連載 中学受験は親と子の協同作業

過去問はいつから始めればいい? どう取り組めばいい?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.14

専門家・プロ
2018年9月27日 石渡真由美

「日能研では『11月からで十分』と言われているのに、SAPIXでは夏休み明けから始めている子もいます。過去問はいつから始めるのがベストなのでしょうか?」など、過去問をいつから取り組めばよいかという質問をよく受けます。

中学受験において、過去問は10月から始めるのが目安です。ただし、過去問の学習は、「通っている塾に志望校別特訓クラスがあるかないか」「志望校の入試傾向」「子どもの現状の学力」など、さまざまな条件によって、始めるベストタイミングが違ってきます。

今回は過去問の正しい取り組み方を解説します。

過去問は10月から始めるのが一般的。第一志望校は5年分はやっておく

過去問はその学校の問題傾向を知る材料になるので、早い段階からやった方がいいと考える塾の先生や親御さんは多くいます。しかし、現状の学力レベルが偏差値40なのに、偏差値60の学校の過去問を解いても意味がありません。ある程度の学力がついたうえで、「最後の仕上げ」として活用するものです。

過去問は、“肩馴らし校”を含め、受験する学校はひと通りやっておくことをおすすめします。塾からは「第一志望の過去問は10年分やっておくように」と言われますが、学校によってはそこまでやる必要がないところもあります。

例えば、麻布中のように過去10年以上入試傾向が変わっていないという学校なら、それは有効です。一方、桜蔭中は7年前に大きく入試傾向が変わりました。そのため、それ以前の過去問をやってもあまり意味がありません。

一般的な目安として、第一志望校なら過去5年分、第二志望校なら過去4~5年分、第三志望・第四志望校なら過去3年分をやっておけばいいでしょう。受験するすべての学校の過去問をやるとなると、約15年分にもなります。約15年分の4科の過去問を、塾の通常授業や模試対策、苦手分野の克服と並行してやっていくには、10月頃から始めていくのがベストでしょう。

ただし、設問の文章が長かったり、記述の文字数が多かったりするなど、特徴がはっきりしている学校の対策は、少し早めの9月頃からはじめることをおすすめします。

また、基礎学力が志望校に明らかに届いていない場合は、傾向対策よりも弱点対策を最優先しましょう。その場合、傾向対策は12月から集中的に行います。

過去問に取り組むときは本番を意識して、問題用紙や解答用紙は拡大コピーする

過去問は志望校対策に欠かせない大事なツールです。実際に過去問に取り組む際には、次の点を意識しましょう。

[1]制限時間を守らせ、本番と同じような気持ちで取り組む

[2]問題文を読み飛ばさないように注意する

[3]やりっ放しにならないように、間違えた問題の復習をしっかりやる。でも、すべての問題を復習する必要はない。合格者平均点に届くレベルまでにおさえておく

[4]解説が詳しい過去問題集を買う

[5]解答用紙は拡大コピーをして実物大にして使う

過去問は、本番の入試を意識して取り組むことが大事です。開始時間を測り、制限時間を守らせます。その時に、ストップウォッチではなく、針時計を見るようにします。実際の試験会場では、壁に掛かっている針時計を見ながら進めていくので、その感覚をつかむためです。

とはいえ、初めの頃は時間の配分がうまくとれず、半分も終わらないなんてことがあるでしょう。そこで、はじめのうちはラスト10分の時に「あと10分だよ」と声をかけてあげてください。その10分で何を解くか、どこを見直すかが大事なポイントになります。

また、本番を意識するために、過去問は拡大コピーをして実物大にしましょう。過去問は1冊の本にまとめられるように、1ページに何問も載せています。しかし、実際の入試では、1ページ1問という学校が多く、その余白に計算を書いたり、考え方を図にしたりします。

この「考える過程」がとても重要になりますので、実際の入試のサイズに拡大コピーをし、余白が広く残るようにしてそこに書き込めるようにしましょう。また、解答用紙の拡大コピーを忘れないようにしてください。「1.4倍に拡大すると実物大になります」などの表記がされている場合は、その通りの拡大率でお願いします。

また、過去問はいくつかの出版社から発行されていますが、解説が詳しい過去問を購入することをおすすめします。

目標は「合格最低ライン+各教科10点」 満点を目指さなくてOK

過去問は、その学校の問題傾向を知り、慣れることが大きな目的です。やりっ放しにならないよう、間違えた問題はきちんと復習をしましょう。けれども、すべてを理解しようと思わなくて大丈夫です。むしろ、そこにこだわりすぎてしまうと失敗します。

中学受験では満点で合格する子はいません。多くの子がギリギリで合格をしています。ですから、過去問の目標は、「合格最低ライン+各教科10点」と設定しておきましょう。それだけ取れていれば、合格できます。

中学受験の最終目標は志望校に合格することであって、満点をとることではありません。高得点を狙いすぎて、第二志望、第三志望校の対策が疎かにならないように、バランスよく学習することが大事です。

「合格最低ライン+各教科10点」を目指すには、比較的簡単な前半の問題(多くの学校では基礎問題)で間違えてしまったところを、次に解く時は正解できるようにします。その時にその問題を解き直すだけでなく、類似問題にも取り組み、その周辺の知識を見直しておきます。

そこがクリアできたら、後半の大問の(1)は解けるようにしておきましょう。ここまでできれば、「合格最低ライン+10点」はとれるようになります。それ以上の難問は、できれば得点に大きな差がつきますが、いくら考えても分からないような問題は「捨てる」選択をします。

過去問を取り組む順番ですが、学習が順調に進んでいる場合はまず、第一志望校の入試傾向をつかむために5年くらい前の問題を解いてみます。初めは当然、よい点数は期待できませんが、ざっくり傾向をつかむことに意味があります。その後は第三、第四志望校の問題を解いていきます。

一方、まだまだ多くの弱点単元を残している場合は、弱点対策を兼ねて第三、第四志望校から始めます。

併願校を選ぶ時は、第一志望校と入試傾向が似ている学校を選択することが大前提ですので、

・第三、第四志望校の過去問で「基礎」
・第二志望校の過去問で「応用」
・第一志望校の過去問で「総復習」

といった感じで、過去問を解きながら復習をしていきます。つまり、過去問は志望校の入試傾向をつかむツールであると同時に、復習や弱点対策もできるということです。

そして、第一志望校の直近1、2年の過去問は、1月の千葉・埼玉入試(本番前の“肩馴らし受験”の場合)の後、本番と同じ気持ちで受け、気持ちを高めていきます。

過去問で伸びる子・過去問で伸び悩む子。最後は親の信じる力にかかっている

過去問は模試より本番のテストに近いイメージがあるからか、過去問の結果が悪いと子どもを厳しく叱ったり、落胆したりする親御さんがいます。でも、それは逆効果なので、絶対にやめてください。親御さんのひと言や態度で子どもは自信をなくし、「今さら頑張っても……」という気持ちになってしまいます。

初めから過去問で高得点がとれる子などほとんどいません。「これから点数を上げていく方法を一緒に考えてみようね」と前向きな言葉をかけてあげてください。

入試直前期に入っても思うような点が取れなかったら、「この部分ができたらあと10点はとれたね。あと5点とるにはどの問題を頑張ればいいかな? どれだったらできそう?」と、どうやったら合格に近づけるかを一緒に考えていきましょう。

過去問は志望校の入試傾向をつかむものであって、本番の入試とは違います。大事なのは、お子さんの学力とモチベーションを本番にピークを合わせて調整していくことです。それには、お子さんにとって一番のサポーターである親御さんが、最後までお子さんの力を信じて励まし続けること。

10月から2月の本番までは、親にとっても正念場です。過去問をうまく活用し、親子で力を合わせて、合格を手に入れましょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。