中学受験ノウハウ 学習 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験では算数が得意な子は有利か|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年1月13日 石渡真由美

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中学受験ではよく「算数が得意な子が有利」と言われます。確かにひと昔前までは、そのような傾向がありました。しかし私は、近年は「一概にそうとも言えない」と感じています。その理由は、入試問題の変化にあります。

積み重ねが大事な算数

中学入試で主流の4教科型試験は、国語・算数・理科・社会の総合点で合否が決まります。全教科が得意であれば最強ですが、挑戦するのはわずか12歳の小学生ですから、得意教科があれば、苦手教科もあるというのが普通でしょう。

「中学受験は算数が得意な子が有利だ」とよく言われます。ご存じの方も多いと思いますが、中学受験の算数は、小学校で習う算数とは内容も難しさもかけ離れています。「受験の対策には通塾が必須」とされるのは、この受験算数に特化した内容を学ぶためといっても過言ではありません。

実際にほとんどの塾の授業でも、算数に多くの時間を割いています。算数は積み重ねが大事な教科だからです。そのため、できる子とできない子の差がつきやすい教科でもあります。特に受験算数の場合、数に対する抽象的な概念の理解が必要で、その理解の度合いには、子どもの成長も大きく影響してきます。このように、算数は子どもによって点差がつきやすい教科です。そのため算数が得意な子は受験に有利と考えるのは、間違ったことではありません。

また、算数は他教科と比べて一問に対する配点が大きいというのも、点差が開く要因になっています。知識問題も出題される理科・社会では、1問の配点が2〜3点ですが、算数は4〜5点、記述式を採用している学校の場合、問題によっては10点というものもあります。そのため1問のミスが合否に大きく響いてしまうのです。各学校が出している合格者平均点と受験者平均点の差を見てみると、実際に算数における点差は他教科に比べ大きく開いているケースがほとんどです。中学受験で「算数が得意な子が有利」と言われてきた理由にはそうした背景があります。

「算数だけが得意」には要注意

ところが、近年は「算数が得意な子が有利」と一概に言い切れない状況になっているのです。そこには、入試問題の変化があります。変化があったのは、10年ほど前からです。それまでの中学入試は、点差がつきやすい算数が一番難しく、ほかの教科はやや易しめの傾向がありました。特に男子難関校の算数は、飛び抜けて難しい問題が出題され、まさに算数が得意な子ほど有利という構図になっていたのです。

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宮本毅

宮本毅

  • 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

石渡真由美

  • この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。