中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

子どもが丸付け、解き直しをしたがらない要因と対策を考える|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年6月09日 石渡真由美

問題を解きっぱなしで、丸付けも解き直しもしない。それで勉強をやったつもりになっていとしたら、要注意です。子どもが丸付け、解き直しをしたがらないのはなぜか、どんなアプローチが有効なのか、今一度考えたいと思います。

成績のいい子たちは、自分の“出来”が気になる

勉強に丸付けと解き直しは不可欠なのですが、多くの子は丸付けをしたとしても、答えを見て書き写すだけで、やった気になっています。なかには丸付けもしないで、やりっ放しの子もいます。そういう子はたいてい成績が伸び悩んでしまいます。

一方、成績のいい子たちは、ごく普通に自分で丸付けをし、解き直しをしています。両者の違いは何かというと、「自分に関心があるかどうか」です。成績のいい子たちは、評価に興味・関心があって、自分がどう映っているかを純粋に気にしています。

できない自分は嫌だし、もっと自分を向上させたいと思うわけです。そういう子は、自分が解いた問題が合っているか、自分の出来はどうなのかが気になります。できていれば嬉しいし、できていなければ「なんで間違えたんだろう?」と、原因を知りたがります。解きっぱなしにはしないし、解きっぱなしだと居心地が悪いのです。

丸付けや解き直しに関心が湧かないのは、なぜ?

なぜ、丸付けや解き直しに対して子どもたちの関心が湧かないのか。この点について、私が思う仮説があります。

今の世の中は、「過程重視」や、「やった事実そのものを肯定的に評価する」といった向きが強まっていて、自分の行動に対する評価を受け止める機会が減ってしまっているように感じるのです。

たとえば、学校でも保護者からのクレーム等で、運動会で順位をつけなかったり、「九九競争」を行わずに授業をしたりすることが起きています。こういった対応にメリットもあるのかもしれませんが、私は序列や順位付けというものに対して耐性を無くしてしまう、デメリットのほうが大きいように感じるのです。もちろん、序列で人の価値を決めることには反対です。しかし、頑張った人が報われない社会はもっとダメだと思います。

「過程重視」「やった事実そのものを肯定的に評価する」とは、わかりやすくいうと、「その子なりに頑張って勉強している姿勢が見えるし、それでOKじゃないか」といったスタンスです。この考え方があまりに行き過ぎると、他者からの評価や結果に対する関心が薄れてしまうように思えます。私はこうしたスタンスのやり過ぎが、子どもたちを丸付けや解き直しから遠ざけている一要因になっていると思っています。

そもそも勉強とは何か。「知識を覚えること」「問題を解くこと」など、多様な考え方があるでしょう。たしかに、これらも勉強です。しかし、勉強の本来の意味、醍醐味は「わからないこと」が「わかるようになる」ことにあるはずです。

丸付けをする、すなわち自分の解いた問題を点検することで、わかっていることと、わかっていないことを分別し、わかっていないことは解き直しでわかるようにしていく。その積み重ねで、学力、自信、やる気が上向いていきます。これは何も勉強にかぎらず、スポーツでも、その他の習い事でも同じです。

逆にいうと、こうした手順にいつまでも無関心だと、本質的な学力向上は、なかなか望めないということです。実際、楽しいだけの実験教室に通ったり、学習パフォーマンスで生徒を引き付けるだけの学習教室に通ってきた生徒は、受験勉強が本格化してくる小5の理科や算数で理解が追いつかずに挫折を味わったり、社会で一向に暗記に対して前向きになれなかったりして、成績が頭打ちになってしまう傾向が非常に強い。ですから、今よりも成績を上げたいというのならば、丸付けと解き直しにやる意味を感じ、習慣化することが大事なのです。

やって、できた実感を与えてほしい

当然ですが、自分で丸付けと解き直しができる成績のいい子たちも、はじめから自分の力だけでやれたわけではありません。どんな子も、最初は大人の手助けが必要です。ですから、問題を解いた後には、必ず丸付けをし、解き直しをするよう促すこと。また、何のためにそれが必要なのか、粘り強く子どもたちに伝えることが大事だといえます。

私が思うに理想としては、小学2年生くらいまでに、ある程度自分の力で丸付けと解き直しができるようになっているとよいと思います。しかしながら多くの子が、丸付けや解き直しの意味を感じられず、その習慣もないまま、中学受験塾の過密なカリキュラム下で勉強を始めてしまいます。

こう言うと、「うちの子はもう手遅れってこと……?」と、ナーバスになる方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありません。ただし、今まで丸付けや解き直しを全くやってこなかった子が、習慣化まですぐにたどり着けるケースはごく稀です。個人差もあるでしょうが、やり始めてから少なくとも1カ月くらいは、親御さんが粘り強く見てあげる必要があると思います。

その際、重要になるのが親御さんの声かけや行動です。「問題を問いたら、丸付けをした後、できていない問題を解き直すのが当前なんだよ? できる子は皆やってる。だから、ちゃんとやらなきゃ!」などと、言い放っただけでは、ほぼうまくいきません。

はじめのうちは、「丸付けできたかな? どう?」と、まずは丸付けを促すところからやる必要があります。それができたら「お、できたじゃん!いいね」と褒めてあげる。その後、できない問題を解き直して、正解にたどり着いたら、「やったね、やるじゃん!」と、大いに称えることも必要です。このように段階を踏んで、ミクロな視点で寄り添うことが大事です。この時、「丸付けをして、解き直しして、できるようになったね。今の気分はどう?」など、お子さんに問いかけてみるのも有効でしょう。

こうやって粘り強く丸付けと解き直しを促して、できた実感を与え、達成感を覚えさせることが重要です。これが子どものやる気につながります。こうした経験を積み重ねて、「わかるって楽しいかも……」「できなかったことができるようになると、気持ちいいな」と思えるようになって、ようやく丸付けと解き直しの習慣化に兆しが見えはじめます。こうして、子ども自身でできるようになってからが、次のステップです。親御さんは徐々に手を離し、お子さんを信頼し、見守る姿勢に変えていきましょう。

中学受験で丸付け(点検)と解き直し(リトライ)ができるようになることは、決して入試合否を左右するだけのものではありません。中学に入ってから、能動的に勉強ができかどうかにも関わります。もっと言うと、実社会に出てからも役立つ重要なスキルです。プレゼンの資料を自己点検して、練り上げたうえで上司に提出しなければ、やり直しを命じられるだけでしょう。もっと悪い場合には、別の誰かに仕事を振られてしまうかもしれません。自己研鑽できない人は、ビジネスチャンスもどんどん小さくなってしまいます。自分の現状を知り、足りていないところは何が原因で、何が不足しているかを考え、対策を練る。中学受験で身に付けるセルフチェックの習慣は一生ものの力になると私は考えています。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。