都内で私立中高一貫校の中学受験熱が高い理由 ―― FPに聞く中受と教育費のキホン

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2019年3月13日 佐藤あみ

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※この記事は、情報を刷新・再編集のうえで再監修を受けた最新版を公開しています。

首都圏を中心に過熱している私立中学受験。なぜ中学受験に関心を寄せる家庭が多いのでしょうか。ファイナンシャルプランナーとして、中学受験をはじめとした教育資金設計などのコンサルティングを行う竹下さくらさんにお話しを伺いました。

有名大学進学率トップ層は私立中高一貫校

竹下さんによれば、昨今の私立中学受験人気の背景には「入学定員数が厳格化し、大学受験が難しくなった」という事情があるそうです。文科省による大学への助成金不交付基準が年々厳しくなっており、大学側は合格者数を抑制しています。

従来まで私大の大規模校では入学定員数を120%までに抑えれば助成金が交付されていたのですが、文科省は2016年度より年々入学定員の充足率を下げているため、大学側も合格者を減らさざるを得ない状況となっています。

「志望大学に入れず浪人の道を選べば、予備校代と模試代、そして合格後の進学費用と、現役生よりも200~300万円ほど追加の教育費がかかります」(竹下さん)

家計への負担を考えれば、わが子には現役合格してもらいたい、そして願わくばそれが有名大学なら……と思うのが親心。そこで有名大学への進学実績を見ると、上位を占めているのが私立の中高一貫校で、しかも、その多くが高校からの受け入れを行っていない完全中高一貫校なのです。

「中高一貫校への入学が、有名大学の現役合格への近道だと考える家庭が多いのでしょう」と竹下さん。いまや都内で私立中学校に通っている割合は、24.3%。4人に1人という計算になります。

東大合格者ランキング

2018(平成30)年 ※赤字は私立中高一貫校

1.開成(東京)
2.筑波大附駒場(東京)
3.麻布(東京)
4.灘(兵庫)
5.桜蔭(東京)
5.栄光学園(神奈川)
7.聖光学院(神奈川)

8.学芸大附(東京)
9.渋谷教育学園幕張(千葉)
9.日比谷(東京)
9.海城(東京)

私立中学校に通う割合(平成29年度)

  全体(人) 私立(人) 割合(%)
東 京 304,199 74,217 24.3
全 国 3,333,334 239,400 7.1

実は中学受験はコスパが良い!?

一般的に費用が高いイメージのある私立中学受験ですが、「中学受験のほうが実はおトクという考え方もある」と、竹下さん。その理由は、予備校代がかからないことがあるからだといいます。

「中高一貫校では、高校受験がありません。そのため、中学と高校の学習内容は5年間で終え、残りの1年間は大学受験に特化した授業に費やせます。完全中高一貫校が多い理由はここにあるのです。有名大学進学を目指す生徒のための特進クラスや、長期休暇中の補講がある学校もあるので、予備校に通わずとも大学受験に必要な勉強ができます。さらに面倒見の良い学校では、弱点克服カリキュラムが組まれており、こうした学校に通う生徒は、補習塾すら不要になるそうです」(竹下さん)

日々の授業で生じた苦手に対しても、学校内での手厚いサポートで克服できる。そうすれば部活動や習いごとなど、勉強以外の分野の活動にも励むことができます。

また、多感な時期でもある中高の6年間、同じ先生方に教わることができるというのも、親としては安心材料になるのではないでしょうか。大学附属の中高一貫校も含め、公立高校に比べて私大への推薦が多いのも特徴なのだとか。こうした話を聞くと、中高一貫校の有名大学進学率の高さも納得できます。

とはいえ、塾や予備校の費用がかからない場合でも、私立の授業料が高いことに変わりはありません。そこで注目したいのが、高校の授業料無償化と都道府県の助成制度です。

「私立に通っても国の就学支援金と都道府県の助成金により、家計の負担を少し減らすことができるのです。越境通学や父親の単身赴任などにより給付制限がある場合もあるので、チェックしておきましょう」(竹下さん)

公立中学でも意外とコストはかかる

親世代のイメージでは、公立中学校に通っている場合、部活動も落ち着いた中学3年の夏から入試に備えて塾通いを始めようと考えるのではないでしょうか? ところが、「今の子どもたちは違う」と、竹下さんは語ります。

「公立高校を受験する予定でも、中学1年から塾に通うのは当たり前。高校受験のために、小学校5、6年生から塾通いする子も少なくはありません」(竹下さん)

そこには高校入試の合否判定方法が関わっているそうです。公立高校の受験は、入試テストの得点に、内申点も加えて合否の判断をします。都道府県ごとに割合は異なりますが、内申を5割もの割合で重視する学校もあり、内申をまったく加味しない学校はまずありません。

「つまり公立高校を目指すにしても、中学入学時から定期試験で好成績を収めることはもちろん、日々の授業や提出課題にもきちんと取り組み、高い内申点を得る必要があるのです。その結果、塾通いを始める時期も、昔と比べると早まっています」(竹下さん)

また、学区制が廃止されたことで、一部の高校ばかりに人気が集中してしまい人気校の倍率が従来よりも高くなっていることも、現在ならではだといいます。人気の有名公立高校を第一志望にする場合は、私立も1~3校ほど併願するほうが安全。その費用も用意しておく必要があります。

「余談ですが、高校受験の時期はいわゆる反抗期と重なるタイミング。そういう意味での難しさもあるのではないでしょうか」(竹下さん)

このように、私立中学受験はお金の面のメリットもあるとのこと。どのような進路であっても、大学卒業までの教育資金は相当なものです。計画的な資金繰りをしていきましょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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