んでクラス中に笑われた記憶があります)、大人でも、意外な漢字を意外な感じ(ダジャレじゃないですよ)で読んでいることがあるものです。
「名は体を表す」ということわざがあるように、ものの名前には理由があり、それを覚えておくと忘れにくく、思い出しやすいのですが、今回のお話は、そうしなかった若いホメ夫の失敗の記憶です。
「繊」は「しなやか」、「鞭」は「むち」
まだホメ夫が一斉授業の塾の駆け出し講師だったころ、あるクラスの生物についての授業でした。
ゾウリムシというプランクトンには、体(細胞)のまわりに細かい毛が生えているのですが、それを「繊毛(せんもう)」といいます。そしてミドリムシというプランクトンには、体に1本の毛が生えていて、その毛を使って水中を「泳ぐ」のです。この毛のことを「鞭毛(べんもう)」といいます。
「繊」は「しなやか」「ほそい」が訓読みで「鞭」の訓読みは「むち」です。まさに「名は体を表す」で覚えやすいのですが、少々難しい漢字なので、テキストには「せん毛」「べん毛」と表記されています。ホメ夫も黒板に、その通り書いたのです。
この2つの「毛」を混同する子どもが多いので、講師としては何度も確認します。授業で教えて、問題演習でも出てきて、そして授業が終わって子どもたちが家へ帰る直前、最後に確認。
「最後に!ゾウリムシの毛はどっち?」
といった具合です。
「せん毛」「べん毛」え~っと、どっちだったっけ……
そんな授業があって数週間後。
同じクラスで復習の授業をしていた時のことです。
「ゾウリムシの体のまわりに生えてる毛、前にやったよね? なんて名前だったっけ?」
みたいな展開になったのです。
「え~っと、どっちだったっけ……」
とクラスの活発な男子が騒ぎ出し、気の早い男子が「先生、それってあのときの授業の最後に先生が言ったほうだよね?」と早くもフライング。
こういう「盛り上がり」は一斉授業には必要です。
さて、大ヒントも出たところでいよいよ答え発表!ということで、ふだん控えめな女子、Tさんに答えてもらうことに。
Tさんは、いつもあてられるときと同じように、ちょっとためらってから答えました。
そのTさんの答えは……
「せんげ……」
先生!「べんげ」のほう?
一瞬クラスが静まり返り、どよめきがおこります。
Tさんはとても「お嬢様」的な女子なので、いつもは囃し立て役の男子たちも戸惑っています。
そこで間髪入れずに発言したのが、クラスの女子のリーダー的な存在、Mさん。
「え?先生、『せんげ』じゃないの? 『べんげ』のほう?」
ここでようやく男子たちは大爆笑。
「お前、なんでそんな変な読み方なんだよ」
「『べんげ』とかないだろ」
とヤンヤヤンヤです。
ああ、やっぱり漢字で覚えるように言ってあげればよかった……
機転のきくMさんは引き下がりません。
「え~、先生、『べんげ』だよね? 私もそう覚えてたもん!先生あのとき『べんげ』って言ったよね?」
ああ、やっぱり漢字で覚えるように言ってあげればよかった……と若いホメ夫は後悔しながらも、Mさんに感謝しつつ乗っかります。
「あ~、言った言った。でも正解は『せんげ』の方だよ。」
どっとみんなが笑い、男子たちはブーイングです。
「先生、なんで女子にはそんなに甘いんだよ!」
みんなわかっていて、Tさんを必要以上に傷つけないように、それぞれの役割を演じる。いいクラスには、そんな一体感と仲間意識があります。クラスを運営する講師としては、こんな優しさをもったクラスの子どもたちに感謝です。
みなさん、念のため、正しい答えは
「せん毛(せんもう)」
ですよ。
「せん」は繊維の「繊」ですから、やっぱり漢字で覚えたほうが間違いないですね。
※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです
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