学習 連載 家庭で教える算数

小学校にあがる前に身につけたい「比べる力」|家庭で教える算数

専門家・プロ
2018年12月05日 諸葛正弥

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算数でも理科でも、そして国語でも社会でも、すべてにおいて共通していることは「比べる」ということでしょう。算数はもちろん、国語も説明文の多くは2つの対立構図を比較する形で述べられているのが基本です。理科も対照実験に代表されるように、比べることで結果を分析していきますし、社会でも地理の統計などはまさに数値の比較です。

学習の基本は「比べる力」

与えられた情報を的確に把握し、違いや変化に気がつくようになるには、こうした「比べる力」が必要不可欠です。ですが、それよりも「目先の計算のスキル」に注力するご家庭は少なくありません。

「目先の計算のスキル」ばかりに注力してしまうと、何の疑いもなく機械のように処理することには長けても、導き出した答えの意味や違いに気づけず、単に「当たったか」「外れたか」だけを気にするようになってしまいやすくなります。

「比べる力」を身につけるために「正確な情報の把握」からはじめる

こういった話をすると、どうしても「比べる」ワーク“そのもの”を子供にやらせたくなるのですが、その前にまず「情報を正確に把握する意識」を育てなければ「比べる」も何もありません。

ですので、「比べる」前に「把握する」練習をしておくことが肝心です。

たとえば次のようなワークがあります。

ひだりにかかれた「〇」「▽」「■」をみぎのマスのなかにも、おなじようにかきなさい。

このように「正しく同じ図を再現できるか」というワークからまずスタートして、正確に情報を把握する意識を高めさせることが大切です。

小さな子供に限らず、人は意外と情報を大雑把に把握しています。それで「わかったつもり」になっていることが多く、自分で意識してきちんと把握しようとしなければ、意外と細かい所までは見ていなかったりするのです。

ですから、正確に情報を把握する意識の「ON/OFF」ができるかどうかはとても重要です。小学校にあがる前、できれば幼児のうちから、トレーニングできるとよいでしょう。

これを疎かにすると、何となくわかったつもりで問題に取り組み、注意不足や勘違いのミスをする、という傾向が高まっていくのです。

読み取った情報を正しくアウトプットして、確認する

さて、「比べる」前に「正確な情報の把握」といって、上述のワークを例にあげましたが、このワークは結果的に「左右の比較」になっています。ワークに取り組むときに親が念頭にいれなければならないことは、次の2点です。

・得た情報を正しく書く(アウトプットする)
・書いたうえで、本当に正しいか確認する

親が子供にワークをさせるとき、作業中に間違いを指摘するのではなく、ひと通りやらせてから「全部あっているか、ひとつひとつ確かめてごらん」と指示して、子供の力でひとつずつチェックさせることが重要です。

「比べる力」のトレーニングには「間違い探し」がよい

2つの情報を比べるトレーニングは身近な環境で結構発見できます。雑誌などに掲載されている「間違い探し」はとてもよい練習材料でしょう。細かな違いは、注意深く見比べなければ正解がわかりません。

こうしたトレーニングで情報抽出と比較の目を養っていくのは、勉強しているというより、遊んでいる感覚で取り組めるでしょう。小学校にあがる前の子供たちの練習材料としてはうってつけではないでしょうか。

「比べる力」は新しい学力観でも重要なスキル

「比べる力」はこれから求められる学力観においてもたいへん重要なスキルです。

現在、大学入試改革の流れの中で「探究学習」が注目されていますが、探究していくためには「疑問を見つける力」が必須です。

物事を掘り下げるためのキッカケとなる「疑問」を見出せないと、そもそも「探究学習」が成立しません。そしてその疑問は「比べる」ことを通じて、変化に気がついたり、違和感を覚えたりすることで生まれるものなのです。

「比べる力」がこれからのあらゆる学習の土台となる。それぐらいのイメージを持たれるのがよいのではないでしょうか。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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