連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

読書が好きなのに、国語の成績が伸びないのはなぜ?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年4月04日 石渡真由美

読書が好きな子で、たくさん本を読んでいる。それなのに、「子どもの国語の成績が上がらない」と嘆く親御さんは少なくありません。読書が好きなことは良いことです。しかし、単に読書をするだけでは子どもの国語力は伸びないのです。

国語のテストで点をとるには「精読力」が必要

本を読むのは好きなのに、国語のテストで点がとれない子がいます。親御さんからすると「なぜ?」と不思議に感じるかもしれません。

まず大前提として知っていただきたいのが、「国語のテストが、何を聞いているのか?」ということです。国語のテストは、大きく分けると次の2つを聞いています。

1)この言葉を知っていますか?
2)その言葉からどんな状況が類推できますか?

こういった問いに答えるために、塾の国語の授業では次のような指導がおこなわれています。

まず、生徒に問題文を黙読させ、設問に解答させます。次に講師が文章の構造を解説します。

「ここで問題提起がされ、筆者の主張はここで、具体例はここで、結論はここ…」

といった感じですね。

そして最後に、設問の解答方法を解説します。次のようなイメージです。

「問1は接続詞補充の問題だから、文の前後がどういうつながりになっているのか、『順接なのか、逆説なのか』を考えながら接続詞を選ぶ」

「問5は理由説明だから、文中のここから引っ張ってきて記述する。解答の構造は『出来事』+『気持ち』+『~だから』」

このように塾の国語の授業では、テストを解くためのテクニックを教えているのです。

しかし、日本語がよくわかっていない子どもが「問題提起」や「文の前後のつながり」といわれて、果たしてそれだけで理解できるのでしょうか? そもそも文中にある単語の意味すらわかっていない危険性もあるのです。

国語のテストで点がとれない子の多くは、文中にある言葉の意味がわからなくて、言っていることや書いてあることが判然とせず、文章全体がぼやけています。その結果、正しい答えを書くことができないのです。

ですから、国語のテストで点を取るには、文章を精読する力や、語彙力がどうしても必要です。その力がついていないのに、解き方のテクニックばかり学んでも、正解することはできません。

国語が苦手な子どもに本をたくさん読ませてはいけない

読書好きな子は、日頃から文字に触れているので、国語が得意と思われがちです。

しかし、読書が好きな子は物語の展開、ドラマ、スリルを楽しんでいて、文章を一字一句きちんと読んでいないことがあります。ストーリーを追うことが楽しくて、「ナナメ読み」をしているのです。

けれども、そういう読み方をしていると、国語の成績は上がりません。なぜなら、国語のテストでは、言葉の意味やディテール(詳細な情報・状況)を聞いてくるからです。つまり、精読する力が求められているのです。

大人の多くは、「子どもがたくさん本を読むことはよいことだ」と思っています。そのため、読書をしている子どもが「もう一冊読み終わったよ!」と報告してくると、「あら早い! もう読んだの? すごいね!」とほめてしまいます。

ほめられると子どもは嬉しいので、「もっと早く読んで、お母さんを驚かせよう!」と、どんどん「精読」から離れて「ナナメ読み」へと走ります。私は、こういったことが子ども達の国語力を低下させている原因のひとつだと感じています。

今の子育ては、「早く、たくさんやること」が評価されがちです。しかし、「早くできたこと」「たくさんできたこと」ばかりをほめると、「適当でいいからパパっとやっちゃおう」と、子どもは勘違いしてしまうのです。

「たくさん読む」よりも「じっくり読む」

読書はたくさんしているのに、国語の成績が上がらない子は、普段の読書のナナメ読みのクセがとれず、精読できていない傾向にあります。そして、飛ばして読んだ部分を自分の想像で埋めて、問題を解こうとします。こうなると、設問者の意図を汲み取れず、正解できないのです。

学校でも夏休みに「本を10冊読みましょう」という宿題を出す先生がいます。本を読むと、いろいろな世界を知ることができるので、良い面もありますが、精読力の観点でみると、本の冊数はあまり重要ではありません。

極端な話、10冊の本をナナメ読みするくらいなら、1冊の本をじっくり何度も読み込んだ方がいいと思います。

私はジュール・ベルヌの『海底2万マイル』という本が大好きで、小学校時代、それこそ本がボロボロになるまで何回も読んだものです。そうやって読んだ本は、何十年経った今でもその内容を詳細に思い出すことができます。

国語力を伸ばすには、親の関わりが不可欠

「国語力」は、どれだけ言葉を知っているかで差が出ます。言葉の意味を知らなければ、文章も問題文も読めません。そういう点では、成熟度の高い子の方が国語に強いといえます。

国語力をつけるうえで最も大切なことは、「親子の対話」です。国語が得意な子の共通点のひとつとして、親子でよく会話をしていることが挙げられます。また、こういった家庭の親は、相手が子どもだからといって、易しい言葉で話をするのではなく、大人と同じように難しい言葉を交えながら子どもと会話をします。そうやって、大人と同じ扱いをすることで、子どもはたくさんの言葉を覚えていきます。

テレビでニュースを観るときに、ただ観るのではなく「これってどう思う?」と子どもの意見を聞いたりするのも良いでしょう。ニュースには貧困問題やいじめ、虐待など、子どもに見せたくないショッキングな内容もあります。しかし、子どもの国語力を伸ばしていきたいのなら、そうした現実もしっかり教えてあげることが大切だと思います。

親が「うちの子はまだ小学生だから」と大人の世界から遠ざけてしまうと、子どもはファンタジーの世界から抜け出さず、成熟していきません。わが子を箱に入れて「腫れものに触れさせないようにする」のではなく、ありのままの現実を大人の言葉で教えてあげることが肝要です。

子どもの国語力は、家庭で育まれていきます。言葉の意味が曖昧なまま、たくさんの本を読ませても国語力は伸びません。子供にたくさんの本を与えるよりも、たくさんの言葉を投げかけてあげましょう。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

合わせて読みたい