中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験で子どもが精神的に疲弊している? 見逃せない5つのサイン|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年2月10日 石渡真由美

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わが子のためを思って挑む中学受験。しかし当の子どもは、「勉強がつらい」「もう嫌……」と思っていることもあります。そういった状態で中学受験勉強を続けると、子どもから疲弊のサインが出かねません。お子さんの受験をサポートする親御さんは、この徴候を見逃さないでください。

中学受験は特殊。SOSを見逃さないで

わが子のやりたいことは応援し、やりたくないことは無理にやらせたくない。多くの親御さんはそう思っていることでしょう。たとえば、嫌がる子どもに無理やりバンジージャンプをさせる、なんてことはしませんよね。ところが、なぜか中学受験の場合、「この子の将来のため」「教育だから」という理由でOKになってしまう。

少子化で子どもが減っているにもかかわらず、都市部を中心に中学受験者数は増加傾向です。「まわりの子がみんな受験をするから」「うちの子だけしないのは将来的に不利になるのでは」「大学入試改革でこの先が不安」などの理由で、中学受験を選択する家庭は増えています。もちろん、こうした考えもわが子を思ってのことでしょう。

私自身、中学受験経験者で、その指導をしているくらいですから、中学受験の良さは十分に理解しています。他方で、デメリットも実感しています。中学受験はわずか10〜12歳の子が挑戦する特殊な受験です。子どもの成長速度には、個人差がありますから、精神的に未熟な子もいます。そういった子が毎日のように塾に通い、目標を持って日々努力を続けるのは、並大抵のことではありません。

幼い子の受験をサポートし、中学受験をやり抜くには、親御さんにも相応の覚悟や勇気がいるものです。

「子どもから『中学受験をしたい』と言い出したので始めた。だから頑張ってもらわないと……」

そのように言う親御さんがいますが、私のこれまでの経験から言って、本当に自分の強い意思で「中学受験をしたい!」という子はごくわずかに感じます。たいていの場合、「仲の良い友達が塾に行くから」「みんながするから」のような、子供らしい単純な理由で中学受験勉強を始めるものです。また、親御さんは無自覚かもしれませんが、無意識のうちに中学受験をさせるように誘導していることもあるわけです。

いずれにしても、今の中学受験は親御さんが思っている以上にハードなのは確かです。だからこそ、親御さんは子どものSOSを決して見逃さないでほしいのです。

子どもが精神的に疲弊している5つのサイン

一般的に中学受験の準備は、塾の受験カリキュラムがスタートする小学4年生(2月)から始まります。4年生のうちは、基礎的な内容が中心となるので、極端に落ちこぼれてしまうことはあまりありません。

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宮本毅

宮本毅

  • 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

石渡真由美

  • この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。