連載 中学受験は親と子の協同作業

目標は上位クラス 秋から始める入塾テスト対策|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.13

専門家・プロ
2018年9月20日 石渡真由美

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中学受験をするなら、大手進学塾に通うのが一般的です。大手進学塾では、小学3年生の2月から、中学受験に必要なカリキュラムが組まれています。

学校と違って塾は、月謝を払って勉強を教えてもらう場所。ですから普通ならどんな成績の子でも入塾できます。ところが、中学受験の大手進学塾には、「入塾テスト」というものがあり、その結果によって入塾できない場合もあるのです。そこで今回は、これから中学受験を考えているご家庭向けに、入塾テストの中身とその対策について解説をしていきます。

大手進学塾の入塾テストはいつ受けるべき?

大手進学塾では、11月~翌年の1月にかけて、これから中学受験の勉強を始める小学3年生を対象に、入塾テストを実施します。入塾テストの目的は、「入塾そのものの可否」と「クラス分け」です。

一般的に大手進学塾のクラスは成績順に分かれ、1クラス15~30人で授業が進められます。クラスの数は塾の校舎によってさまざまですが、例えば難関校に強い塾として知られているSAPIXの場合、1学年で10クラスある校舎も珍しくありません。中学受験が盛んなエリアにある自由が丘校や東京校では、20クラス以上もあります。

入塾テストは、まずその塾のカリキュラムについていけるだけの学力があるかを判断し、入塾が認められた子は成績の順によってクラスが振り分けられるという仕組みになっています。

「お金を払う立場なのに、入れないこともあるの?」と、驚かれる親御さんもいるかもしれませんね。確かに難関校狙いの子が多く通うSAPIXではあります。それ以外の大手塾でも入塾に必要な基準点数が設定されています。

入塾テストにはどんな問題が出るの?

入塾テストは、国語と算数の2教科です。小学校のテストでいつも満点をとっている子なら、10月から準備を始めるというペースで大丈夫です。ただし、入塾テストの内容は、小学校のテストとは大きく異なります。

例えば国語なら、小学校の授業で扱うものよりもずっと長い文章が素材文として使われるので、長文を読むことに慣れておく必要があります。また、文章の中に出てくる語彙も小学校の教科書より難しいものが含まれています。

対策として、よく使われるのが『自由自在 小学3・4年 国語』(小学教育研究会)という参考書です。入塾テストを受けるのは、3年生の秋から冬にかけてですが、3年生の範囲はすべて見ておきましょう。上位クラスを狙うのであれば、4年生の範囲の語句だけは目を通しておくといいでしょう。

また、四谷大塚が出しているテキスト『予習シリーズ』の4年生の物語文を長文対策として活用するのもおすすめです。『予習シリーズ』は、四谷大塚塾生でなくても、市販で購入することができます(インターネット販売)。

算数もレベルが高く、参考書を使った学習をしておくことをおすすめします。

算数のテストは、次の3つで構成されています。

[1] 計算問題
[2] 一行問題
[3] 思考系の問題

四谷大塚や日能研は[1][2]が9割を占め、比較的簡単です。ところが、SAPIXは[1][2]が7割で、残りの3割は[3]の思考系の問題が出題されます。しかし、この思考系の問題は、小学校で習うものではなく、かつ中学受験の思考型問題ともまた違います。パズルや迷路など、脳トレに近い問題のため、それに慣れておかないと解くことは難しいでしょう。

算数の対策も『自由自在 小学3・4年生 算数』がおすすめです。国語同様に、3年生の範囲はすべてやっておきましょう。入塾テストの計算問題は、小学校で習う計算問題よりも複雑なものが多いので、4年生の範囲の計算だけはやっておくことをおすすめします。

また、手前味噌になりますが、10月中旬に『中学受験・スタートダッシュ』(青春出版社)の算数が、11月中旬に国語が発売されます。これは、入塾テスト対策に特化したドリルです。このようなドリルはこれまで存在せず、初の試みとなります。これまでの各塾の入塾テストを参考に、必要な学力と得点力をつける問題集を作成しました。ぜひ、活用してみてください。

塾のテキストは成績優秀な子どもを対象に作られている

さて、ここまで入塾テストの中身とその対策について説明をしてきました。ここからは、入塾テストの重要性についてお伝えしていきます。

大手塾の授業は、中学受験のために作られた学習カリキュラムに沿って進んでいきます。テキストは、SAPIXなら『デイリーサピックス』『デイリーサポート』、日能研なら『本科テキスト』や『栄冠への道』、四谷大塚なら『予習シリーズ』といったように、どの塾も毎年テキストの内容を吟味し、入試対策をしていきます。

各塾のテキストはそれぞれ特徴がありますが、一方で共通していることもあります。それは、塾のテキストが、成績優秀な子どもを対象に作られているという点です。

多くの塾にとって大切なことは、「何人の生徒を難関校へ合格させたか」という実績です。日能研や四谷大塚など間口の広い塾でさえも、塾にとって最も宣伝効果が大きいのは難関校への合格実績であることは変わりません。塾にとって一番ありがたいのは、難関校へ入ることの実力を持った子どもが、その塾に通ってくれることなのです。そのため、テキストをはじめ、すべての学習カリキュラムが、そうした成績優秀な子どもを基準に設定されています。つまり、誰でも簡単に理解できるような内容ではないということです。

入塾テストでは上位に入るほど有利になる

塾のクラスは成績順に分けられますが、どの学力レベルでも同じテキストを使用します。塾のカリキュラムはそのテキストに沿って進められるので、上位クラスの子は問題ありませんが、その学力に達していないクラスの子は、しっかり理解できないまま授業を受け続けることになります。

また、各塾では、入塾後も定期的に学力テストが実施され、その結果によってクラス替えが行われます。例えばSAPIXなら月に一度『マンスリーテスト』というものがあり、その結果によってクラス分けされます。最上位クラスが『α(アルファー)クラス』で、その下にアルファベットのクラスが続き、一番下が『Aクラス』となります。先に挙げた自由が丘校舎は、それが20クラス以上もあるということです。

ところが、クラス決めの材料となる『マンスリーテスト』の内容は、すべてのクラスが共通問題。上位クラスにいれば、授業で習った範囲しかテストで問われないため、授業の内容さえしっかり理解できていれば問題ありません。しかし、それ以外のクラスの子は、授業中に学習しきれなかった範囲や問題レベルまで出題されるため、順位の低いクラスになればなるほど、厳しい状況になります。つまり、クラスを上げるチャンスが極めて少ないということです。

それが続くと、いくら難関中学に強い塾に通っていても、6年生の秋から始まる志望校別特訓の受講資格を得ることができず、結果、志望校に合格することは限りなく難しくなります。このように大手進学塾では、どのクラスに所属するかによって、後々まで影響が出てしまうのです。

ですから、大手進学塾へ入塾を希望する場合は、入塾テストでいかに上位クラスに入るかが重要になります。

中学受験はスタートが肝心。でも、挽回は十分可能

入塾テストでは、上位クラスに入ることを目標に、10月頃から準備を進めていきましょう。各塾の入塾テストは、11月~1月の間に複数回実施されます。11月にすぐに受けてもよいのですが、まだ実力が足りないと思ったら、少し時期を遅らせて、「よし、大丈夫!」と自信を持ってから受けるとよいでしょう。

一方、入塾テストは、期間中は何度も受けることができるので、何回か受けて傾向をつかむという方法もあります。そして最終的に一番よい成績で入塾をするのです。

しかし、なかには入塾テストで思うような点がとれず、下位クラスになってしまう子もいるでしょう。ここまで上位クラスに入る重要性をお伝えしてきたので、「もはや挽回はできない……」とがっくりしてしまうかもしれませんが、この時点であればまだ挽回できる可能性は十分にあります。

3年生のこの時点で点数がとれないのは、基礎学力が不足しているのが一番の原因と考えられます。国語であれば「小学3年生までの漢字がうろ覚え」「語彙力が足りない」、算数であれば「計算力がない」「数字への慣れが不足している」などが考えられます。それを早い段階で克服すれば、4年生のスタート時点であれば、まだ挽回はできます。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

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