連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験 苦手を挽回するのに必要なステップとは|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年6月20日 石渡真由美

中学受験は国語・算数・理科・社会の4教科の入試の総合点で合否が決まります。そのなかには、子どもが苦手とする教科もあるでしょう。しかし、何かの教科が苦手と思い込んでいても、本当に苦手なのは一部だけかもしれません。今回は苦手の克服法について解説します。

誰にでも苦手単元はある。まずは何が苦手かを突き詰める

一般的に中学受験に必要な教科は、国語・算数・理科・社会の4教科です。入試ではこの4教科の総合点で合否が決まるため、保護者としては「どの教科も得意であってほしい」と願いますよね。しかし、どんなに成績優秀な子でも、全教科が得意という子はあまりいません。

例えば算数ならいつも高得点が取れるのに、国語は平均点以下。でも、理科と社会はそこそこに取れているので、合格ラインはクリアしている。こうしたデコボコは誰にでもあるものです。

テストで点が取れないと、「僕は国語が苦手なんだ……」と思い込み、国語=苦手科目となってしまいがちです。しかし、ひとくちに国語といっても、そこに求められる力は多岐に渡ります。

一般的に国語のテストは、漢字・語句といった言葉に関する問題と、登場人物の心情などを問われる物語文、筆者の考えを聞かれる論説文の3つの大問で構成されています。このなかで言葉に関する問題はできているのに、物語文や論説文ができていないという場合は、読解力の不足が考えられます。あるいは、物語文を読める子でも、論説文が苦手ということもあるでしょう。

算数にもいくつもの単元があります。このなかで図形を苦手とする子は多いものです。そういう子は「私は図形が苦手だ」と思い込み、図形を見ただけで拒否反応を示す子もいます。しかし、そばについて見てあげると、「面積を求める問題はできている。ただ、相似が苦手なようで、どこが相似なのかが見えていない」といったことがわかります。

このように、ひとくちに苦手科目といっても、そのなかのどの分野が苦手で、さらにどの問題が苦手かまで突き詰める必要があるのです。

「がんばってできた」という体験が自信をつける

苦手をとことん突き詰めていくのには、根気がいります。しかし、そこは親御さんもしっかりサポートしていただきたいと思います。苦手を細かく分析して、どの分野のどんな問題が苦手かがわかれば、あとはそこを強化していけばいいだけの話です。ただ漠然と苦手意識を持ち続けながらあれこれやらせるよりも、早く解決できます。

苦手分野はたいていの場合、数をこなしていくことで克服できるようになります。ただし、このときに気をつけなければならないのが、はじめは簡単な問題から取り組ませるということです。

ひとつ問題が解けたら、「あら、できるじゃない?」と笑顔でほめてあげましょう。すると、子どもは「あれ? できたぞ」と嬉しい気持ちになり、次に少し難しい問題を出してみても、「よし、解いてみるぞ!」と挑戦する気持ちになります。こうやって少しずつ難度を上げ、自信をつけさせてあげることが大事です。

とはいえ、いくらやっても理解できないという場合もあります。例えば算数でいうなら、比や割合といった単元が苦手な子は少なくありません。比や割合は算数入試で必ず出題される重要単元です。しかし、これらは抽象的な概念の理解が必要なため、それがまだできない幼い子に理解をさせるのは難しいのです。

こうした単元はしばらくするとまたテキストに繰り返し登場するので、「どうしても今は理解ができない」という場合は、脳の理解が追いつくまで待つしかありません。無理にわからせようとして、わからない問題を与え続けると、「どうぜ僕には解けないんだ。僕はダメな子なんだ……」と自己肯定感を下げてしまう恐れがあるからです。中学受験では、この自己肯定感を下げないことが最も大事なのです。

苦手克服に一番必要な力は「粘り強さ」

苦手克服は、「どの分野のどんな問題が苦手か」という点検から始まり、それを克服するために簡単な問題から少しずつ自信をつけさせ、徐々に難しい問題も解けるようにしていく、といったように時間がかかります。

しかし、6年生の夏前までは、授業で新しい単元をどんどん習っていくので、苦手を振り返っている時間がありません。そこで活用したいのが夏休みです。夏休みは苦手を克服する絶好のチャンスです。ただ、たくさん時間があるように見える夏休みも、始まるとあっという間に終わってしまいます。

ですから、夏休みに入る前に、親子で苦手の点検をしておきましょう。苦手分野の点検は模試の分析表を見れば一発です。それを見ながら夏休みに苦手克服計画を親子で立ててみるのもよいでしょう。

苦手と向き合うことは大人でもしんどいものです。子どもならなおさらでしょう。しかし、ここで逃げていては先には進めません。しんどいと思っても、コツコツとやっていくしかないのです。

苦手克服に最も必要な力は「粘り強さ」です。できることから少しずつ難度を上げることです。「ここまでできたらもう大丈夫!」というところまで追って、自信をつけさせてあげましょう。ここで自信をつけさせると、入試本番で大きな力に変わります。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。