連載 中学受験は親と子の協同作業

入試直前期 逆転合格を導く「家庭教師」の見極め方|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.15

専門家・プロ
2018年10月04日 石渡真由美

6年生になると、9月から12月まで月1回のペースで、志望校の合格の可能性がどのくらいあるかを見る合否判定模試が続きます。この模試の結果によって、第一志望校を挑戦するかあきらめるか、第二志望校、第三志望校をどこにするかなどを決めていくことになります。

さて、その最初となる9月の模試の結果が、先週あたりに出たのではないでしょうか?

「夏休みにあんなに頑張ったのだから、きっと成績が上がっているはず!」とみなさん期待をしますが、残念ながら多くのお子さんが成績を落としていると思います。

(その理由は、こちらの記事『秋から始める合否判定模試 模試を受ける注意点は?』をご参考ください)

「このままではマズイ。なんとかしなければ!」これまで塾任せだった親御さんが焦り出し、家庭教師の問い合わせが増えるのもこの時期。でも、家庭教師を付けたからといって、お子さんの成績を必ず上げてくれるとは限りません。

逆転合格を期待するのであれば、それを上手に導いてくれる有能な家庭教師を付けることが必須。では、「良い先生」と「ダメな先生」はどう見極めればよいのでしょうか?

「基礎学力が足りない」「頑張ってやっているのにミスが多い」家庭教師の選択は子どもの状況によって変わる

小学4年生から始めた中学受験も、本番まで5カ月を切ると、さすがにどの家庭も焦り出します。塾には行っている、宿題も頑張ってやっている、なのに成績が上がらないのはなぜ? そんな時、最後の手段として選ぶのが家庭教師です。

しかし、家庭教師も人間で、魔法使いではありません。多くの親御さんは「家庭教師をつければなんとかなる」と漠然とした期待を抱きますが、ひとくちに家庭教師といってもその質の幅は広いのです。

6年生の10月はどの子も成績が下がりやすい時期ではありますが、それまでずっと低迷している子、秋からガクッと成績が落ちてしまった子は、なんらかの対策をしていかなければなりません。

家庭教師は、大きく分けると2つの能力が求められます。

[1]苦手教科の補強
[2]勉強のやり方の見直しと修正

苦手教科の補強は、基礎知識が不足している時に行われます。知識を補うだけなので、大学生の家庭教師でもできなくはありません。

でも、今この時期に、基礎知識が不足しているというのは、受験をする土俵にすら立っていないのと同じ。志望校そのものを検討する必要があるかもしれません。

受験を直前に控えている多くのお子さんの場合、基礎はある程度できていて、演習もたくさんやっている。でも、成績が上がらないという状況ではないでしょうか?

その場合は、勉強のやり方が間違っていたり、焦って「アタフタ学習」になっていたり、積み重なる成績不振で自信や、やる気をなくしていたりと、さまざまな原因が考えられます。

それをひとつひとつ点検していくには、中学受験を専門とするベテランの家庭教師の力を借りなければ、難しいでしょう。

このように、お子さんの状況によって、家庭教師の選び方は変わってきます。この判断を間違えて、「できるだけ安く押さえたい」と安易に行動してしまうと、ムダな出費になるばかりか、入試直前の大事なこの時期が、意味のないものになってしまいかねません。

お試し授業はここをチェック! 3回の授業で改善が見られなければ要検討

とはいえ、学生でなければ、みんなベテランの有能な家庭教師かというと、そうとも限りません。

家庭教師を付ける時は、まず体験授業を受けましょう。その時、子ども部屋ではなく、リビングかダイニングで指導してもらい、親御さんはその様子を見ましょう。

もし、次のようなことをやっている家庭教師がいたら、それは「NG家庭教師」。お子さんを合格へ導く能力のない家庭教師です。

■これをやっていたらNG ! ダメな家庭教師の見極め方

[1]解答集を膝の上において教える

中学受験に対応できる学力・能力のない家庭教師です。

[2]お子さんが「これ教えて」と言うと、「これはね…」とすぐに解法と答えを教えてしまう

知識をねじ込むだけで、「なぜそうなるのか?」「なぜこの解法を使うのか?」といった“理解”に触れず、正解を出させることだけで満足する家庭教師。子どもがどこでつまずき、どこが理解できていないかに注目していないため、根本的な修正はのぞめません。

[3]自分のやり方にこだわり、押しつける

中学受験のつまずきは人それぞれで、その子の学力や状況に応じた教え方が必要。「苦しくても今は頑張るしかない」と我慢を押しつけてきたり、「ここはこのやり方で解かなければダメだ」と、ひとつのやり方にこだわったりする家庭教師は、自分が教えやすいように進めているだけで、その子を思って指導していません。

そして、最も大事な判断基準が、お子さんの表情です。いつもより明るい表情で勉強をしていたり、素直に質問ができていたりしたら、きっとその先生を気に入っているはず。直前期の勉強で大切なのは、子どもが気持ち良く勉強ができるかどうかなのです。

とはいえ、たった1回の体験授業では見極めるのは難しいでしょう。初回から「この人はNGだな」と思ったらやめておいた方がいいと思いますが、即決が難しい場合は、3回やってみてよいかどうかの見極めをしましょう。

良い家庭教師は合格の道筋を立ててくれる

では、良い家庭教師とは? ひと言で言うと「合格までの道筋をプランニングできる人」です。

首都圏の受験生の場合、本番まであと4〜5カ月。あまり時間はありません。その間にどこを修正し、どこを省き、どこを強化していけば合格へ導くことができるか見通せる力を持った人こそ、有能な家庭教師です。

それには、ここまで成績が低迷し、焦ったり、やる気がなくなってしまったりしている子どもに、自信を持たせる必要があります。

中学受験の最終目標は志望校に合格することですが、今はその目標が遠すぎる。そんなときは、「次の週例テストで80点を目指す」「合否判定模試で合格可能性を5%上げる」など目先の小さな目標を立て、それをクリアさせます。その時に、できたことは褒め、頑張ったことは認める。直前期の勉強は、そうやって子どもに自信を持たせてあげることが大切です。

この時期の学習は、過去問を解くことが中心になります。過去問は解いて終わりではなく、その後の見直しと理解が大事です。

(詳しくは前回記事『過去問はいつから始めればいい? どう取り組めばいい?』をご参考ください)

その時も「なぜそうなるのか」きちんと理解ができるように、解法を教えるだけではなく、適切なヒントを出し、子ども自身に考えさせる家庭教師が理想です。「あ、そういうことか!」と子ども自身が納得して理解できたら、その知識や考え方を忘れることはありません。

家での学習は過去問が中心となりますが、これから12月までは毎月、合否判定模試が続きます。合否判定模試は、志望校の合否を判断する目安にはなりますが、幅広い学力層の子が受ける一般向けの模試なので、実際の入試とは異なります。ですから、合否判定模試で良い結果が出せなくても落胆する必要はありません。

ただし、志望校の入試傾向に該当する問題は、できるだけ正解を目指しましょう。どの問題がそれに該当するかも、有能な家庭教師なら知っています。

また、良い家庭教師は、子どもの勉強だけを見るのではなく、親子間の関係も見極める力があります。実は、小学生の勉強の伸びは、日常が大きく影響しています。模試の朝、お母さんとケンカをしただけで、その日の成績がガクッと落ちてしまうのはよくあることです。

また、親が過剰にプレッシャーを与えていたり、悲観していたりすることで、子どもが伸び伸びと勉強できない状況になっていることもあります。そうした家庭内のギクシャクに気づけるのは、その家に入って指導ができる家庭教師だからこそ。親子関係を改善しただけで、子どもの成績がグンと上がるのを、私はこれまでに何度も見てきました。

家庭教師は“人”次第。わが家の良きパートナーを見つけよう

一般的に中学受験において、家庭教師はピンチの時に求められる存在です。6年生の入試直前期にさしかかる今、求めるのは「わが子の力を最大限に伸ばしてくれる人」ではないでしょうか?

それを望むのであれば、まずはお子さんの現状や抱えている悩みを素直に伝えることが大事です。お子さんの成績やつまずきは、テストの解答を見ればおおよそ分かります。でも、家庭内のことはすぐに分からない部分もあります。家庭の弱音を吐くことが嫌という親御さんは少なくありませんが、今は短期間でどのように修正をし、合格を勝ち取るかが重要。それには、「勉強のことは家庭教師にお任せ」「家庭の弱みは見せない」ではなく、家庭教師としっかりコミュニケーションをとって、一緒に戦ってもらうパートナーにすることです。

よく家庭教師を付けるご家庭では、「うちはお金を払っているのだから」とあれもこれもやらせようとする親御さんがいます。ところが困ったことに、それが志望校の入試問題とはまったく関係のないものだったり、お子さんの学力レベルに合っていないものだったりと見当外れなことが多いのです。

家庭教師に「こうして欲しい」と頼むことはいいのです。でも、それがまったく意味のないものでは困ります。そのためにも、お子さんが今、何につまずいていて、どんな力をつけていきたいか双方でしっかり話し合える関係性を作っておきましょう。

「良い家庭教師」の基準はありますが、最終的にそれを判断するのは各ご家庭です。お子さんにとっても、親御さんにとっても良い家庭教師に出会えたら、逆転合格も夢ではありません。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。