中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験 受験生よりも5年生が一番しんどい!? その理由|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2022年11月17日 石渡真由美

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中学受験の勉強は、小学4年生から6年生の3年間かけて本格的な準備を進めていきます。入試本番に近づくほど大変になってくるというイメージがありますが、実は中学受験で一番しんどいのは「5年生」という人も多いです。それはなぜでしょう?

「割合」「比」「速さ」「濃度」抽象概念がバンバン出てきてピンチに!

中学受験をするなら、それを専門に指導する進学塾に4年生(正確には3年生の2月)から通うのが一般的です。4年生のうちなら、塾のある日は週2日程度と少なく、それほど負担は感じないでしょう。ところが、5年生になると週3日になり、模試の回数も増えていきます。塾に通う日が増えるということは、そのぶん宿題も増え、学習量の負担が重くのしかかります。

さらに大変なのは、学習の質が変わることです。4年生の勉強は、基礎的な学習が中心となるため、授業の内容が分からなくてついていけなくなるという子はほとんどいません。ところが、5年生になると4年生で学習した基礎内容はすでに理解しているという前提で、応用・発展的な内容に入っていきます。特に算数や理科では抽象的な概念の理解が必要となり、そこでつまずいてしまうと、たちまち成績が伸び悩んでしまうのです。

5年生の算数では「割合」「比」「速さ」「濃度」など、中学入試に必ず出題される重要単元が次々と出てきます。こうした問題は、目には見えない抽象的なものなので、小学生の子どもには難しく感じます。例えば「1学年270人のうちの45%の生徒が反対をしています。賛成をしている生徒は何人ですか?」といった基礎問題でさえも、つまづく生徒が出てきます。答えが整数で割り切れなかったりするだけでも、問題自体がなんだかよく分からないものに感じてしまい、戸惑ってしまうのです。

こうした問題を克服するには、たくさん解いて慣れさせることが重要です。少し乱暴な言い方になりますが、九九を暗唱したときのように、「こういう問題のときは、この考え方で解く」といったように身体に染み込ませることで、苦手意識を払拭していくことをおすすめします。なぜなら、一度苦手意識を持ってしまうと、「どうせ私には分からない」「ムリ!」と考える前からあきらめてしまうクセがついてしまうからです。ひとくちに「比」を扱う問題といっても、図形相似だったり、「速さ」だったり、比例反比例だったりと多岐に渡るため、最初の段階でつまずいてしまうと、後々まで大きく影響してしまいます。「割合が苦手で算数が嫌いになった」なんてことは全く珍しくない話なのです。そこで、まずはその日の授業の内容をしっかり聞き、分からなければ先生に質問をし、家で再現できるようにしましょう。苦手をそのままにしないことが重要ポイントです。

理科の「電流」「天体」「気体の発生」「溶解度」「中和」なども、同じような理由で苦手に感じてしまう子どもが続出します。ただし、理科の場合は単元ごとに独立して学習するので、ある単元が苦手だったとしても、あとからカバーすることも可能です。いったんペンディングとしておいて、冬休みなど時間が取れるところで振り返りをすればよいでしょう。

授業のスピードが飛躍的にアップ! 社会は1回の授業で一つの時代を全部教えてしまう

5年生になると、社会の学習の負担も大きくなります。1学期の約5ヶ月間で北海道地方から九州・沖縄地方までの山地・平野・河川湖沼・湾などの地形、農業・水産業・工業などの産業、輸出入品などを通して世界の国々とのつながりなどを網羅的に学び、2学期の6ヶ月間で旧石器時代・縄文時代から始まり江戸時代・明治大正昭和平成時代までの日本の歴史をすべて学びつくすわけです。要するに驚異的なスピードで授業が進んでいくということです。例えば平安時代は、①天皇親政時代 ②藤原家摂関政治時代 ③上皇院政時代 ④平清盛政権時代、と4つに時代に区分されますが、それをたった1回の授業で教えてしまうのです。翌週には鎌倉時代、その翌々週には室町時代といったように、どんどん進んでいくため、丸暗記でイチから覚えようとしても絶対にうまくはいきません。

そこで私がおススメしたいのは、5年生の歴史の勉強が始まる前から、歴史漫画を読むなどして歴史に触れておくことです。歴史漫画はストーリー性があり、子どもたちは楽しく読み進めることができ、かつ絵があるので頭にイメージしやすくまた記憶にも残りやすいという特徴があります。ここで、時代の流れをつかんでおくだけでもアドバンテージになるでしょう。

同じように、理科も『かがくる』『なぞとき』(朝日新聞出版)といった漫画教材がありますので、ぜひ活用してみてください。5年生の理科、社会はどちらも覚えなければならない知識がたくさんあります。それらを算数や国語などの主要科目の勉強と並行しながら覚えていくのは容易なことではありません。だからこそ、早めに触れておくことが、学習の軽減につながります。

小5から中学受験に参入してくる地頭のいい子に一気に抜かれてモチベーションが急落

近年の中学受験は、4年生、あるいはそれ以前から準備を進めていくのが一般的ですが、まれに、5年生から入塾し、中学受験に参入してくる子がいます。そういう子は、数少ない塾の残席を勝ち取ったもともと地頭のいい優秀な子であることが多く、後から入って来たにも関わらず、メキメキと成績を上げていきます。また、それまで経験したことがなかった塾の授業を面白がり、イキイキとした表情で勉強をします。一方、4年生(もしくは低学年)から塾に通っているのに、成績が伸び悩んでいる子は少なくありません。そういう子たちにとって目障りな存在なのが、この「後から参入組」の子たちです。彼らが成績を伸ばしていけばいくほど、「僕の今までの頑張りは何だったんだ……」「どうせ僕なんて頑張ったところで……」と勉強に対するモチベーションがガタ落ちしてしまうのです。

5年生になると、勉強の量が増える上に、学習の内容が難しくなる。さらに、「後から参入組」の出現で、精神的なダメージも受けやすい。こうしたことから、「中学受験の鬼門は5年生」であると、私は思っています。

「中学受験の鬼門は5年生」と心得ておき、早めの対策を

では、どのようにして乗り越えていけばよいのでしょうか?

中学入試の傾向はその年によって若干の違いはあるものの、進学塾の受験カリキュラムは、ここ何年も大きく変わっていません。つまり、どの塾に通っていても、5年生のカリキュラムは大変であるということです。それが分かっているのであれば、先ほどもお伝えしましたが、理科や社会は学習漫画などで早いうちに触れておくといいでしょう。また、算数に関しては、抽象概念は慣れていくことしか方法はありません。低学年のうちから「このケーキを5分の1に切ってくれる?」「500円のものは消費税が加わるといくらになるんだっけ?」など、日常のシーンで会話をしながら身につけていくことをおすすめします。

国語については、とにかく語彙を増やすことです。前回の記事でもお伝えしましたが、子どもは「親子の対話」を通じて新しい言葉や知識を身につけていきます。こうしたことを早い段階から意識しておけば、中学受験の鬼門といわれる5年生になっても、慌てることはありません。今既に渦中にいるという場合は、何を優先すべきかよく考え、あれもこれもとアタフタ学習に陥らないことが大切です。5年生をうまく乗り越えることができたら、6年生もきっと乗り越えていけるに違いありません。

 


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。