連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験 大手進学塾に通うメリット・デメリット|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年10月17日 石渡真由美

中学受験をしようと思ったら、まず大手進学塾に通うことを検討するご家庭が多いのではないでしょうか。なぜなら、ほとんどの子が大手進学塾に通っているからです。では、人はなぜ大手進学塾を選択するのでしょうか? 今回は大手進学塾に通うことのメリットとデメリットをお伝えします。

【メリット】レベル別のクラス設定と、実力にあった授業

大手進学塾に通うことのメリットは、次の3つが挙げられます。

  1. レベル別クラスの設定により自分の実力にあった授業が受けられる
  2. 生徒や卒業生の母数が多いのでデータが豊富
  3. テキストや施設などのハード面が充実している

詳しく説明をしましょう。

まず、大手進学塾は一学年に複数のクラスがあり、成績別で分けられます。そのため、自分の学力と同じくらいの生徒が集まるクラスで授業を受けることができます。しかし、塾や校舎によっては2クラスしかなかったり、20クラス以上もあったりすることがあります。

クラスが少ないと、学力による細分化がきちんとできていない場合もあるので、あまり意味がありません。逆にクラスが多すぎると、わずかな点数の差でクラスが変動します。クラス変動をゲーム感覚で楽しめるようなタフな子に向いていますが、ストレスに感じる子どももいます。

また大手進学塾では、各塾でオリジナルのテキストを作成しています。どの塾もテキストの中身はよく研究されていて、それに沿って進めていけば、中学受験に必要な範囲をモレなく学習することができます。週ごとに授業の理解度を測る小テストがあったり、クラス分けの判断となる組分けテストがあったり、志望校に合格する可能性がどのくらいあるかを知る模試があったりと、カリキュラムがしっかり組み込まれています。

学校情報が豊富でハード面で充実している

大手進学塾は生徒、卒業生の数が多いので、各学校の情報が豊富です。そのため、御三家をはじめとする難関中学に特化した志望校特訓講習なども用意されています。この講習に通うことが難関校合格の近道と信じられていることも、難関校を狙うご家庭が大手進学塾を選択する理由のひとつになっているようです。

さらに大手塾は駅前の便利な場所にあり、建物も立派なビルであることが多く、教室は清潔です。個人塾などではトイレが一つしかないところもありますが、大手進学塾では男女別にトイレがあります。また、ちゃんと塾に行ったかどうかの安否確認システムを導入していることが多く、親としては安心して通わせることができます。

【デメリット】担当につく講師が一流とは限らない。異動も多い

では、デメリットはあるのでしょうか?

大手進学塾は生徒数が多ければ多いほど、クラスの数も増えていきます。クラスの数が増えるということは、その分、先生の数も必要になります。しかし、先生の数が増えれば、指導力もまばらになります。例えば野球の選手にも大リーグで活躍するようなトッププロから、国内の一軍選手、二軍選手がいるように、同じ塾の先生でも指導力に差が生じてしまうということです。

多くの塾にとって最も大事なことは、「難関校に何人の生徒を合格させたか」という実績です。そのため難関校に合格できそうな優秀な子が集まるトップクラスには、その塾で一番優秀な先生が指導にあたります。つまり下のクラスになるほど、ハズレの先生に当たってしまうリスクが高いということです。

ただ、子どもにとって“いい先生”は、必ずしも優秀な先生とは限りません。講師経験が浅く、教えるのはあまり上手くはないけれど、子どもとの相性がいい先生もいます。そういう先生にめぐり会うと、その先生に認められたいという気持ちから頑張る子もいます。ですから指導力だけが“いい先生”の指標というわけではありません。

しかし、大手進学塾の先生には異動があります。また、クラス替えも頻繁に行われます。そのため、せっかく相性のいい先生にめぐり会えても、ずっと教えてもらうことができない可能性もあります。

成績によるヒエラルキーができやすい

首都圏の一部の地域では、今や4人に1人が中学受験をするといわれています。その多くは大手進学塾に通います。首都圏の四大塾といえば、サピックス、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーですが、中学受験をする子が多い地域では、同じ小学校の生徒が多数在籍しているということが起こります。そのような場合、友達同士でおしゃべりをするなど緊張感に欠けてしまうということがあるかもしれません。しかし、受験は自分との戦いです。仲のいい友達とおしゃべりを楽しんでいては、成績は伸びていきません。

また、同じ塾に通っていると、「あの子はトップクラスにいて、あの子は一番下のクラスにいる」などの情報が飛び交い、同じ学校内で成績によるヒエラルキーができやすいというデメリットがあります。大手進学塾で輝けるのは、トップクラスにいる成績がいい子です。下位クラスにいると、「どうせ僕は勉強ができないんだ……」と自己肯定感が下がってしまうことがあります。

大手進学塾に通う際には、メリットの一方でこうしたデメリットがあることを知っておいてほしいと思います。大手進学塾でグングン伸びていく子もいれば、成績が伸び悩んで勉強嫌いになったり、劣等感をつのらせてしまう子もいます。中学受験の塾選びは、お子さんの学力と性格を照らし合わせて、じっくり検討しましょう。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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