中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験 中高一貫校進学のメリット・デメリット|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年12月22日 石渡真由美

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中学受験者数はここ数年増加傾向にあります。受験を経て、中高一貫校へ進学する。そのメリットとデメリットは何なのでしょう。今一度考えたいと思います。

最大のメリットは伸び伸びと過ごせる6年間

中高一貫校へ進む最大のメリットは、「高校受験に分断されない6年間」を手に入れられることです。私自身、中学受験を経て私立中高一貫校に進学し、充実した6年間を過ごせました。

6年間で特に思い出に残っているのが、中3の夏休みに東京から京都まで自転車で旅をしたことです。15歳の夏といえば、公立中学では部活動を引退し、高校受験の勉強が本格化する時期。受験勉強に励むことが悪いわけではありませんが、15歳の多感な時期に、いろいろなことをセーブして受験勉強に時間を費やさなければいけないというのは、もったいないなと感じています。

当時15歳の私は、親戚のいる京都を目的地にして、安く泊まれるユースホテルを利用しながら、幾日もかけて自転車を漕ぎ続けました。途中、箱根峠で足がまったく動かなくなり、泣く泣くタクシーに乗るトラブルもありましたが、そんな挫折も今となってはよい経験です。旅の途中でいろいろな人に出会い、自分の視野が大きく広がりました。その夏の体験は、今の私の人生に大きな影響を与えたと思っています。

また、途切れることなく部活動に打ち込めたことも良かった点です。私は合気道部と美術部を兼部していましたが、顧問の先生の異動もなく、6年間同じ先生に指導してもらえました。合気道は現在も続けており、一生涯のスポーツになったなと思っています。部活動以外の場でも、当時英語が苦手だった私に、顧問の先生が個別指導をしてくれたこともありました。たまたま合気道部の顧問が英語教師だったという幸運もありますが、このように先生と生徒が深くつながるのも、私立中高一貫校の良さのひとつだと思います。

卒業から30年以上経ちますが、毎年のように当時の仲間から学校・恩師の近況を知らせる便りが届くのも、一貫校生らしさだと感じます。縦のつながりだけでなく、友人との横のつながりも強く、ここでの出会いは、私にとって一生の宝です。

余裕を持って大学受験の準備ができる

学習面でも中高一貫校のメリットは大きいと感じます。高校受験がないので、中3で高校の勉強を先取りできます。多くの中高一貫校では、高2までに高校過程に必要な勉強を終え、高3の1年間で大学受験のための勉強をします。余裕を持って大学受験の勉強ができる点で、中高一貫校は大学受験に有利だといわれています。

また、中高生活の過ごし方次第ではあるものの、大学附属の中高一貫校へ進学すれば、内部進学で大学へ進むこともできます。そうすれば、高校・大学受験に縛られず10年間伸び伸びと過ごすことができます。

近年の中学受験では、志望校に大学附属の中高一貫校を選ぶ家庭が多くなっています、人気の理由にはこうした背景があるようです。ちなみに私は、大学附属受験については、保護者の皆様に少し冷静な視点を持って慎重に考えてみられることをおすすめしています(詳しくは過去の記事「今一度考えたい 大学附属校は本当にいいの?」を御覧ください)。

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宮本毅

宮本毅

  • 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

石渡真由美

  • この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。