教育資金の増やし方(後編) ―― FPに聞く中受と教育費のキホン

専門家・プロ
2019年5月28日 佐藤あみ

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※この記事は、情報を刷新・再編集のうえで再監修を受けた最新版を公開しています。

前回の記事『教育資金の増やし方(前編)』では、収入を増やしたり支出を減らしたりすることで、教育費を家計からどう捻出するかについて考えてきました。今回は、最もまとまった金額を必要とする大学費用の準備に向け、「保険」と「資産運用」による教育費の増やし方を、教育資金設計等のコンサルティングを行うファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに伺います。

「学資保険」で備える

「昔は教育費の準備といえば『学資保険』というくらい、大多数の家庭が加入していました。ですが、いまは教育費を貯蓄している家庭の3~4割しか学資保険に入っていないようです」と竹下さん。その理由は、「運用の利回りが以前より低いため」だといいます。

満期を18歳に設定すると、AO入試や推薦入試で合格した際、子どもの誕生日によっては満期金・祝金等のタイミングが間に合わないこともあるといった事情もありますが、3~4割の家庭が加入しているように、いまだ根強い人気があるのも事実です。

「学資保険は目的が“教育費”と明確かつ確実です。そのため、住宅ローンの支払いが苦しくなったときに、つい使ってしまうなどのリスクが低いのがポイントですね。また、契約者である親に万一のことがあっても、保険料を支払いが免除になりながらも祝金・満期金等はそのまま受けとれるメリットもあります」(竹下さん)

中学受験で塾に通い始める10歳までといった短期間で払い終えるプランもあるので、家庭の状況に合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

学資保険のメリット

  • 教育費という目的が明確
  • 契約者(親)が死亡しても教育費を用意できる(保険料支払は免除)
  • 一般的に普通預金より増える
  • 保険料控除の対象

学資保険のデメリット

  • 途中で換金すると払った保険料の9割程度の解約返戻金しか受け取れない
  • 保険会社の倒産リスクがある
契約可能年齢 <子>0~6歳※
<契約者>男性18(16)歳~67歳※
受取総額 40~500万円程度※
保険料払込免除 あり(原則)
払込方法 年払・半年払・月払など
満期 17歳・18歳・20歳・22歳など

※保険会社・プランにより異なる

「終身保険」で備える

教育費に「終身保険」と聞くと意外ですが、竹下さんによれば最近は人気があるのだとか。というのも、終身保険の一種である「低解約返戻金型終身保険」は、保険料払込期間を短くすることで学資保険の代わりになるからです。

「学資保険との大きな違いは、自分の希望のタイミングで換金できるところ。AO入試や推薦入試の合格が出たタイミングで解約すれば保険を現金化できます。また、そのまま解約しないでおくと返戻金は増えていくので、教育費で使わなくなれば、住宅ローンの返済や老後資金にあてることができるという魅力もあります。ただ、保険料払込期間中に解約してしまうと、最悪の場合、返戻金が払った保険料の7割程度まで下がってしまい、元本割れどころか大きな損になりかねないというデメリットもあります。途中解約にならないよう、家計に無理のない保険料負担のプランにするなど、利用には注意が必要です」(竹下さん)

途中解約した場合のリスクを把握したうえで計画的な活用ができれば、低解約返戻金型終身保険のメリットも少なくなさそうです。

低解約返戻金型終身保険のメリット

  • 解約しなければ解約返戻金が増えていく
  • 同じ保険料水準であれば、契約者死亡時の保障が学資保険より手厚い
  • 保険料控除の対象

低解約返戻金型終身保険のデメリット

  • 保険料払込期間中に換金すると7割程度の解約返戻金しか受け取れない
  • 教育資金として使うには、解約時期の見極めが重要
  • 保険会社の倒産リスクがある
契約可能年齢 15~75歳程度(プランにより異なる)
保険料払込免除 あり。特定疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)により所定の事由に該当した場合、以後の保険料の払い込みは免除され、そのまま保障が継続する保険会社・プランもある。
保険金額 200万~5億円程度(保険会社・年齢により異なる)
受取総額  保険金額の1割増程度(保険料払込満了から3年経過時点の解約時)
払込方法 年払・半月払・月払など
払込期間 短期払(10年・15年・20年払済)、50~80歳払済(5年刻み)、終身払など

「資産運用」で増やす

保険に比べて高い収益を期待できるのが、株や投資信託などの「資産運用」。最近耳にすることが多い「NISA(ニーサ)」は、それらの運用益や配当金が一定額非課税になる制度のことで、教育費を増やすのにも便利なものです。

いくつか種類のあるNISAのなかでも人気が高いのは、2018年に始まったばかりの「つみたてNISA」。年間40万円までの運用益が20年間非課税となる制度です。竹下さんによれば、「長期投資に適しているので、子どもが小さいうちに始めるほどおすすめ」だといいます。

また、子ども名義で行える「ジュニアNISA」も、教育費のための資産運用にはおすすめ。こちらは、年間80万円までの運用益が最長5年間非課税になります。

「ただ、18歳になるまで払い出しに制限があるので、学資保険と同様にAO入試や推薦入試合格などによる、早い時期の入学金納付には間に合わないことがあります。子どもの誕生日も念頭に置きながら家庭に合ったものを検討しましょう」(竹下さん)

さらに、「子どもが大学生になるころに親の年齢が60歳を超えるといったご家庭の場合は、『iDeCo(イデコ)』も視野に入れておく手も」と竹下さん。iDeCoもNISAと同様に、投資による運用益が非課税になる制度です。ただ契約者が60歳になるまで引き出すことができません。上述の対象になる家庭であれば選択肢のひとつに加えられます。

資産運用は、始める時期や年齢によって適したものが変わってくるので、それらを踏まえてベストな制度を選びましょう。

NISAとiDeCoの違い

  NISA ジュニアNISA つみたてNISA iDeCo
利用対象者 20歳以上 0~19歳 20歳以上 20歳以上60歳未満
節税メリット 運用で得た利益は非課税 運用で得た利益は非課税 運用で得た利益は非課税 掛金が全額所得控除。
運用で得た利益は非課税。
受け取り時に控除。
投資方法 制限なし 制限なし 定期的・継続的に積み立てる 毎月一定額を積み立てる
非課税対象 株や投資信託 株や投資信託 所定条件を満たした投資信託 株式や債券、投資信託、定期預金など
年間の投資額上限 120万円 80万円 40万円 加入する人の職業によって異なる
非課税期間 最長5年 最長5年 20年間

今回は保険と資産運用を活用して教育費を増やす方法を考えました。どちらを始めれば良いのか悩む人も多いと思いますが、竹下さんいわく「メリット・デメリットがあるので、迷ったら両方始めるといいでしょう」とのこと。教育費にあてられる額を半額ずつ投資することで、確実性と収益性の両方を期待できます。賢く教育費を増やして、準備をしたいですね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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