中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

過去問にはいつから・どう取り組む? 中学受験における過去問への取り組み方と親の役割|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年10月20日 石渡真由美

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中学受験において、志望校対策のために欠かすことのできない、過去問への取り組み。けれども、ただ解くだけでは大きな効果は望めません。過去問を解くことの目的、解くときの姿勢、解いた後にすべきことなど、正しく過去問に取り組む方法を具体的にお伝えします。

過去問を正しく活用するためには、親御さんの果たす役割も非常に重要です。6年生はもちろんですが、まだ過去問に触れていないであろう5年生の親御さんにも、ぜひ知っておいていただきたいポイントがあります。

まず親が過去問から志望校の入試傾向をつかむべき

小学校6年生の9月に入ると、多くの中学受験塾では「そろそろ過去問に取り組むように」と指示を出します。夏休みに総復習をした後、過去問に取り組ませるという考え自体は間違ってはいませんが、9月より早い時期からでも過去問への取り組みとしてできることはあると、私は考えています。

そもそも過去問は何のためにやるのかというと、志望校の入試傾向をつかむため、ひいてはその学校の求める生徒像をつかむためです。とすると、実はもっと早い時期から知っておいてもよいくらいです。とはいえ、お子さんには総復習を優先させたい場合も多いでしょう。そういった場合は、まず親御さんが気になる学校の過去問の研究をしてみることをおすすめします。親御さんが過去問を早く見ておくことで、その学校が知識重視なのか記述重視なのかなど、入試問題の大まかな傾向をつかむことができるからです。

過去問を研究する際は、社会の入試問題ではどんなテーマについて取り上げられているか国語の入試問題ではどんな背景の物語文を出題しているかなどもチェックしておきましょう。すると、「この学校に合格するにはここまでの知識が必要なのだな」とか、「小学生にここまで難しいテーマの問題を出すのか。もう少し世の中で起きていることを教えてあげたほうが良さそうだな」といったように、お子さんに必要な知識や伸ばすべき力が見えてきます。

過去問に取り組む順番と結果との正しい向き合い方

お子さん自身が過去問に取り組むのは、9月からで構いません。塾には併願校の過去問から取り組むように言われることも多いですが、私は第一志望校の過去問から取り組んだ方がいいと考えています。やはり、入試傾向は早くつかんでおいた方がいいからです。早い段階から過去問に取り組んでいれば、過去問を解いた結果を見て、作戦の立て直しをはかることができます。

極端な話をすれば、過去問を解いてみて、志望校を考え直したくなることだってあるかもしれません。たとえば、近年の入試では、問題文がとても長くなっています。かつては難関校だけに見られる特徴でしたが、現代の中学受験においては中堅校であっても「超長文」を出題する学校も出てきています。過去問を前にしたとき、「こんなにたくさんの文章を読むなんてげんなりする」「面倒くさい!」と思ってしまって、まったく進まないような場合は、その学校との相性を考え直したほうがいいケースもあります。入試はその学校の最初の授業のようなものです。「文章が長すぎて読むのに疲れてしまう」「難しいことばかり書いてあって、ちっとも面白くない」などと、過去問を理解しようとすることすら負担に感じるようなら、入学してからも授業についていくのが大変になる可能性はあります。

しかし、原則として、過去問の解きはじめのころは、思うような点が取れなくてもがっかりせず、まずは入試問題の傾向をつかむ。そして、足りない部分を補っていく。それが、過去問との正しい向き合い方です。過去問を解いて難しく感じられたとしても、まだ問題を解くまでの実力がついていないだけということは多いもの。特に、内容的にはまだ難しいけれど、「こういう問題は好き!」「読んでいて楽しい!」と思うことができれば、その学校や入試問題との相性は合っていると考えられます。その場合、親子で次にすべきことは、がっかりすることではなく、あと何を強化すれば合格点に届くかを考えていくことです。

過去問を解くにあたり、気をつけなければならないのは「メンタル面」です。合格点にまったく足りていない状態だと、親子で焦ってしまうかもしれません。良い点が取れれば喜び、思うような点が取れなかったらがっかりするでしょう。それは自然な反応ですが、所詮は過去の問題で、同じ問題が入試に出るわけではありません。過去問を解く目的はあくまで、その学校の入試傾向を知り、正しい作戦を立てることです。たとえば、合格点まであと30点足りなかったとしたら、どの教科であと何点取れるか、どの分野を強化すれば得点につながりそうかを考えて、作戦を立てるために過去問を利用すればいいのです。

過去問の「採点(丸付け)」に必要な心がまえと「解き直し」のポイント

過去問の結果から正しい作戦を立てるには、厳密な「採点(丸付け)」が必要です。過去問の丸付けは親御さんがやってください。子どもに任せてしまうと、どうしても甘くつけてしまうからです。塾講師の立場から言わせていただくと、親御さんの採点も若干甘いところがあると感じています。たとえば、漢字のハネなどは「ま、このくらいは許容範囲よね」と大目に見てしまう。しかし、入試とは不合格者を選ぶものであることを忘れてはいけません。

どんな学校にも、「この学校に絶対に入りたい」という子がいれば、入れてあげたいという気持ちはあります。しかし、現実には、希望者を全員入学させることはできない。だから、やむを得ず入試でふるい落としているのです。多くの希望者のなかから入試で誰かをふるい落とすためには、厳しく採点するしかありません。ですから、親御さんがお子さんの解いた過去問を採点するときは、心を鬼にしてやってください。記述問題の採点は、親では難しい場合もあるので、塾の先生にお願いすることをおすすめします。

採点が終わったら、次にやるべきことは「解き直し」です。過去問を取り組む上で最も重要なのは、この解き直しであるといっても過言ではありません。解き直しをする際には、どこで間違えてしまったのか、どうやったら正しい答えを出すことができたか一つひとつ点検していきます。理科と社会は解答を見て「ああ、そういうことか」と確認しておしまいという子が少なくありませんが、それでは解き直しをしたことにはなりません。同じ問題が入試に出ることはありませんが、たとえば3年分の過去問を解いて、「この学校は必ず近代政治の問題が出る」と発見したら、その周辺の派生事項を含めて、もう一度学習しておきましょう。特に社会の入試は先生の興味関心が反映されやすいので、過去問でよく出る分野を把握し、解き直し、周辺学習をして強化しておくことが、効果的な対策につながります。

中学受験では親が過去問を管理して子どもに渡すこと

過去問を取り組む際には、親御さんが問題用紙と解答用紙を実際のサイズに拡大コピーしてから、お子さんに渡すようにしましょう。実物と同じサイズにすることで、子どもを入試に慣れさせていくというのがその主な狙いです。実は、もう一つ理由があります。それは、子どものカンニングを防ぐためです。

ほとんどの親御さんは「うちの子に限って……」とおっしゃいますが、子どもは誰でもカンニングをします。何を隠そう私も小学校時代、よくカンニングをしていました。解答を丸写しして宿題を提出するなんて、日常茶飯事でした。ですから私は基本的に「子どもはカンニングをするもの」だと思うようにしています。特に過去問は合格点に到達できているかどうかを見るために重要なものなので、過度にプレッシャーを感じ、カンニングしてしまうケースが少なくないのです。ですから、過去問に取り組むときは、必ず年度ごとにバラバラにして、問題だけを渡すようにしましょう。そして、解答は子どもの見えないところにしまっておくか、親御さんが常に持ち歩くようにしましょう。

子どもがカンニングをしているかどうかを判別する方法は、非常に簡単です。たとえば、模試の偏差値的に合格レベルに届いていない第一志望の学校の過去問を解いたとき、はじめから点数が合格最低点に届いていれば、ほぼ確実に「やっている」と言えます。その学校の入試傾向との相性がよほどよくても、最初から合格最低点に届くことなど、ほぼあり得ません。普段の模試ではパッとしないのに、過去問になると高得点になるお子さんに対しては、過去問を順番通りにやらせず、年度をバラけさせて実施するなど、カンニングをさせないための工夫が必要です。

そして、カンニングに関しては「親が気付くしかない」ということを、親御さんはどうか肝に銘じておいてください。お子さんのカンニングを指摘してくれる塾の先生は、ほぼいないといってもいいでしょう。なぜならば、お子さんのカンニングを指摘されると、たいていの親御さんは「ムカつく」からです。「うちの子に限って、そんなことするはずがないでしょう(怒)」というわけです。クレームや炎上を避けるために、最近の世情は「ことなかれ主義」全盛です。「もしかしたらカンニングかも」と先生が気付いたとしても、指摘してくれるケースは大変稀なことなのです。ですから、親御さんが気付いてあげるしかないのです。

過去問は、正しく活用しなければ、意味のないものになってしまいます。どうか親御さんは厳しい目を持って過去問を管理してください。そして、わが子の点数に一喜一憂せず、冷静に戦略を練り、次に生かしてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。