小学校にあがる前に身につけたい「試行錯誤する力」|家庭で教える算数
多くの受験生を指導しているなかで、「伸びる子」と「伸び悩む子」の違いを考えさせられることは多いです。個人的な主観ではありますが、「伸びる子」に共通しているのは「試行錯誤できる」という点ではないかと感じます。どれだけ処理が早くて正確でも、試行錯誤できない子は一定以上には伸びないと感じるのです。
「試行錯誤する力」とは?
では「試行錯誤する力」というのは何か。これがなかなか難しい問いです。
PDCAサイクルに似た思考のサイクルを回せる力とするのなら、疑問を持ち、仮説を立て、検証し、その結果から新たな疑問を設定するということになるでしょうから、「疑問を見つける力」、「仮説を立てる力」、「検証する力」のように分けられるのかも知れません。この手の話は大人が目的意識を持って聞くと「なるほど」と、共感を持って実行しようとします。でも、子供はそうはいきません。
試行錯誤の前提
前述のように、大人は目的意識を持っているからこの面倒なサイクルをひとつずつ実行し、解決しなくても考えを深めようとします。ですが、子供は単純に「答え」が知りたいのであって、考えたい訳でも、理解したい訳でもありません。
理解したり、納得したりする喜びを知っていくと変わっていくのですが、子供はそうなる前にまず「答え」を欲しがるものです。
ですから、「試行錯誤するメリット」を感じられないと、やりたいとは思わないのは当然のことで、ここに大きなハードルがあります。
家庭で簡単にはじめられる「迷路ワーク」
算数を題材に幼児・低学年から「試行錯誤する力」をつけることを目的とした教材はたくさんあります。親御さんにとっては、どれを選ぶか悩むくらいでしょう。「試行錯誤するメリット」を子供たちが感じられるものを選ぶことが大切です。
市販されているものを活用することはもちろん効果があると感じます。ただ、私の経験上、家庭でも手軽に用意できて、子供たちの反応もよく、効果的だと感じたものがあります。それが「迷路ワーク」です。
「迷路ワーク」はルールがわかりやすく、難易度調整が簡単です。夢中になって取り組み易く、ゲーム感覚で集中して取り組んでもらえていました。
「迷路ワーク」とは、次ようなものです。
ルール
1)スタートから「×」がないマスをすべてとおってゴールまで「せん」をかいてください。
2)かいとおったマスは 2かいとおっては いけません。
3)ナナメにとおっては いけません。
「すべてのマスを通る」ということや、「同じマスを2回通ってはいけない」というルールがわからずにやってしまうケースが出てくるので、はじめはその注意が必要ですが、慣れてくると子供たちは一人でどんどんやろうとします。
マスを増やしていけば難易度が上がっていきます。
次のような追加のルールをつくることも効果的です。難易度が上がり、仮説思考のトレーニングとしての効果も高まります。
4)「せん」は こたえがわかってから ひとふでがき で いっきににかくこと。
5)けしゴムをつかっては いけません。
「迷路ワーク」のメリット
「迷路ワーク」のよい所は、「もし、ここを通ったら……」という仮説を立てて、それを確かめ、修正するという試行錯誤のサイクルを自然に行わせることができる点です。
すぐに答えが出なくても「とりあえず色々試してみたらどうなる?」という仮説思考にチャレンジしようと思える心理的なハードルの低さがあります。問題を作るのも簡単です。
10マス×10マスくらいのサイズで迷路をつくり、一筆書きで一気にゴールまでという段階までいくと大人でも苦労するレベルのトレーニングになります。ですから、幼児だけのものではなく、ちょっとした脳トレの感覚で高学年になっても楽しむことが可能です。
迷路を解くことに飽きた場合、迷路の作成をやってみるのもよいでしょう。マス目だけを用意して書き込む「×」の数を決め、消しゴムを使わずにすべての「×」を書き込み、問題を成立させるというのは意外と頭を使うのでおすすめです。
■「家庭で教える算数」バックナンバー
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※記事の内容は執筆時点のものです
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