中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

塾の授業を集中して聞くためのコツは?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年7月07日 石渡真由美

塾に通っているのに、成績が一向に上がらない。もしかすると、その原因は授業をただ聞いているだけで、内容を理解できていないことにあるかもしれません。どのような姿勢で授業に臨めばよいのでしょうか? ご家庭でできることとは。

授業に集中できない子をフォローできない塾の事情

よく「うちの子、塾に通っているのに、成績が全然上がらないんです。どうしたらいいのでしょうか?」というご相談を、親御さんから受けます。

前提として、塾の授業をきちんと聞いていない子は、成績が上がりません。ここでいう「聞く」とは、「ただ聞く」ではダメ。内容を吟味して理解することが「授業を聞く」ということです。私の塾では、1クラス10人前後なので、誰が授業をきちんと聞いていて、誰がただ聞いているだけなのかすぐわかります。ただ聞いているだけの子には注意をしたり、質問を投げかけたりして、授業に集中するように促しています。

ところが、大手進学塾のように1クラスに20人以上の子どもがいる場合、塾の先生は「ちゃんと聞いているか」のチェックをしてくれないことが多いです。なぜかというと、大手塾のカリキュラムは「この日に、この単元を教える」とあらかじめ決められているので、先生はその日のうちに授業を終わらせなければならないからです。そうなると授業に集中していない子に先生が関与できる余裕がなく、授業を聞いていない子は放置されたままになってしまうのです。

このように塾側の問題もありますが、他方では、お子さんの塾での授業の受け方を疑ってみることも必要でしょう。ただ、子どもの集中力のあるなしは、先天性によるものと、環境によるものの、おおきく2つの要因があります。先天性で集中力が持続しないという場合は、親の力、塾の力だけでは解決できないこともありますので、深刻な場合は専門家に相談してみてください。

そうではなく、なんとなく集中力が続かないという子は、授業の受け方や授業後の親御さんの働きかけで、改善できる場合があります。

環境を見直す。意外とある、授業の妨げになるもの

授業を集中して聞けない子に共通しているのは、勉強に対する興味がない、あるいは薄いことが挙げられます。そういう子は、塾にはサボらずに行っているとしても、授業の内容を音としてただ聞いているだけで、中身が頭に入っていません。

また、環境によって集中力が妨げられていることが結構あります。たとえば、女子によくあるのが、かわいい文房具を揃えてそれを授業で使うことに集中し、満足してしまっているケースです。塾では丸付けや要点をまとめるのに、カラーペンを使うことはありますが、なかには80色ものカラーペンを持って来る子もいます。ノートをかわいくしたり、装飾したりするのに忙しくて、授業中の先生の話が“うわの空”というのは、意外と女子にあるケースです。

一方、男子は机の上が乱雑すぎて、授業に集中できないことがよくあります。机の上にスマホ、ICカードのケース、大量のキーホルダーなどが置いてあって、ノートを十分に開けない状態の子も目にします。これでは授業に集中できません。塾の授業のときは、鉛筆と消しゴム、数本のカラーペン以外のものは持ってこない。授業中、机の上にはテキストとノートと筆箱以外のものは置かない。そうやって不要なものを取り除くことで、授業に集中しやすい状態になります。まずは環境から見直していきましょう。意外と侮れません。

勉強に対する興味がない・薄い子にはどうする?

勉強に対する興味がない・薄い子は、勉強に対して苦手意識を持っていることが多いです。よくあるのが、「なんでできないの?」「どうしてこんな点なの?」と親から言われ続けて、「どうせ頑張っても……」という気持ちになってしまっている子です。そういう状態であれば、「なんとかできそうだ」という感覚を持たせることと、「やればできる経験」をさせることが大事です。

中学受験の目標は志望校に合格することですが、発達の途中段階にある小学生の子どもには、遠い目標でなかなかピンと来ません。「合格に向けて頑張れ!」と言われても、何をどのように頑張ったらいいのかわからず、困ってしまうでしょう。でも、たとえば「来週の小テストで90点以上取る」という短いタームの目標であれば、子どもにもイメージしやすくなります。また、「この範囲だけ頑張れば、まずはOK」という限定的な感じにすれば、より「これなら、なんとかできそう」と思えるようになります。

そうやって、まずは「ちょっと頑張れば達成できそうな近い目標」を活用しましょう。わかりやすいのは1週間後の小テストです。そこで得点が取れれば、「自分って、やればできるじゃん!」と思えるようになります。その積み重ねで子どもは自信をつけていきます。自分に自信がつくと勉強に対する興味・関心、やる気は俄然変わってきます。「次の小テストでは100点を取るぞ!」などと自ら目標を立てて、頑張る姿も期待できます。

もうひとつ効果的な方法があります。それは塾の授業が終わったら必ず親に、その日塾で習ったことを教える、という決まりを設けることです。人に説明をするには、内容をある程度理解していなければできません。こういった決まりを設けて、それを実行できていれば、授業を聞くようになります。

お子さんに説明してもらう際は、たとえば家にホワイトボードなどを用意して、その日習ったことを簡単に説明してもらうなどの方法があります。「先生のモノまねをしながら教えてよ」などとお子さんに言って、楽しみながらやってみても良いですね。もちろん、そこまでやれない場合もあるかもしれませんから、塾のお迎えの帰り道にお子さんから説明してもらうレベルでも構いません。

ただし、どんな方法で聴くにしても、お子さんの授業話を聴く親のスタンスとして注意すべきことがあります。それは、子どもの説明がわかりづらくても、あまりうるさく言わないことです。ちょっとくらいの小言は言いたくなるかもしれませんが、基本は我慢です。

それよりも、「え!? そうなんだ!」「なるほど!そう解けばいいのね!」などと、オーバーリアクション気味に聴いてあげるほうがよいです。そうすると、子どもは気分良く教えてくれるようになります。まずは、お子さんに授業の内容を話す気持ち良さを経験させることが肝心です。この気持ちよさが、「帰ったら親に教えよう!」と、塾の授業を集中して聞こうとする姿勢につながります。

「集中する状態」がわからない子もいる? 手軽にできる1分間の集中トレーニング

さて、ここまで集中して授業を聞くためのコツを紹介しました。ただ、もうひとつ注意点があります。実は、そもそも「集中するとはどういう状態なのか」を知らない子もいます。お子さんが低学年であれば、なおさらかもしれません。そういう子に「ちゃんと集中しなさい!」と言ってもよくわからないのは、無理もありません。ですから「こういう状態って、集中している状態だよね!」という状況を意識的につくってみるのです。

その方法もさまざまありますが、私がおすすめするのは「1分間集中トレーニング」です。用意するのは10年玉1枚。それを1分以内に机の上に立ててみるのです。親子でやってみるのもいいですね。このトレーニング、手軽にできますが、やってみると案外難しくて集中力が必要です。集中状態がどんな状況かイマイチわかっていなさそうな子には、このような遊び的なトレーニングで「没頭する感覚」をぜひ味わわせてあげてください。

集中力はある日突然身につくものではありません。また、それを維持できるようになるには、トレーニングが必要です。やはり身につくまでに時間がかかります。できるだけ早い時期から集中体験、没頭体験をするようにしましょう。授業を集中して聞けるようになれば、成績は上がっていきます。成績が上がれば自信がつく。そうすれば、たとえ難しい問題を前にしても「よしやってみよう! 私なら解けるはずだ」と挑戦していくことができるのです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。