連載 中学受験は親と子の協同作業

【6年生】秋から始まる合否判定模試 模試を受ける注意点は?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.11

専門家・プロ
2018年9月06日 石渡真由美

夏休みが終わり、受験生の6年生は、いよいよ本番を意識する時期になりました。6年生の夏休みは、それまでどこか他人事に感じていた子も、さすがに自分の受験と捉え、頑張って勉強をしてきたことでしょう。ところが、夏休み中にあんなにたくさん勉強をしてきたのに、その成果を出せる子というのはごくわずか。多くの子は成績が下がってしまうのです。

一番の原因は「アタフタ学習」です。夏休みは夏期講習でほぼ毎日塾に通います。そして、塾からはたくさんの宿題が出ます。まとまった休みの間に、苦手単元の復習もしなければならないし、やることがいっぱいです。それを「全部やらなきゃ!」「早く終わらせなきゃ!」と気持ちばかりが焦り、問題を読み飛ばしたり、雑な勉強をしてしまったりするのが、「アタフタ学習」です。

「アタフタ学習」は、成績につながらないばかりか、長時間大量の勉強をするので、子どもの体力を消耗させます。そして、その疲れが夏休み明けの2学期に出やすくなります。

※夏休みにやってしまいがちな勉強については、こちらもご覧ください。
中学受験勉強は『得点力を上げる』ことに注力する

運動会の練習で疲労が蓄積。9月は学習ペースをゆるめて体調管理を優先して

ところが、多くの小学校では、9月、10月に運動会を実施します。運動会の練習は、2学期が始まるとすぐにスタートし、熱心なところでは約1カ月かけて行います。9月はまだ残暑が厳しい日も多く、小学生の子どもの体力を奪います。ただでさえ疲れが出やすいのに、週4~5日塾に通い、夜遅く帰宅する受験生にとってはとても大きな負担となります。

ですから、9月はあまり無理をせず、学習ペースを少し落とす必要があります。しかし、塾は相変わらず多くの宿題を出します。でも、それをすべてやるというのは所詮無理な話。そこで宿題の取捨選択が必要になります。すでに理解できているところは○、なんとなく理解はできているけれどまだ自信がないところは△、まったく分からないところは×をつけ、○と×はやらず、△のところだけをやるのです。

受験本番まであと半年しかないという焦りから、あれもこれもやらせなきゃ!と思うかもしれませんが、この時期、子どもはとても疲れています。疲れている時にたくさん勉強をやらせても、良い結果は出ません。ここは親が冷静になって、「今はがむしゃらに頑張る時ではない。子どもの体調管理を第一優先にし、学習ペースをゆるめよう」と割り切ることが大事です。

9月は得点力を高めるための型をつける時期。「焦らず、じっくり」がポイント!

とはいえ、9月になると、志望校の合格可能性がどのくらいあるかを知る「合否判定模試」という大事な模試が始まります。合否判定模試は、これまでも実施されていますが、9月から12月までは毎月続きます。この4回の模試の結果で、おおよその合否が見え、最終的な受験校を検討します。9月はその最初の模試で、夏休みの頑張りを試す大事な機会。ここでなんとか成績を上げていきたいところです。

しかし、先に述べているように、夏休みに「アタフタ学習」をしてきた子や、休み明けの2学期も夏休みと同じペースで猛勉強している子は、かえって良い結果が出せないのです。

模試では成績を上げたい。でも、子どもの体調管理を優先して、学習ペースをゆるめたい。そこで、9月は勉強の取り組み方を変える必要があります。ポイントは「焦らず、じっくり」です。

子どもの体力が消耗しているこの時期は、たくさんの量を勉強したり、新しいことを覚えたり始めたりといったエネルギーを使う勉強は向きません。そこで、「今ある知識でいかに点を上げていくか」という姿勢で勉強を進めていきます。

例えば、問題文の読み飛ばしで点が取れない子は、問題をじっくり読むことを意識させます。算数の問題で、途中まではできているのに、最後に答えが出せない子がいます。そういう場合は、条件を一つ見落としてしまっていることが考えられます。それもじっくり読むことで解決できます。

問題文の読み飛ばしをなくすのに、効果的な学習は音読です。しかし、模試や実際の入試では音読をすることはできません。そこで音読をするように黙読をする練習をしましょう。「この問題はここが大事に違いない」「この条件は落とさないようにしよう」と意識しながら、目で読んだものを頭の中で音に変えるような感じで読んでいきます。このくらいの慎重さがなければいけません。でも、それをするには心の余裕がなければできません。「アタフタ学習」をしていてはできないのです。

点数アップは理社が狙い目。社会はつながりで、理科はカテゴリー分けを意識する

合否判定模試も実際の入試も、合否は4教科の総合点で決まります。9月の模試は、夏休みの頑張りを試す模試という意味合いが大きいので、子どものモチベーションを上げるためにも、成績は上げていきたいところ。

でも、大きな伸びは期待できません。目標は「7月の合否判定模試の成績を5%上げる」くらいがいいでしょう。7月の合否判定模試で、志望校の合格可能性が25%だった子は30%にするといった感じです。目指す学校にもよりますが、5%アップするには、総合点を10点上げることが目安です。

では、何を上げていくか? 算数は不得意分野の得点が取れれば、成績が大きく伸びますが、不得意分野を克服するのは時間がかかります。そこで、この時期は比較的点数を上げやすい理科・社会で得点力を上げていくことをおすすめします。なぜなら、理科・社会の場合、多くの子は、すでに知識はあるのに、しばらく振り返らなかったことで忘れてしまっているだけだからです。そこで、今この時期に改めて復習をしましょう。今ここでしっかり覚えておけば、入試本番まで忘れることはありません。

ただし、正しい覚え方をすること大切です。例えば、社会の歴史なら「流れ」で、地理なら「つながり」で覚えます。「○○年に何が起きた」「○○地方は○○気候」と単独で覚えてしまうと、少し変化のある問題に対応できなくなるからです。

理科の生物や天体なら「カテゴリー分け」をして覚えます。そうすることで特徴や現象の共通性が見え、概念を理解できるようになるからです。でも、名前だけを覚えていては、すぐに忘れてしまいます。

国語や算数と比べ配点が低い理科・社会は、直前期に暗記をすればなんとかなると思っている人が多いようですが、中学受験で求められる理科・社会の学習範囲は膨大で、直前期にやればなんとかなるものではありません。直前期には、過去問など直前期にやるべきことがたくさんあり、理科・社会の暗記などしている時間はありません。ですから、今ここでしっかり覚えておくことが大事なのです。

体力が消耗し成績が落ちやすい9月。だからこそ、少しの時間で「正しい学習」をする

夏休みから蓄積された疲労に加え、連日の運動会の練習……。9月は体力が消耗し、長時間勉強に集中するのは難しい時期です。たからこそ、短時間で「正しい学習」を行い、あまり多くを望まず、少しでいいから成績を上げていくという考えで進めていきましょう。

逆にこの時期に絶好調な子は、かなり無理をしていると思います。大人の感覚からすると、入試本番まであと5ヶ月しかないと思うかもしれませんが、小学生の子どもにとっての5ヶ月はとても長い。あと半年近くもあるのです。ここで頑張り過ぎて、本番前に失速してしまうことのないよう、今は体調管理を優先しましょう。

秋は夏の疲れや運動会などで体調を壊しやすく、また苦手分野に取り組む期間であるため、一時的に成績が下がってしまうかもしれません。でも、10月を境に上昇していけば、入試直前まで伸びていく可能性は十分にあります。私はこの伸びを「合格への黄金曲線」と呼んでいます。夏休み明けから本番まで走り続けるのではなく、9月は少しペースを落として体調を整え、10月から徐々に上げていく。この「合格の黄金曲線」をイメージしながら、焦らず、着実に目標に向かって進んでいきましょう。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。