中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

6年生の秋に成績が落ちる原因とは?│中学受験塾のトリセツ#46

2024年9月17日 天海ハルカ

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6年生にとって秋は、過去問を始めるなど受験を強く意識する時期。

多くの塾では入試に必要な知識や解法は夏までに一通り学び、秋からはそれぞれが自分の志望校に必要な力を伸ばしていきます。

一層気を引き締めていきたい時期ですが、急にテストの点数や偏差値が落ちてしまうことも少なくありません。

これは実際に学力が低下しているとは限らず、学力以外に原因があるケースも考えられます。

しかし、受験本番が近づいているというプレッシャーから、本人はもちろん、保護者の方も必要以上に重くとらえたり、焦りを感じたりしてしまいがち。

落ち着いてわが子の頑張りを見守るためにも、6年生の秋に成績が落ちてしまう原因とその対策についてお話しします。

実力テストになったから

6年生は夏期講習以降、範囲のあるテストが減り、ほとんどが実力テストになります。

そのため、今までテスト範囲をきっちり勉強して点数を取ってきた子は、急に点数が取りにくくなることがあります。

実力が下がったからではなく、今までとテストの内容が変わったから結果も変わったということですね。

見かけの成績に振り回されず着実に弱点をつぶそう

実力テストに対して特別な対策はできませんし、むしろ必要ありません。

この時期に大切なのは、テストで好成績をとることではなく志望校合格に向けて勉強することです。

塾での成績にはあまりこだわらず、苦手や弱点を発見するものとして利用してください。

見つけた苦手や弱点をつぶしつつ、落ち着いて志望校対策を進めましょう。

夏期の疲れや達成感があるから

6年生の夏期講習はハードです。

どの塾も授業日数が多く、1日の授業時間も長いんですよね。

塾へ行っていない子が旅行したり遊んだりしている時間に、受験生たちは塾へ行き、家でも勉強していました。

学校がないとはいえ、精神的にも肉体的にも疲労が溜まっているはずです。

夏期講習が終わったことで、達成感から緊張が解け、どっと疲れが出ているというのもあるでしょう。

頑張る気持ちがなくなったわけではないと思うのです。

精神的な疲労が原因でなんとなくやる気が出せない、やる気があっても体がついてこないのかもしれません。

知識や解法はあるのに集中力がもたない状態では、塾のテストでうまく解ききれず、点数がとれないというのも無理のないことですよね。

このケースでは、実際に成績が落ちたというより、実力が出しきれていないだけとも言えるでしょう。

学校との両立ペースを取り戻そう

まずは夏休みの生活サイクルを、塾と学校の両立サイクルに戻し、体の調子を整えなければなりません。

受験に向けて勉強の追い込みをしたい気持ちは一旦抑えて、生活リズムを作るところから始めましょう。

過去問は急がなくても良いので、生活リズムを取り戻すまでは、塾の予習復習や小テストの勉強を中心に無理なく進めます。

可能であれば、休日も含めて早寝早起きを心がけ、朝型に切り替えていきたいですね。

午後入試もありますが、やはり入試のメインは午前です。

朝から全力で問題に向き合えるように、生活リズムを整えるのも受験準備のひとつと言えると思います。

入試への焦りでオーバーヒートしているから

入試が近いからと勉強に負荷をかけすぎると、頭も心もオーバーヒートしてしまいます。

多くの塾が、秋から過去問を始めるよう指導します。

志望校対策として進めたいものですが、普段の勉強を続けながら過去問も解いていくというのはなかなか大変です。

さらにはこの時期、オプションでさらに別の授業を取ったり新しい参考書を勉強に取り入れたりしたくなるかもしれません。

それが有用な場合もありますが、さらに気力と体力の消耗が増えてしまうケースが多いように思います。

子どもは許容量を超えてしまうと、頑張りたいと思っているのに、体がついていかないということも。

また、気力で手は動かしていても頭はあまり動いていない、という状態になることもあるので無理は避けたいですね。

タスクを増やさず、減らして休養を

たくさん勉強するに越したことはありませんが、あまり負荷をかけすぎると逆効果になってしまいます。

詰め込んだ知識を整理するための睡眠も、やる気を保つための気分転換も、受験勉強には必要です。

子どもの性格によっては、焦りや不安から休みを取りたがらないケースもあります。

オーバーヒートが後を引いて長引くのは避けたいので、様子を見て休みを挟むよう声かけをしてあげてくださいね。

短期的な結果を求めてしまうから

入試が近づくと気持ちが焦り、目に見える結果を欲してしまうことがあります。

これは実際にあったケースですが、社会のミニテストで点数を取れたことがうれしくて、社会のミニテスト対策ばかりを勉強するようになってしまった子がいました。

過去問では点数が取れず、クラス分けテストも振るわないという状況だからこそ、「取れるところで点数を取って安心したい・褒められたい」という気持ちが働いたのでしょう。

1科目に集中した分、他の科目は成績が振るわず、全体で見ると偏差値が下がってしまうのです。

「褒め」も駆使した働きかけで、いま必要な勉強をできるように

この子の場合は、親と相談して塾から働きかけ、バランスを取り戻させました。

親や先生から褒められたり、自分で自分の頑張りを認められたりすることは、受験が近くてデリケートな時期こそ大切です。

心に余裕がないと視野が狭まり、優先順位を間違えてしまいがちです。

点数を取ることはもちろん大切ですが、科目によっては勉強したという事実を認め、褒めてあげることも必要なのだと思います。

親の立場で言うならば、「受験生なのにそんなことで褒めるの?」という気持ちはあるんですけどね。

デリケートな時期だからこそ、ポジティブな声がけを心がけたいものです。

モチベーションを保つにも無理は禁物

急に成績が下がったように見える場合は、実際の学力ではなく子どもの気力が関係しているケースもあります。

気力が下がっているようなら、少し休養やリフレッシュを挟み、自信ややる気を回復させることを試してみてください。

たとえば、気力が回復するまでは好きな科目や得意な科目を中心に手をつけるなどですね。

6年生の秋からは、無理をしたいけど無理をしてはいけないというデリケートな時期です。

焦りや不安から無理をすると、すべてが嫌になってしまうというリスクがあります。

心が折れてしまうことを回避するために、保護者も焦りを見せないよう気をつけたいですね。

焦りを抑えるのが難しいときは受験スケジュールを見直すのも良いですし、個人的には子どもが解いている問題を保護者も解いてみるのもおすすめです。

1問にかかる時間や理解に必要な労力を肌で感じると、詰め込みすぎては心が持たないという気持ちになるかもしれません。

受験生とはいえ、入試に向かっているのはまだ小学生であり子どもなのです。

遊びたい、だらだらしたいと思うのは当然なので、その気持ちをくみつつ勉強を進められるよう、導いてあげてくださいね。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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