中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

半年間成績が上がらないなら要検討。転塾をするなら5年生の7月までに決断を|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2021年5月26日 石渡真由美

まじめに塾に通っているのに、一向に成績が上がらず、子どもが塾に行きたがらない。そんなお悩みを抱えてらっしゃる親御さんは多いはず。そんなときは一度冷静になり、今の塾のままでよいのか考えてみる必要があります。では、転塾する際にはどんなことに気をつければいいのでしょうか。

成績不振を放置している塾に注意

中学受験の勉強がスタートしたときはみなさん、「この塾に入試までお世話になるんだな」と思っていたことでしょう。ところが、いざ塾生活が始まってみると「塾の授業についていけない」「塾の先生と合わない」など、うまくいかないケースも出てきます。そんなときに考えるのが転塾です。

転塾を考える主な理由は、次の3つです。

  1. 成績不振
  2. 塾の先生と合わない
  3. 塾の友だち関係のトラブル

中学受験における塾の役割は、勉強を教えること。つまり塾にとっては授業が商品です。大手塾の授業は、成績優秀な子を難関校や上位校に合格させるための内容になっています。そのため多くの子にとって、難しく感じるものです。高度な授業になんとかついていければいいのですが、どう頑張ってもついていけない場合は、そもそも通っている塾のレベルと本人の実力とが合っていないので、転塾を考えた方がいいと思います。

入塾してからずっと下位クラスのままで成績が変わらないのであれば、思い切って転塾することも選択肢のひとつです。見極める基準は半年間。半年間まったく成績が伸びずにずっと下位クラスにいるのに、教師からのフォローが全くないならば、転塾をした方がいいでしょう。なぜなら、何のフォローもないその塾はお子さんの成績を上げようという熱意に欠けるからです。生徒一人ひとりを大事にする塾なら、なんらかの対応をするでしょう。熱意のある塾ならば一定期間生徒の成績が伸びない場合、親子で面談をし、何が原因で成績が上がらないか、どんな対策をすれば成績が伸びていくかを一緒に考え、授業の受け方や家庭学習の取り組み方について話し合うと思います。こうした姿勢がまったく見られない塾では、お子さんの成績向上は見込めないでしょう。

意外と重要な先生との相性。女子は派閥や成績ヒラルキーで悩むことも

転塾を考える一番の理由は、「成績が上がらない」「授業についていけない」といった成績不振によるものですが、意外と重要になるのが塾の先生との相性や塾の環境です。

たとえば成績はいまひとつでも、わからないことがあったらすぐに質問ができる先生がいたり、誰もが質問や相談をしやすい環境であったりすれば、お子さんの成績は伸びていくでしょう。ところが大手塾の場合、おおむね月1回のペースでクラス替えがあります。先生が固定されないため、先生との距離感を縮めることができないこともあります。そのため消極的でおとなしめの子は、先生に質問したくてもできないことがしばしばあります。

同じことは保護者にも言えます。積極的に何でも相談できる親御さんならいいのですが、「こんなことを聞いていいのかしら?」「先生のご迷惑にならないかしら」と、遠慮がちに考えてしまう親御さんは、塾を活用することができず、大手塾に通わせる効果は低くなります。

また、親御さんは知らないことも多いのですが、友達との人間関係のトラブルで塾に行きたがらないお子さんもいます。特にこの年頃の女の子は、グループの派閥対立があったり、仲間外れをしたりすることがあり人知れず悩んでいるケースもあります。また、大手塾を中心に中学受験塾には成績ヒエラルキーというものが少なからず存在するので、上のクラスの子が、下のクラスの子をバカにしたりすることも珍しくありません。こうしたことにいち早く気づけるように、親御さんはお子さんの様子を注意深く見てあげてほしいと思います。

大手塾から大手塾の転塾はあまり意味がない

転塾の目的は今の悪い状態から脱して、良い状態へと変えていくことです。よく大手塾から大手塾へ転塾される方がいますが、私は、あまり効果がないと思っています。なぜなら大手塾の学習カリキュラムは、どこの塾でも教材とテストで成績を伸ばしていくというやり方だからです。そのやり方についていけない子だと、別の大手塾でもついていくのは大変になるでしょう。

大手塾のカリキュラムについていくために、その系列の個別指導塾をすすめられることがありますが、ただでさえ大手塾に通うことでお金がかかっているのに、さらにお金がかかるのは何だかおかしな話ですし、時間が余計に取られて、かえって充分な復習ができなくなってしまうので、あまりおすすめしません。なんとしても最難関校に入れたいというのであれば、お目当ての学校の対策講座がある大手塾に通う価値はあると思いますが、そうでない場合は、そこまで大手塾にこだわる必要はないと思います。

大手塾でうまくいかなかったのであれば、生徒一人ひとりに目が届く中小塾・個人塾へ転塾した方がいいでしょう。中堅校狙いであれば、地元の塾の方が卒業生を多く輩出していて、情報に詳しいし、しっかり対策をしてくれるからです。ただし、中小塾・個人塾は良くも悪くも塾長をはじめとする先生のカラーが出ます。そのため、先生との相性をきちんと見極めていく必要があります。

転塾をするなら授業体験と面談を

転塾をする際は、必ず体験授業をしましょう。授業を見せてくれない塾は論外です。できれば、親御さんも一緒に授業を見学して、授業の難易度や先生の教え方、クラスの雰囲気を見比べましょう。必ず面談もしてください。忙しそうだからとか、図々しいかしらなどと遠慮する必要はありません。その際、どういう理由で転塾を考えているか、きちんと先生に伝えましょう。面談では、その塾が現状に対してどういう対応をしてくれるのか聞いてみてください。そして的確にアドバイスをしてくれる塾を選びましょう。

たとえば転塾先の塾と、今通っている塾でカリキュラムの進度が異なるケースはよくあります。そういった状況を踏まえて、「うちの塾は今、ここまで学習しています。ヌケがあるようでしたら、ここまではやって来てください」などと、具体的に指示をしてくれる塾は、比較的信用のおける塾だと思います。抜けている単位があれば、そこを家でちゃんとやってから転塾をするようにしましょう。

転塾を考えているのなら、5年生の7月までに決断をしましょう。5年生の夏休みは、どこの塾もそれまで習ったことの復習をするので、抜けている単元を勉強することができますし、新しい塾のペースをつかむこともできます。塾に馴染むまでには、それなりに時間がかかるので、できれば6年生になる前に転塾をしておいた方がいいでしょう。

一番避けたいのは、安易に転塾をくり返すケースです。いくつかの大手塾を渡り歩いた後、中小塾に転塾してくるご家庭がありますが、残念ながらそういう子はなかなか伸びていきません。転塾はお子さんにとっては大きな負担になりますので、親御さんはできる限り早い段階で、転塾すべきかどうかについてしっかりと向き合ってください。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。